不動産トピックス
【10/26号・今週の最終面特集】進化が止まらない 広がるAI活用

2026.10.26 13:33
人の英知と先端技術の融合が新産業を生み出す 大手企業も積極的に導入
不動産や建築業界では、さまざまな場面でAIを活用する例が増えている。業務効率化や品質向上など、AIは事業活動のバックアップに欠かせない存在となりつつある。一方で直近は企業・団体への不正アクセスに悪用されるケースも報告されている。進化するAIの活用は今後どう展開していくのか。
日建設計が社長交代 AI活用の推進に注力
日建設計(東京都千代田区)は、社長交代および代表取締役の異動に関する役員人事を発表。2027年1月1日付で、勝山太郎常務執行役員が代表取締役社長兼社長執行役員に就任する。現代表の大松敦氏は、代表取締役会長に就任する。
勝山氏は京都府の出身で、早稲田大学大学院修士課程修了の後、1990年に日建設計に入社。設計領域でキャリアを重ね、現在は大阪オフィスの代表を務める。直近ではJR「大阪」駅前の大型プロジェクト「グラングリーン大阪」を担当した。同氏が陣頭指揮をとり2023年に実施された大阪オフィスの移転に際しては、ビルオーナーとオフィステナントが一体となって進める脱炭素の推進、ABWの課題点を空間構成と運用で解決する「来たくなるオフィス」の開発に関する実証実験を行った。勝山氏は今後の事業展開におけるキーワードの1つとして、AIを挙げる。
「AIを徹底活用することによる業務の効率化や高度化に努めていきたい。一方で、AIの進化によって設計に携わるヒトの役割は変化してきていると感じている。ヒトだからこそ生み出すことのできる価値を見極めたうえで、設計者の新たな役割や提供価値を明確化することが重要だ」(勝山氏)
同社が昨年12月に発表した中期経営計画では、AIの活用によって建築生産システムの変革を推進し、人手不足や建設コストの高騰、プロジェクトの複雑化・大規模化といった環境の変化に対応するとしている。また同社ではAIをはじめとする先端技術を活用しながら社内外の関係者が連携し、社会課題の解決にも注力。東京・飯田橋の本社ビルや竹橋オフィスなど全国4カ所に共創拠点「PYNT(ピント)」の運営を手掛けている。組織設計事務所最大手として蓄積してきた豊富な経験やノウハウをベースに、同社はAIとの共創によって事業領域の裾野を広げ、さらなる成長を目指す。
豊富なレポート・データをAIで横断的に参照・情報整理
矢野経済研究所(東京都中野区)とジーニー(東京都新宿区)が設立したJAPAN AI(東京都新宿区)は業務提携し、矢野経済研究所のレポートやデータを参照して生成AIで市場調査情報を出力する新サービス「YDBエージェント」を共同で開発。今月22日より顧客への提供を開始した。
矢野経済研究所は長年にわたり市場調査を手掛け、豊富なレポート・データを資産として保有している。一方、JAPAN AIはジーニーのグループ会社として設立された戦略的AIカンパニー。企業の業務における生成AIの活用を支援し、AIソリューションの開発・運用を通じて多様な業界や産業の業務効率化と生産性向上を推進している。
今回開発した「YDBエージェント」は、矢野経済研究所が保有する過去5年分、1000タイトル以上の市場調査レポートをAIで横断的に参照し、質問に対して出典つきでの回答や、パワーポイント・エクセル資料を作成する新たなサービス。フレームワーク分析や事例収集も可能である。必要なデータを探す時間や資料にまとめる時間を大幅に短縮することが可能となり、顧客企業は調査・企画業務の効率化を実現できるとしている。矢野経済研究所の水越孝代表取締役社長は「当社が蓄積してきた独自の市場調査データと専門研究員の知見に、AIを掛け合わせることで、お客様の意思決定のスピードとクオリティを格段に高めることができると確信している。JAPAN AIとの協業を通じて、調査会社としての新たな価値提供に挑戦していきたい」と述べており、JAPAN AIの工藤智昭代表取締役社長は「生成AIは、業務に組み込まれ、現場で活用されてこそ価値を発揮する。『YDBエージェント』が、調査・企画に携わる方々の日々の業務の中で活用していただけるサービスとなることを期待している」と抱負を語った。
店舗出店の情報管理をAIで 担当者の業務負荷を軽減
金融情報を中心とする情報のデジタル化を推進するFinatextのグループ会社・ナウキャスト(東京都千代田区)は、商業施設のテナント出店を予定に沿って開業まで進めるためのプロジェクト管理ツール「楽テナ」を開発。今冬より提供を開始する。これは商業施設を開発・運営する企業向けに、テナント出店に伴う工程・書類・関係者との連絡などの業務をAIで一元管理するというもの。期日通りの開業および賃料起算日の遵守を支援する。
商業施設では、テナントの入替や新規出店が決まった後、開業までに数カ月を要するのが一般的である。この期間、施設側の担当者は「賃貸借契約の締結」だけでなく、「内装工事や費用の分担決めと見積の調整」、「提出された図面の審査」、「消防・保健所等への申請確認」、「他店舗の営業に配慮した工事日程の調整」など、多岐にわたる業務を同時並行で進めなければならない。そのため、担当者には多大な業務負荷がかかっているのが現状である。また情報管理はエクセルやメールに依存することが多く、情報の属人化が発生しやすい環境となっていた。
「楽テナ」は、現場の担当者が負担なく日々の管理を行えるよう、直感的な操作性により手入力の手間を最小限に抑えている点が大きな特徴。書類やメールなどをアップロードするだけで、AIが内容の読み取りや進捗の自動更新、書類リスクの指摘、次に着手すべきタスクの提示までを自動で行う。加えて、日々の細かな進捗やステータスの変更も、AIとの対話ベースで簡単に入力・更新することができる。
Zenken インドの高度IT人材をチームで紹介 業務委託型でリスク抑制
ウェブマーケティング事業や海外人材事業などを手掛けるZenken(東京都港区)は8月から、インドの高度IT人材を日本企業に紹介する新たなサービスを始めた。AI(人工知能)などの高度IT人材やリーダー格のエンジニアを含む開発チームを、日本の顧客企業の要望に応じてインドで編成。建設・不動産業などの顧客企業がIT関連の開発プロジェクトを業務委託できるようにする。プログラミングなど一部業務はAI(人工知能)に代替可能になりつつあるものの、高度IT人材やリーダー格のエンジニアは獲得が極めて難しい。開発の主力となる高度人材をチームで紹介することにより、日本企業の生産性向上に貢献する。
新サービスの名称は「ZenNxt Labs(ゼンネクストラボ)」。AI、データサイエンス、サイバーセキュリティなど日本国内では母集団の限られる高度な分野でも、日本の数十倍のIT人材を抱えるインドで候補者を募り、開発チームを新設できるのが特徴だ。チームのインド人材は当初、Zenkenのインド現地法人が雇用し、状況を見ながら段階的にチームを拡張できる。このため日本の顧客企業はリスクを最小限に抑えながらインドに開発拠点を設けることができる。
経済産業省は2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると予測している。特に専門性の高い高度人材やリーダー格の人材は採用競争が激化しており、企業が募集しても要件に合う候補者が集まらず、事業拡大のスピードに採用が追い付かないケースが急増している。人手不足を補うために海外に開発拠点を整えるには法規制への対応など法務・費用・運用面の負担が大きく、日本企業は難しい対応を迫られていた。



