不動産トピックス
【6/22号・今週の最終面特集】住宅市場 企業の新戦略
2026.06.22 10:32
「新築分譲」と「中古住宅再生」の二刀流 幅広い所得層の住宅需要に対応
年間で約9000棟を供給 強固な資材調達ネットワーク
不動産業界、とりわけ住宅業界では新築の供給が戸建・マンションともに頭打ちの状態となり、中古市場の存在感が日増しに高まっている。住宅業界に携わる各社は企業の成長あるいは生き残りをかけて独自の戦略に注力する。ここでは新たな利益の源泉を創出しようという企業の戦略を紹介する。
業務のDX化を推進 売上予測は4500億円
首都圏を中心とした新築の分譲住宅事業を主に展開している東証プライム市場上場の不動産会社・ケイアイスター不動産(埼玉県本庄市)は、コア事業である分譲住宅事業に加え郊外を中心とした中古住宅再生事業にも注力し、全国展開での「二刀流戦略」を加速させる構えだ。
ケイアイスター不動産では、土地の仕入から設計・施工・販売に至る新築分譲住宅の供給に係る一連の業務フローにおいてDX化を積極的に推進。「リアル×テクノロジー」のビジネスモデルを確立し、2015年の上場以来増収を継続。今年度の売上高は対前期比14・2%増の4500億円を目標としている。執行役員の小沼佳久氏は「中東情勢の悪化に端を発するナフサの不足によって、建築の現場では塩ビパイプやユニットバス、接着剤などの供給に遅れが生じるなど、業界全体では今月から来月にかけて施工工程への影響が顕在化する見通しとなっています。一方、当社は年間で約9000棟の供給実績に基づくメーカーとのパートナーシップにより優先的な部材供給枠を確保し、現時点において施工および供給体制への重大な影響は回避している状況です」と話す。
日本国内では人口減少に伴って空き家が急激に増加。総務省の統計によればその数は全国で約285万件にのぼり、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は2023年で13・8%。今後も着実に上昇し、2043年には空き家率が25%を突破する見通しである。他方、昨今の都市部を中心とする住宅価格の高騰の影響から、既存住宅に対する需要が伸びており、ケイアイスター不動産では低価格帯の既存住宅の市場への流通を活発化させる狙いから、今回の中古住宅再生事業への参入に踏み切ることとなった。
中古住宅再生事業の責任者である上席執行役員の堀口幸昌氏は「当社の武器は、年間約9000棟の戸建分譲で培った『資材の大量一括購買力』と『自社職人ネットワーク』です。このリソースを中古住宅再生事業にも活用することで、他社との差別にもなる低原価を実現。市場平均価格である2917万円を大きく下回る、平均1700万円台のアフォーダブル住宅の供給を目指します」と話す。中古住宅再生事業は昨年から本格始動しており、この1年弱の間に愛知県や兵庫県で中古販売営業を行う新店舗を開業。仕入は500戸以上の中古住宅在庫を取得した。目下の目標は中古営業所の店舗数100店舗、中古物件の仕入数のさらなる拡大を目指す。
アフォーダブル住宅は、主に子育て世帯や中低所得者層向けに供給される、近隣相場より割安に設定された住宅。ケイアイスター不動産では、新築分譲と中古住宅再生の2つの事業を展開させることで、「すべての人に持ち家を」をスローガンに掲げる。堀口氏は「アフォーダブル住宅の購入層が懸念する『将来のローン不安』に対し、当社では購入者様の勤務先の倒産や解雇時に最大6カ月(月5万円)を負担する独自制度『お住まいレスキュー』を提示し、また購入後の自社メンテナンスや将来の買取までを一貫して行うことで、『住宅を売ったら終わり』ではなく購入後の暮らしもサポートし、購入者様に安心を提供します」と話す。積極的な人材採用と独自の仕入ネットワークを軸に、スピード成長を続けるケイアイスター不動産。仕入・リフォーム・販売・アフターフォローまでを担う責任一貫体制を強みに、全国シェアの拡大を目指す。
組織規模の拡大契機に オフィス移転を実施
東京を中心に不動産事業を展開している総合不動産会社の東通グループは、組織拡大やさらなる事業成長を見据え、今月5日に本社オフィスを港区西新橋の「日比谷セントラルビル」へ移転した。
