不動産トピックス

【9/28号・今週の最終面特集】不動産での木材利用 都市部および郊外で普及進む今に迫る

2026.09.28 10:37

林野庁の令和9年度予算概算要求額27.1%増の総額3956億円
今後は木造公共建築物の整備等へ積極的に支援
 木材利用および木造建築が普及しているとはいえ、いまだ新築や大規模改修へ木材を活用する企業は多くない。現状事例を探して様子見のケースも見られ、普及速度は遅いまま。一方モデルケースの普及を進める企業もおり、都市部だけでなく郊外や地方でもチャンスはある。

林野庁の「森の国・木の街」創造連携イニシアティブ事業
 林野庁は、令和9年度予算概算要求額を総額3956億円とした。令和8年度の予算と比較して27・1%増となり、不動産等の関連分野では「森の国・木の街」創造連携イニシアティブ事業への取り組み加速化を発表している。
 林野庁が推進する「森の国・木の街」創造連携イニシアティブ事業とは、国産材サプライチェーンの強靱化を集中的に支援し、国産材の供給・利用量の増加を目指すもの。令和6年度での国産材供給量における事業目標は3500万㎥で、令和12年度までに4000万㎥まで伸ばす計画だ。同事業への予算額は83億4100万円。集中的に支援を行う取り組みとしては「森林の集積・集約化」や「路網整備・機能強化等、省力・低コスト再造林」、「スマート林業技術の実装」、「木材製品の付加価値向上・需要拡大」など。特に木材製品の付加価値向上・需要拡大が不動産業界へ大きく影響しており、大径材を用いて付加価値の高い製品を生産する木材加工流通施設整備等やそれらを活用する木造公共建築物の整備等へ積極的に支援していく。
 農林水産省および林野庁が支援する補助金制度には、「建築用木材供給・利用強化対策のうちJAS構造材・CLT等による木造化総合対策事業(うち先駆性等の高い木造化技術による設計・建築実証)」がある。対象は民間事業者などで、要件は一般流通材やCLTを活用した先駆性または普及性のある建築物の設計・建築等の実証であること。非住宅の場合、オフィスや工場、店舗、宿泊施設、その他の用途など。補助率は協議会運営費等(定額)や設計費・建築費における、10分の3以内。特に普及性や先駆性の高いものについては2分の1以内。令和8年度の予算は既に終了しているため、次回は令和9年度となる。
 ちなみに管理団体が国土交通省の「優良木造建築物等整備推進事業」であると、内容や補助額は大きく異なる。炭素貯蔵効果が期待できる木造の中大規模木造建築物の普及に資する優良なプロジェクトへ支援しており、対象は地方公共団体や民間事業者など。調査設計費の場合、木造化に係る費用の2分の1以内。建設工事費は、木造化による掛増し費用の3分の1以内。ただし算出が困難な場合は建設工事費の7%以内。また補助の限度額は2億円。先導的なプロジェクトの場合に限り、建設工事費および上限を引き上げることもできる。

都市部で普及の木材利用 中小オーナーにハードル
 都市部での事例では、昨年7月に竣工を迎えた第一生命保険(東京都千代田区)の木造・鉄骨造(S造)のハイブリッド構造による賃貸オフィスビル「第一生命京橋キノテラス」。今年2月末に竣工を迎えた中央日本土地建物(東京都千代田区)の木造・木質化の中規模オフィスブランドREVZOの第5弾「REVZO新橋」。直近ではサンケイビル(東京都千代田区)が千代田区東神田2丁目で、同社初の木造中高層建築を手掛けた「KiGi AKIHABARA(キギ アキハバラ)」などがある。
 来年には三井不動産グループ(東京都中央区)の木造建築ブランド「&forest」の第一号物件となる木造賃貸オフィスビル「日本橋本町三井ビルディング &forest」が誕生する。三井不動産として2棟目となる木造賃貸オフィスビル「(仮称)日本橋本町一丁目5番街区計画」や国内初の一部木造構造を採用した複数テナント型物流用途を含む施設も進行中と動きは活発。とはいえ、大手企業のみが取り組む様子を見ると、まだまだ中小規模の不動産オーナーや事業者の参加・実施は難しい。コスト面や収益性、申請の多さなど、現状さまざまなハードルが多く残っており、それらを改善しないと補助金・助成金制度だけでは普及は難しいと思われる。
 建築・設計事務所であり、小規模な木造ビルのオーナーでもあるstudio KOIVU一級建築士事務所(名古屋市熱田区)取締役の坂口大史氏は自社の事例も踏まえながら「補助金・助成金制度を活用しながら、狭小地や郊外、ロードサイド物件での新築および建替えにハイブリッド工法を生かしてみてはいかがでしょうか。規模が地上3階までで、延床面積3000㎡以内でしたら、郊外を主な対象に事業用不動産での開発事業には好ましい建築方法であると思います」と述べた。

