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企業CSR活動 第一生命保険 待機児童の解消に取り組む オフィスビルを活用した独自のCSR戦略 今年4月に所有ビル2棟で保育所を開設

2013.03.04 14:30

 CSR(社会的責任)活動に積極的に取り組む企業が急増している。事業活動を行う上で社会に対して責任を果たし、永続的に社会と共に発展していくための取り組みが「CSR活動」である。
 日本で急速に進む少子高齢化は、国内でビジネスを行う企業にとって重要な課題であると共に、日本の持続可能な発展のために解決しなければならない社会的問題といえるだろう。そうした背景から、大手生命保険会社の第一生命保険(東京都千代田区)は、経営指針として「DSR(Dai-ichi’s Social Responsibility 第一生命の社会的責任)」を策定。同社不動産部の取り組みとしては保有ビルの省エネ対策や帰宅困難者支援対策などを実施してきたが、平成23年4月に同社所有ビルへの保育所誘致の取り組みを本格化。全国の保育所入所待機児童数約2万5556人(厚労省発表・平成23年4月時点)の約1割に相当する2500人の児童収容を目指し、今年4月に「田端ASUKAタワー」に認可保育園を、「東京スクエアガーデン」に認可外保育園を誘致すると発表。昨年4月までに開園していた4施設とあわせ、合計6施設が稼働することになる。同社の金子伸一郎氏は、保育所誘致の取り組みについて次のように話す。
 「今回の2施設の開園により、6施設で257人の待機児童を収容する見込みとなり、目標まで順調に進捗しています。今年6月には東京都練馬区の物件での開園を控え、神戸市でも運営事業者の募集を開始しました。今後はオフィスビルだけでなく、当社の営業用ビルを活用し、より機動的に開設が可能な小規模保育所の誘致にも注力していく予定です」
 同社が保育所誘致を検討し始めたのは平成22年に遡るが、実現までに数多くの課題をひとつずつクリアしなければならなかった。一般的なオフィスビルと保育所の親和性の問題だ。不特定多数の乳幼児が出入りするため、騒音等の問題が考えられる。さらに設備面での安全性確保や賃料負担力のある運営事業者の選定なども課題となる。
 「解決策として、オフィスワーカーとの動線を分離することを大前提とし、安全面ではバリアフリー化や指挟み防止ドア等を設置しました。また、自治体によっては認可保育所を設置するにあたり、園庭が必要となる場合や、貸室内に子供用トイレやキッチン、沐浴施設が必要となるため、給排水関係の設備を設置することで対応しています。こうした条件をクリアしなければならず、開園までかなりの候補物件が不採用となりました」(金子氏) 本来、既存オフィスビルに保育所を誘致するのは、困難であった。ひとつの理由として、保育所の運営事業者を社会福祉法人に限定している自治体がいまだに多く、ビルイン型の物件や賃貸物件の活用に積極的な株式会社には認可が下りないケースも多いことが挙げられる。
 このように保育所誘致には解決するべき課題が多い一方、認可保育所・認証保育所の賃料負担力は坪単価1万円前後と、市場対比で大きく上回る賃料を期待できないことに加え、認可保育園・認証保育園の場合、ビルのテナントが優先的に利用できるわけではなく、利用者が自治体居住者に限定されるため、まさに地域貢献・CSRを重視した取り組みといえる。

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