不動産トピックス

クローズアップ ミスト冷却編

2010.09.20 16:40

 空気清浄機といえば、室内が乾燥し、ウイルスが大量に発生する冬季の利用が中心と思われがちであるが、カビの繁殖など夏季においても空気清浄機の利用機会は多い。今回のクローズアップでは、空気清浄機を取り上げ、各社の新製品と新技術を紹介する。

いけうち 産業用スプレーノズル技術を応用
 産業用スプレーノズルの老舗メーカーであるいけうち(大阪市西区)も、冷却用ミストを製品化している。
 「霧の噴射技術はさまざまな業界で使われています。例えば、食品工業ではパンや菓子の味付けや表面処理、農林水産業では畜舎の冷房やきのこの栽培加湿、製造業では排ガスやダイオキシン対策、粉塵対策に使用されています。そうした用途別に長年ノズルを製造している当社では、冷却に最適な大きさの粒子を研究し、20~30ミクロンの霧で『セミドライフォグ』という商標をとりました。これを基に、構造物に半恒久的に設置するタイプの『涼霧システム』と、より設置が容易なタイプの『COOLJetter(クールジェッター)』の2つを軸に提案しています。商業施設やイベント会場、駅や動物園など、人が集まるあらゆる場所での使用に対応できます。また、我々も想定していなかったのですが、演劇の舞台でスモークのように使いたいという方もいました」(環境事業部 中川博嗣氏)
 大阪に本社がある同社では、「大阪市水道局ヒートアイランド対策モデル事業」や「世界陸上2007」など、大阪を中心に導入事例が多い。
 「大阪市水道局はミスト冷却技術の導入に積極的で、今後も、御堂筋沿いのビル群の屋上に装置を設置して、その周囲の空間を全体的に冷やすシャワーストリート構想というものを研究しているようです」(同氏)

能美防災 濡れない粒子の霧
 気化熱を利用した冷却の原理そのものは、打ち水などという形で古くから知られている。ただ、これがヒートアイランド現象対策として本格的に導入され始めたのは比較的最近である。名古屋大学の辻本誠教授が発案者で、名古屋大学や能美防災(東京都千代田区)などが参加したコンソーシアムで共同開発された「ドライミスト」が一般に知られるが、霧による冷却設備の呼び方については、いまだ定着したものがない。各社が独自に商標をとっているのが現状で、「ドライミスト」は能美防災の登録商標である。
 「『ドライミスト』という名の通り、湿っぽくない霧というのが特徴です。ただし、服が濡れたり、化粧が落ちてしまうほど粒子が大きくてはいけません。逆に小さすぎると風に流されて意味がない。このように、粒子の大きさが重要なのです。防災設備のメーカーである当社は、もともとスプリンクラーを製造しており、その技術を応用して最適な大きさの粒子を発生させるノズルを開発することができました。操作は、自動制御システムを導入すれば、気温や湿度などの気象条件に対応した自動運転が可能です。またエアコンに比べ大幅な省エネが達成できるので、環境に配慮していることをPRする効果もあります」(広報室長 山口敏孝氏)

なごミスト設計 家庭向けも開発
 コンソーシアムの成果を建築・都市空間に実現することを目的として、これに参加した名古屋大学のメンバーが出資して設立されたのがなごミスト設計(名古屋市千種区)である。商標は「なごミスト」を用いている。
 「私たちは、大規模なものの他、家庭向けの『なごミスト』を提案しています。家庭向けのものは、だいたいノズル2個で10~15㎡の範囲を冷やすことができ、消費電力は約70Wで済みます。1日8時間の使用を1カ月続けたと仮定しても、コストは600円程度となります。これは、同じ空kなを同じ時間エアコンで冷却した場合と比較しても、ランニングコストは約10分の1です」(設計技術主任 石井智洋氏)
 もっとも、ミストがエアコンにとって替わるものではない。ミストでできるのは、数度だけ気温を下げることであって、エアコンのように好きな気温を設定することはできない。また、噴射された部分だけに冷却効果があり、エアコンのように空間全体を満遍なく冷やすのには向いていない。
 「エアコンで満足している方は別として、体質的にエアコンが苦手な方には『なごミスト』の方が向ているのではないでしょうか。また、すでに導入事例もありますが、今後は保育園など、利用者の健康が特に重視される施設への導入を積極的に提案していく予定です」(同氏)

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