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イトーキ 大震災時のオフィス家具被害状況まとまる パソコン、コピー機では半数以上に

1995.07.15 16:25

 先の阪神大震災ではビルの崩壊やライフラインの切断など建物自体や基盤の被害が強調されたが、一方でオフィスビルの仲では執務室内の什器、備品などの被害も大きかった。このほどイトーキがまとめた被害状況結果をもとに、その傾向について分析してみる。
 オフィス家具のイトーキ(東京都中央区)では阪神大震災におけるオフィスビルの室内環境の被災状況の把握を目的としたアンケート調査を実施した。
 調査対象企業は、1月17日の地震発生から2月8日までに同社に対し緊急対応依頼があった顧客企業のうち282社、さらに同社が無作為で選んだ神戸市に事業所を置く企業250社の合わせて532社。
 エリア別では、神戸市、西宮市などの「被災地域」が289社、大阪市、茨木市、京都市など「周辺地域」が243社となっている。室内レベルでの状況把握を目的としているので、建物の被害が概ね軽微な企業を対象にしている。
 調査対象のうち、まず床、壁、天井の内装および照明器具や床置・空調機などについては、壁(湿式)、間仕切りの2項目で被災企業が30社を越え、次いでシステム天井や空調機器などに被害が目立った。全体として言えるのは、給排水管やガス管、エレベーターなどといった建築設備と違い、室内レベルでは強震地域に限らず「周辺地域」にも被害が目立っているという点だ。窓ガラスの被害については築20年以上の物件が大半だが、中には築5年以内でもガラスの割れる被害はでている。
 OA機器の被災状況ではオフィス内に置かれているパソコンやコピー機などに関し、半数以上の企業で被害が出ており、特に被災地域では60%を越える被害率をマークしている。
 転倒・落下の被害はデスク上に置かれていたパソコンで半数近くもあるが、FAXやコピー機については位置がずれたといった程度が多い。大型コンピューターの場合も、概して場所がずれた程度の軽微な被害だ。また、パソコン、大型コンピューターにおけるデータの被害が出た例は1件だけで、それほど被害は出ていないことがわかった。
 オフィス家具については、被災地域の60%以上で転倒や落下といった被害が発生している。中でもロッカーは、被災地域の90%以上、周辺地域でも40%もの被害がでている。ロッカー同様に、家具同士を連結することなく単独に置かれている収納家具も転倒の被害が圧倒的に多い。また、高さ1100ミリ未満の背の低い収納家具が転倒している企業も20%以上あり、今回の大震災の激しさを物語る結果となっている。


室内の安全への関心高まり感じる イトーキ PR推進室室長 佐藤顯一氏
 当社では大地震の翌日に緊急復旧プロジェクトを組み、現地対応にあたったが、その被害状況のすさまじさに驚き、これを将来の教訓として活かすためアンケート調査を実施した。
 こうして集計したデータは現場写真などをもとに、3月から5月にかけ、オフィスと地震対策と題したセミナーも開催した。3月10日の大阪を皮切りに、5月19日の東京・晴海のビジネスショーまで全国主要都市で約20回にわたり開催し、延べ2000人もの参加を得た。また、同様の内容の無料ハンドブックも作成したが、こちらも約3万部がはけるなど、いたって好調で、今回の地震をきっかけとして、オフィス室内の安全性についても関心が高まっているのを感じる。




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