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三菱地所設計 水だけで火災を抑制する「NFシステム」を国内初採用

2014.06.23 14:41

 三菱地所設計(東京都千代田区)は、斎久工業(東京都千代田区)および千住スプリンクラー(東京都足立区)と共同で、一般的に屋内駐車場の消火設備に用いられる泡消火薬剤を一切使用せず、水だけで駐車場火災を抑制する「NF システム(閉鎖型水噴霧設備)」を開発した。本システムは、東京都千代田区大手町で開発が進む「(仮称)大手町1-1計画」への設置について、日本消防設備安全センターの性能評価認定および総務大臣認定を取得しており、実際のプロジェクトへの国内初採用が決定している。  建物の屋内駐車場には、一般的に泡消火薬剤による窒息効果で火災を抑制する泡消火設備が設置されている。しかし、多くの泡消火薬剤にはフッ素系の残留性有機汚染物質が含まれており、その中でもPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)が含まれている泡消火設備は、すでに消防庁から新規設置を禁止されている。残留性有機汚染物質が環境や人体に与える影響を考えると、泡消火設備の代替となる駐車場消火設備の開発が課題となっていた。一方、水を噴霧することで火災を抑制する水噴霧消火設備は、設備構成が複雑かつ大量の水が必要であり、維持管理の手間や設置コストがかかることから、これまで屋内駐車場への設置が敬遠されてきた。 
 本システムは、水だけを使って駐車場火災を抑制する設備。既存の水噴霧消火設備に比べ、少ない水量でも火災を抑制できるよう放水圧力を上げ、さらにデフレクター(散水板)の形状を改良した「NFヘッド」を開発・適用している。建物の用途によって屋内駐車場の天井高は異なるが、高さに応じて効果的な散水ができるよう、高天井用と低天井用のヘッドを開発した。「NFヘッド」の開発により、既存の水噴霧消火設備や泡消火設備に比べ、設備構成を簡素化させることが可能に。その結果、設置コストが抑えられ、設置後の維持管理も容易になった。泡消火設備の場合、使用後は国や地方公共団体の条例等に従い廃棄処理を行う必要があるが、本システムは泡消火薬剤を一切使用しないため廃棄処理が不要となっている。
 本計画は、丸の内再構築「第2ステージ」第4弾プロジェクトとして、東京都千代田区大手町にて推進しており、三菱地所(東京都千代田区)とJXホールディングス(東京都千代田区)の共同事業であるA棟と、三菱地所の単独事業であるB棟からなる。いずれも同社が設計監理を担当しており、A棟は平成27年11月、B棟は平成29年1月の完成を予定している。

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