不動産トピックス

【3/9号・今週の最終面特集】事業用不動産での木造・木質化採用進む 中規模オフィスビルでの最新事例

2026.03.09 10:44

中規模オフィスREVZOの第5弾 S造と木造によるハイブリッド採用
CLT採用の「REVZO新橋」竣工
 鉄骨造(S造)と木造によるハイブリッド構造での事業用不動産の建設が増えている。行政も積極的に推し進めたい思惑があるようだが、未だ事例は少ない。そんな中、東京都港区西新橋でハイブリッド構造による中小オフィスビルが誕生した。物件の差別化としてPRでき、他の事業者からは今後建替えの参考事例に注目される。

 中央日本土地建物(東京都千代田区)は東京都港区西新橋1丁目で進めてきた、木造・木質化によるオフィスビル開発計画の最新事例を発表。中規模オフィスブランドREVZOの第5弾「REVZO新橋」として、2026年2月28日に竣工を迎えた。
 「REVZO新橋」の開発地は2021年9月に取得。当初は鉄骨造による、一般的なオフィスビルの建設を計画していた。しかし、環境配慮やカーボンニュートラルに対する社会意識の高まりや建設に携わるゼネコンの木造建築における技術進化、木造・木質化によるオフィスビルの価値向上、加えて既存の物件の内装材にも木材や自然素材を積極採用してきたREVZOとの親和性の高さやブランド深化につながる点に着目。建設地は長年再開発やエリアマネジメント等で携わってきた虎ノ門エリアで、本社のすぐ近くに同社初の木造・木質化オフィスビルの建設を計画。2022年にはS造と木造によるハイブリッド構造のREVZO開発を決定。2024年7月に着工した。
 「REVZO新橋」は、都営地下鉄三田線「内幸町」駅徒歩2分、JR線および東京メトロ「新橋」駅からは徒歩5分の日比谷通り沿いに立地。東京メトロ銀座線「虎ノ門」駅や日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅も徒歩7分圏内に位置する。規模は地上10階建て。延床面積は2627・52㎡。1階はエントランスホールとラウンジ空間で、2~10階が貸室。基準階貸室面積は223・63㎡(67・64坪)。REVZOシリーズの特徴である開閉可能な窓や植栽豊かなバルコニー、採光を取り込みやすい執務空間、共用ラウンジなどを今回も採用。執務空間の空調は床吹空調で、レイアウトに合わせて移設できる。またオフィスは東西での抜け感を確保。視界が通る、見通しの良さも特徴だ。
 2~5階は内装工事や家具什器などを全て取りそろえたセットアップオフィス。什器は内装デザインと統一を図り、テナントは移転後すぐに業務を開始できる。セットアップオフィスでは、会議室とともに個室ブースを2つ用意。オンラインなどによる打ち合わせ需要を垣間見て設置を決めた。
 投資開発部 リーダーの津田祥子氏は「すでに引き合いは複数社からあり、主に増床ニーズや立地改善、既存オフィスからのスペック改善などの前向きな移転が多い。先行して一部フロアの内装を仕上げ、モデルルームとして内見できるようにしたところ、想定通り、実際に内見することで木造・木質化オフィスの魅力を感じていただき、テナントからの感度も高まりました」と語った。
 1階には共用ラウンジと会議室を用意。共用ラウンジは無線LANも完備。会議室はクライアントを招いての打ち合わせやプレゼンに使用でき、共用ラウンジでは休憩やコミュニケーションの場にも活用できるなど、多様なニーズに対応できる。一方、屋上は緑豊かな屋上テラスとなっており、ワーカーのリフレッシュや交流を促す憩いの空間をつくった。今や定着しつつある「ABW(Activity Based Workingの略。仕事内容に合わせて場所・時間を社員が自律的に選ぶ働き方)」にも対応できる。
 「REVZO新橋」は、同シリーズ初のS造と木造によるハイブリッド構造を採用した。柱や天井、外装・内装などを木造・木質化し、特にオフィス(貸室)の天井面はフラットな木質天井となっている。これは梁の張り出しを失くす「逆梁工法」と、先に挙げた床吹空調によって実現。天井の合成デッキに凹凸が付いており、凹凸に合わせるように照明等の設備機器や間仕切り壁を支持するためのスリットも付けた。このスリット設計により、天井面の木を傷付けない環境が実現。入退去時における天井の木材に対して傷をつけず、かつメンテナンスの手間も発生しない。
 木材はCLTを採用。直交集成板のことで、木材の繊維方向が直交するように積層接着した材料を使用した。剛力性が高まり、その補強効果によりスラブを薄くすることのできる「KiPLUS DECK」を採用。このKiPLUS DECKを全面採用することで資材量を減らし、環境負荷低減にも貢献できた。
 柱は国土交通大臣より耐火構造の認定を受けた「燃エンウッド柱」の技術を採用。火災が生じた場合、断熱効果(燃え代層)と吸熱効果(燃え止まり層)により荷重支持部を火災の熱から守る。ちなみに燃エンウッド柱で使用した木材の一部は多摩産材だ。「REVZO新橋」での木材使用箇所は屋上テラスの庇や貸室内のリフレッシュルームの内装材、貸室内の柱(両端部の木造箇所と中央部の仕上げ)、貸室内の天井、1階ラウンジの天井や1階外壁の一部にも使用した。1階ラウンジの天井では、アーチ型に加工して取り付けた。エントランスの風除室にも木ルーバーを採用しており、これは平塚にある同社保有林にて鉄道会社が伐採した木を同社が再利用する形で採用した。また6階の木造柱の荷重支持部には山中湖の保有林で伐採した木材を使用。同じ木材でEVホールのアートを製作している。
 津田氏は「当ビルでの木の使用量は118㎥。CO2の固定量は79トンとなりました。当社は、神奈川県平塚市の吉沢(きさわ)地区に約85ha、山梨県南都留郡山中湖村に約18haの山林を所有しています。『REVZO新橋』では利用期を迎えた保有林の樹木を耐火集成材や仕上げ材の一部に活用しました。適切な伐採により、森林下部へ太陽光を届けることができ、幼木の生育を促すとともに生物多様性を育みます」と述べた。
 ちなみに同ビルでは東京都農林水産振興財団の「中・大規模建築物の木造木質化支援事業」と、「木の街並み創出事業費補助金」を活用。今後のコンパクトビル建築における、S造と木造によるハイブリッド構造の参考事例とも言える。


<物件概要> ●物件名:REVZO新橋
●竣工:2026年2月28日
●延床面積:2627.52㎡
●敷地面積:338.44㎡
●規模:地上10階
●用途:1階エントランスホールとラウンジ、2~10階オフィス
●所在地:東京都港区西新橋1-16-5
●木材使用量:約118㎥




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