不動産トピックス

【6/1号・今週の最終面特集】不動産オーナー次の時代に向けた新たな一手

2026.06.01 14:49

猫好きのニーズを捉える「猫専用賃貸」
「空室待ち」が出るほどの人気物件に
 インフレや金利上昇など、さまざまな要素を背景に、不動産の賃貸経営や投資はこれまで以上に戦略的な事業計画が求められている。不動産オーナーの新たな戦略を追った。

猫用賃貸の草分け きっかけは「5匹の猫」
 京王井の頭線「高井戸」駅・京王線「八幡山」駅の2つの駅から徒歩10分の場所に立地する「Gatos Apartment」。2011年竣工で物件は2階建て。1階部分を2戸にして賃貸し、オーナー家族は2階に住まう。この「Gatos Apartment」は多くの注目を集めている物件だ。その理由は「猫専用賃貸」。「ネコも快適、人間も快適」な住まいを提供している物件だ。
 オーナーの木津イチロウ氏にこうした物件を建てたいきさつを聞くと、きっかけは「5匹の猫だった」と言う。
 「Gatos Apartment」を建てる以前は、木津氏は都内の賃貸住宅で現在の妻となる女性と二人暮らしをしていた。そこには木津氏の前の入居者が餌付けしていたのか、1匹の猫が足しげく通って顔を出していた。木津氏は猫好きだが、物件は「ペット不可」。飼い猫にはしていなかったものの「こっそりと食事を与えていた」。
 しかしすぐに転機は訪れた。木津氏は次のように語る。「通っていた猫の『チー』が最初小さな猫を連れてきました。その猫は目ヤニがひどく、病院に連れていくなどしながら、家のなかで保護することになりました。さらにチーがあるとき、3匹の猫を出産。5匹となって、さすがにこれ以上住み続けるのは難しいと感じて、猫を飼える物件に移り住もうと家探しをはじめました」。
 しかし、新居探しは難航した。そもそも賃貸市場での「ペット可物件」の割合は少数だが、さらにそうした「ペット可物件」でも前提としているのは「1匹」。不動産仲介店舗に「猫が5匹いるのですが」と尋ねると「条件に見合った物件がないよ」と返されてしまったという。
 「それなら『自分たちで建てよう』となってできたのが『Gatos Apartment』です。猫にとっても人間にとっても快適な暮らしが実現できるように工夫をこらし、こうした環境を多くの人とシェアしたいと思い、1階2部屋を賃貸しています」

猫も人間も暮らしやすいよう「猫トイレのスペース必須」
 猫にとっても人間にとっても住みやすい「Gatos Apartment」は空間づくりや設備でどういった工夫を行っているのか。木津氏に「最大のポイント」を尋ねると、「猫トイレのスペースを確保したこと」だと答えた。
 犬と異なり、猫は室内飼いが基本であり、散歩することもない。当然、トイレは家のなかでする必要がある。排便すれば臭う。
 さらにトイレの数にも配慮が必要だ。木津氏は解説する。
 「猫にとってもトイレの臭いは非常にストレスです。まして、さっき使ったトイレにまたするのは苦痛です。飼い主さんが仕事に出かけていたりすると、すぐに掃除してあげることもできません。こうしたストレスを避けるためにも、飼っている猫の数+1のトイレが必要なのです。万が一、飼い主さんが出かけている間にもう一度催しても、キレイなトイレを使うことができるからです」
 飼っている猫が1匹だとしてもトイレは2つ、2匹であれば3つ。問題は置き場所だ。「ペット可」の物件ではペットを飼うことは可能でも、こうした猫のトイレスペースを考えられた造りにはなっていない。結果として、キッチンやリビング、寝室など人間の居住空間に猫のトイレを置かざるを得なくなり、人間の住み心地を損なうケースも少なくない。
 「『Gatos Apartment』ではこうした人間にとっての住まい心地が損なわれることがないように、洗面室に猫トイレを無理なく置ける場所を確保しています。こうすることで、寝室などに臭いがたちこめることはありませんし、飼っている数+1を確保できる形になっていますので、猫もトイレでストレスを感じない造りになっています」(木津氏)
 洗面室の扉には猫用の扉を設けて、いちいち人間が開閉する必要をなくした。加えて、床の素材も猫が万一粗相をしてもすぐに拭き取れるものにしている。脱出防止用の対策やキャットウォークも備え、猫を飼っている人が安心して住める物件となっている。

