不動産トピックス

【3/2号・今週の最終面特集】地方都市の新築ビル 独自性と特徴付けで差別化

2026.03.02 10:44

地元に根付くテナント育成と誘致に注力
地上6階建ての商業テナントビル レトロ風の外観
 都市部に立地するテナントビルであれば、比較的テナントは決まりやすく、満室稼働も早いだろう。一方郊外や地方都市のテナントビルであれば空室解消には苦戦する。とはいえ、久しぶりの新築ビル供給や環境認証制度取得など、多様なニーズを見据えて取り組んでいる。

賃貸区画は全12区画 1フロア2区画の構成
 ライフ(神奈川県逗子市)は昨年7月末、京急逗子線「逗子葉山」駅北口から徒歩1分、JR横須賀線・総武線・湘南新宿ライン「逗子」駅東口からは徒歩4分に商業テナントビル「ライフ新逗子ビルディング」を建設した。
 「ライフ新逗子ビルディング」は、RC造の地上6階建て。延床面積1489・23㎡。敷地面積371・47㎡。2022年8月に、相続人のいない同地をライフが入札で取得したことが開発のきっかけ。逗子市役所が建つシンボルロードを挟んだ向かいに立地。タイル張りの市役所とビルの雰囲気を調和させるため、連続性を持たせることも意識して、外観をレンガ調のタイルと濃いタイルを合わせたレトロ風に仕上げた。3~6階は景観条例もあり、レンガ調の色は使用できない代わりに、淡い色の質感のあるタイルデザインで整えた。築年数が経過してもイメージを損なわない、レトロ風の新築テナントビルとなった。
 賃貸区画は全12区画。1フロア2区画の構成。101が77・39㎡。102が75・08㎡。201は117㎡。202は89・39㎡。3~6階は同じレイアウトで、301~601が122・41㎡。302~602が89・39㎡。1~2階が飲食店舗や物販などを対象。一方3階より上の空中階はクリニック、物販、オフィス需要などを対象としている。

自らテナントを誘致 インバウンドも視野に
 代表取締役の薮島洋介氏は「他の事業者の協力も得て、テナントの成約が進んでいます。デンタルクリニックや一部オフィス(不動産会社)の入居が決まっており、関連して調剤薬局からの問い合わせもありました。純粋なオフィス需要はそこまでありませんが、久しぶりの新築ビルであるため、スペック改善や立地改善を視野に入れた移転には好ましいでしょう。既存の賃貸面積からの増床ニーズや新しい内装を生かして来店型のサービス店舗にも適しています。またビル外観はバス通り沿い、および『逗子葉山』駅のホームから正面に見える立地のため、入居テナントにとっては宣伝効果が非常に高いです」と語った。
 逗子は以前から、雄大な自然およびリゾート地の強みを生かした不動産投資事業や富裕層の実需にも選ばれてきた。反面、リゾート以外の名産や見どころが少ない。以前からその点を危惧していた薮島氏は、地域の名産を育成し、後に地元の活性化やPRにつながるようなテナントの誘致を積極的に行ってきた。地元の不動産事業者とも協力し、その思いに応えてくれる、また同じ考えを持ち逗子に定着してくれるテナントを探していたが、その取り組みはとても難しい内容であった。
 「以前は自ら店舗の誘致を行っており、逗子に根付いてくれる店舗や企業を誘っていました。現在もそのようなテナントを意識しつつ、同じエリアや近隣地域からの移転も受け入れています。特に地方都市であれば、政令指定都市でもない限り、新築ビルの供給は『○年ぶり』となります。注目度も高いため、ニーズや要望が高い内に早めにテナントを決めて、『ライフ新逗子ビルディング』から街を盛り上げるきっかけになればと思います」(薮島氏)
 逗子市内でも久しぶりの同規模によるテナントビル建設とあって、行政と密に連携しながら開発を進めてきた。今後同地域でテナントビルを建設する際に、直近に竣工したテナントビルの建設モデルとして参考となるだろう。また近年は観光客、特にインバウンドも増えてきた。これからは観光客が立ち寄れる店舗や帰りに購入する名産品の形成に一層注力し、地域の魅力発信にも貢献していく構えだ。