東通グループは、不動産の売買・仲介や不動産再生および販売などを行う東通建物、不動産投資・中長期保有・賃貸事業などを手掛ける東通不動産投資をはじめとする5社で構成される。設立以来、不動産投資事業を中心に収益物件の再生・開発からホテル運営、資産運用へと事業領域を広げ、事業の拡大を図ってきた。それに伴って従業員数も増加。組織規模の拡大によって、社員一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できる労働環境の整備が課題となっていた。
新オフィスのテーマは「オフィスをもっと自由に大作戦」。社員が「出社したくなる、自慢したくなるオフィス」をコンセプトに設計された。オフィス内は、飽きのこない白やベージュを基調とした落ち着いたデザインを採用。ビルの両側に広がる豊かな眺望と窓の多さを生かし、開放感を感じられるレイアウトとした。執務エリアは「集中」・「コラボ」・「リフレッシュ」の3つにゾーニングし、固定席を設けつつも窓際のリラックススペースや壁際の集中スペースなど、その日の気分や業務内容に合わせて最適な環境を選択することができる。
エントランスは、来訪者が同社のアイデンティティを体感するブランド発信の拠点として「東通サークル」と命名された。点と点がつながって線となり、線と線がつながって円となるように、人やアイディアが結びつき、新たな価値を生み出していくという思いが込められている。巨大サイネージやサークル状のライティングを導入し、来訪者に感動を与える先進的な演出を行う。
AI音声エージェントが入居者の一時対応を担当
担い手不足と業務の複雑化に対応
AI応用研究を行うFlashLabs(東京都千代田区)は、不動産・建築業界向け総合サポートを手掛けるZENBU(名古屋市中区)と、エンタープライズAI音声プラットフォーム「FlashAI2・0」の国内居住用賃貸住宅分野における戦略的独占販売パートナーシップ契約を締結した。これにより、ZENBUは賃貸管理会社・家賃保証事業者などに向けたFlashAIの提供を今月から開始する。両社は深刻な人手不足が続く賃貸管理の現場において、入居者からの問い合わせ一時対応をAI音声エージェントで24時間自動化し、入居者対応の変革を目指す。
賃貸管理・不動産業界では、担い手不足と業務の複雑化が同時に進行している。設備トラブルや緊急の駆け付け依頼といった入居者からの問い合わせは、時間帯を問わず発生し、とりわけ電話応対が現場の大きな負担となっている。一方で夜間・休日の対応、繁忙期の電話の取りこぼしは入居者満足度の低下につながるだけに、十分な体制を整える必要がある。
従来の自動音声応答は、対話が機械的で柔軟性に欠け、入居者のクレームにつながることもあった。近年注目されているのが、人間に近い自然な対話を行い、複数の業務を自律的に実行する「AIエージェント」である。中でも音声領域では、音声認識・生成を一体で処理する音声AIが実用段階に入り、低遅延で自然な会話を実現できるようになっている。FlashLabsの「FlashAI」は、人間レベルの自然な音声対話を実現するAI音声エージェント。入居者からの問い合わせの一次対応を自動化しつつ、判断が必要な複雑・繊細な案件については有人オペレーターへ引き継ぐ設計とし、品質を保ったまま対応量を拡張することができる。ZENBUの松下直史社長は「当社はこれまで、『全部、解決。』をミッションに、賃貸住宅に関わるすべてのステークホルダーの課題に向き合ってきました。FlashLabs社の『FlashAI2・0』は、当社が長年取り組んできた24時間緊急駆け付けサービスの『人』による対応力を、AIによって拡張する画期的なソリューションであると考えております。深夜の水漏れトラブルにオペレーターが対応できない、外国人入居者とコミュニケーションが取れないなどの現場の悩みを、『FlashAI2・0』は根本から解決します。賃貸管理の新しいスタンダードをつくるとともに、2028年には海外事業にも注力していく考えです」と述べている。