コンサルティングのニーズも将来は「より広い物件の開発も」
 木津氏のもとには、「猫専用賃貸」を開発するためのノウハウを共有してほしいというニーズも舞い込む。これまでに7棟の猫専用賃貸物件の開発にコンサルティングとして参画している。
 コンサルティングした7棟のうち6棟は新築物件、1棟は既存物件のリノベーション。「既存物件のリノベーションで猫専用賃貸にしたい、という相談も多くいただく」とのことだが、リノベーションでつくるハードルは高いのが現実。
 「リノベーションした物件は、もともとフランスの画家がアトリエとして使っていたもので、丘の上に建っているものでした。ストーリー性があり、広さも十分にあったことから私自身もぜひリノベーションして猫専用賃貸にしたいと思い、手掛けたものです。一方、通常の賃貸物件ですと1部屋20㎡ほどで、猫トイレのスペース確保という観点からも狭いです。壁を取って2部屋を1部屋にして広さを確保する方法もありますが、構造上の問題などでそれができないこともあります。結果的に『リノベーションするよりも新築したほうがコスト面でも時間面でもメリットが大きい』と判断することが多いのです」
 それでも新築含めコンサルティングのニーズは強い。背景には猫好きのオーナーが木津氏の想いに共感して、というケースもあれば、賃貸経営としての妙味もある。
 「Gatos Apartment」を例にとると、竣工以来、ほとんど満室状態が継続している。一般仲介での募集もまれで、「空室が出たら借りたい、という人が大勢いらっしゃり、そうした方々に空室の案内を出すと入居者が決まります」(木津氏)
 賃料にも直結する。「猫専用賃貸」にすることで賃料は相場に比べて10~30%ほど高い。賃貸経営でもメリットが大きいと言える。
 木津氏は将来の目標として「より広い物件を開発したい」と明かし、「まだまだ猫専用賃貸の絶対数は不足している」と強調した。


仲介・売買で顧客目線のコンサルティング
自身も不動産オーナー、直近では著書を上梓
 Blue(東京都千代田区)の木内正樹社長は、地元・滋賀の建設会社の営業部門で不動産担当に従事し、その後は大手信託銀行系の不動産会社にてコンサルティング営業などで活躍。2021年4月に同社を設立し現在に至る。業務の強みは、不動産の売買や仲介業務とコンサルティング業務を組み合わせた、顧客目線の高度なサービス提供にある。
 「単に不動産の売買や仲介を行なうだけではなく、不動産の価値を高めたり、不動産の問題点を抽出して改善したり、様々な不動産の販売方法を提案するなど、不動産コンサルティングと合わせて仲介業務を行なうところが他社との違いです」(木内氏)
 中でも得意としているのが、不動産の売却における不動産オークション(入札)である。シールドビッド方式と、ファーストプライスオークションやセカンドプライスオークションなどを組み合わせ、最適なオークションの形を提案している。これらの特徴としては、一般的な公開入札とは異なり、入札者(買い手)が相互の提示価格を知ることができないため、買い手同士の競争原理が働きやすく、不動産の価値の棄損を最小限にしながら客観性・透明性の高い売却を実現することができるのだ。物件にも左右されるが、不動産オークションは不動産が持つ希少性が加味され相場を超える価格での売却も期待できる。
 一方で、木内氏自身も全国に15物件を保有する不動産オーナーであり、自身の経験をもとにした不動産投資のアドバイスも得意とする。保有している不動産はアパート、戸建て、底地、コインパーキングなどと様々。主に、京都から東京・日本橋にかけての旧東海道に沿った一帯で投資。「いずれは47都道府県ごとに不動産を保有し、美味しいものを食べながら地域の街づくりにも貢献していきたい」と語る。
 このほか、木内氏は不動産オーナー経営学院(REIBS)での講師を務めるだけでなく、執筆活動にも注力。2023年には第1弾の著書「不動産はオークションで賢く売ろう~不動産売却で得する3つのポイント~」を上梓し、今月中旬には第2弾の著書「なぜ、あの不動産は相場より1・3億円も高く売れたのか?」の発行を控えている。本書は不動産オークションで実際に木内氏が相談を受けた事例をもとに執筆された。本書では不動産の価値を引き出すバリューアップ戦略やマーケティング戦略、買い手との交渉術など、実体験をもとにしたポイントを紹介。情報の非対称性が大きいとされる不動産業界において、本書は顧客に寄り添った不動産の売却をサポートするプロの重要性を説いている。




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