SE構法の木造5階建て 11日に完成見学会を開催
 木造耐震設計事業を展開するエヌ・シー・エヌ(東京都千代田区)と建設会社の安藤建設(横浜市磯子区)は今年9月、共催で木造5階建てビル「Wood Five Story」を開発。11日に完成見学会を開催した。
 「Wood Five Story」は、エヌ・シー・エヌ独自の木造軸組ラーメン工法「SE構法」を採用した木造5階建てビルの建設プロジェクト。1~2階は施工を担当する安藤建設の自社オフィス、3~5階は共同住宅11戸とする複合用途モデル。SE構法による木造5階建てのビル建設は、福岡市博多区で進行中の「上川端ビル」に続き全国で2棟目。首都圏エリアでは初。場所はJR京浜東北・根岸線「新杉田」駅から徒歩約5分、横浜市磯子区中原2丁目に立地。敷地面積は213・01㎡、延床面積は703・3㎡。構造設計はエヌ・シー・エヌの特建事業部、環境設計は環境設計部が担当。施工は安藤建設が行い、意匠設計は横浜市都筑区のカサプルデザインが担当した。
 特徴はオフィスと住居複合のビル建設でありながら、SE構法を採用していること。SE構法は「Safety Engineering構法」の略で、鉄骨造や鉄筋コンクリート造で主流のラーメン構法を木造住宅に取り入れ、安全かつ便利に施工できるようシステム化した建築構法のこと。同社は年々多様化する中大規模木造建築に対応するため、5階建ての要求性能を満たす高強度な耐力壁と、それに対応する高耐力柱脚金物を開発。ボックス型の高耐力柱脚金物を基礎と連結することで、地震でも外れることなく高い強度を実現。かつ設計の自由度と、収益性や工期の短縮、環境貢献、施工性等にも優れており、設計者・事業主・施工会社の各立場における最適解を実現した。
 合理的な構造設計ができ、プレカット工場へ設計データを送れば、プレカットデータとも連携できる。さらにSE構法は、日本建築センター(東京都千代田区)の構造評定を取得。同評定により、SE構法は標準システムで地上5階建てまでの対応が可能となった。狭小地での施工性、埋め立て地や建築構造的に困難な地質でも対応できる点などから、都市部における中高層規模での木造建設の課題解決に貢献できる技術と注目されている。また構造材・羽柄材を合わせて約96トンの木材を使用。建物全体で約211トンの二酸化炭素を貯蔵することで炭素固定による脱炭素への貢献となった。
 今年3月には構造見学会を開催。今回は完成見学会を開催した。冒頭で安藤建設およびエヌ・シー・エヌ担当者が登壇。エヌ・シー・エヌの担当者は「SE構法の木造5階建てとしては『首都圏エリア初』のプロジェクトです。オフィスフロア、共同住宅ともにシンプルな設計とすることで、非住宅木造建築の普及を促すモデルケースとなっています。木造建築の新潮流としてこれを機にさらなる木造化推進に貢献してまいります」と語った。




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