昨年6月竣工を迎えた「JOMOスクエア」
 上毛新聞社(群馬県前橋市)が本社隣接地で建設していたオフィスビル「JOMO(じょうもう)スクエア」。昨年6月に竣工を迎え、7月上旬には竣工式を開催した。
 「JOMOスクエア」は、前橋市古市町一丁目地区優良建築物等整備事業で建設されたS造・地上9階建てのオフィスビル。建築主は前橋市古市町一丁目地区優良建築物等整備事業共同施行者協議会で、同社以外にオープンハウス・ディベロップメント(東京都千代田区)とNew Frontier Bridge(群馬県前橋市、以下NFB)が参画。敷地面積5775㎡(1747坪)内に、オフィスビルやマンション、立体駐車場等を整備する同県における大規模再開発プロジェクト。工期は2023年10月~25年6月。事業全体の延床面積は2万2668㎡(6857坪)。総工費は64億7800万円。内訳は上毛新聞社44億4000万円、オープンハウス・ディベロップメント18億7700万円、NFB1億6000万円。国と前橋市からは上毛新聞社へ8億4500万円、オープンハウス・ディベロップメントには3億4500万円の補助金が支給された。
 「JOMOスクエア」は延床面積7869㎡(2380坪)で、建設費は31億2800万円。上毛新聞社とNFBが区分所有。内訳は上毛新聞社が93・64%、NFBが6・36%。2社によるJOMOスクエアオフィス棟管理組合が管理し、実務は上毛新聞社に委託。オフィス用の賃貸区画18室。各部屋の面積は163・8~871・12㎡(50~263坪)。リコージャパンのデジタルサービス営業本部群馬支社、全国健康保険協会の群馬支部、アジア航測、上毛新聞アドシステム、糸井商事、リストレットなどが入居した。ちなみにリストレットは、1階ロビーにコーヒー店「シキシマコーヒーカウンター」を開設。15社前後が入居し、現在はおよそ600名もの社員が勤務している。
 特徴は環境性能。建物の高断熱化や冷暖房の高効率化を図り、消費エネルギーを従来の建物の50%以下に抑えた。省エネの認証制度として「ZEB Ready」を取得。全てのガラスをペアガラスに統一し高断熱化。北側のガラスは光を取り入れ、南側は光を抑制する構造。外壁にガラスを多用することで明るく開放的な空間になった一方、つる状の植物(スイカズラ、カロライナジャスミン)で壁面を緑化。落ち着いた雰囲気も演出した。屋上には太陽光発電パネルを設置。発電量は40kwで、全てビル内で消費することを想定している。
 1階ロビーには「学びと交流の場」と称したスペースを設けた。広さは600㎡(182坪)で、50席のセミナー会場や絵画・写真の展示会場、休憩・喫茶スペースなども設けた。ビル内就業者や市民の憩いの場となることを想定する。セミナー会場は外部への貸出を行い、平日は5時間で1万2000円。終日は2万円など。テナント企業や前橋市民・団体には割引あり。スライディングウォールで仕切れるなど、利便性も高い。
 ちなみに開発区内には上毛新聞社が所有・運営する490台収容可能な立体駐車場「JOMOスクエアパーク」と、オープンハウス・ディベロップメントが建設・分譲したマンション「オープンレジデンシア新前橋」が立地する。各建物はペデストリアンデッキで接続され、上毛新聞社の本社ビル2階とも接続。またエリア内の最北部には、憩いの広場「ポケットパーク」も開設。JR「新前橋」駅から来る人、駅へ向かう人が気軽に立ち寄れる・リフレッシュできる場所となった。
 一部区画に空きはあるもののほぼ9割以上の稼働率。就業者や近隣に暮らす住民とともに今後は地域の活性化や魅力発信に寄与していく。




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