不動産トピックス

【2/23号・今週の最終面特集】福岡のオーナーにおけるビルの差別化と付加価値形成

2026.02.23 10:27

今のうちに取り組むビルの付加価値形成
環境認証制度取得とサービスオフィス普及が加速
 時流や需要を掴み、上手く対応していくことは不動産オーナー・不動産事業者にとって必須のスキルと思われる。突出して変わったことを行う必要はなく、自身のビルに何が求められているのか、何が最適解なのか把握することが大事である。

3月にビルは満床予定「博多祇園NKビル」
 西部ガスグループの不動産事業の一翼を担う西部ガス都市開発(福岡市博多区)は、新築賃貸マンションのブランド「Nudgeone.(ナッジワン)」の開発やオフィスビル、商業施設、物流倉庫などを開発し、運営している。
 1971年にボウリング場の経営を行う「株式会社シティサービス」として誕生。73年には前身の「西部ガス興商株式会社」へ商号変更し、2020年に現在の社名に変更した。この社名変更後から同社は外部の不動産取得や賃貸マンションの開発に注力していく。保有戸数は増加傾向であり、現在は駅近中心の重点物件で計28棟(約1200戸)の賃貸マンションを保有する(2025年12月末時点)。オフィスビルの取得も同時に進めており、現在保有棟数は計10棟。総賃貸面積は約2万4000坪。稼働率はグループ会社での事務所活用や駅近物件に絞っている影響もあり、おおむね満床で推移している。
 福岡市博多区冷泉町には、2018年11月竣工の「博多祇園NKビル」を保有している。規模は地上8階建て。延床面積は4327・53㎡。敷地面積は662・42㎡。調光制御機能付き照明やデシカント空調を採用しており、福岡市営地下鉄空港線「祇園」駅2番出口から徒歩2分のアクセス性が特徴で、築10年以内と築浅ビルである点も強みだ。
 基準階貸室面積は420・56㎡(共用部含め127坪)。基本は1フロア1テナントだが、一部分割したフロアもある。大手企業の支店オフィスや中小企業の本社オフィスとして利用されており、竣工時から入居を続ける企業は全体の約半分。定着率が良く、今後も継続を希望するテナントが多い。テナントの入れ替わりもあるが、3月には満床に戻る予定だ。
 不動産事業本部 不動産部 管理グループ マネジャーの吉田武治氏は「西部ガスグループのサステナビリティの推進に向けて、保有オフィス・テナントビルのZEB化は適宜検討を開始しており、グループ会社である西部ガステクノソリューションや空調メーカー等と協議・勉強会を重ねた結果、『博多祇園NKビル』は設備更新をせずに建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)による『ZEB Ready』認証を取得できました。当社での『ZEB Ready』認証取得は、本件が2例目。脱炭素化社会の実現に向けて、エネルギー使用量削減に向けた取り組みを現在進めています。例えば、ここ数年で保有物件の電気を西部ガス本体の取組みである非化石証書を活用した『実質CO2ゼロ・実質再エネ電気』への切り替えを行っています。『博多祇園NKビル』の電気の切り替えも検討中です」と語った。保有ビルでも段階的に照明のLED化やGHP空調の定期更新を行うなど、脱炭素化社会を意識した取り組みに熱心だ。2025年度は独自に保有ビル数棟に対して省エネ診断も実施、入居者側の省エネ意識の醸成も促している。省エネ法に則った定期報告では、2020~24年までの実績で優良事業者であるSクラスを維持している。
 西部ガス都市開発は2025年度から、リノベーションの賃貸マンションブランド「Re+ Nudgeone.(リプラス ナッジワン)」を開始。既存物件を取得後に資産価値を高めるリノベーションを行い、入居者やテナントを誘致する。管理グループの富森清次主任は「2年前に物件を取得し、建築費の高騰の課題を解決するために当初の開発スキームから大規模なリノベーション工事に方針転換しました。その他保有物件についても部屋ごとのリノベーションも含め、積極的に資産価値の向上を図っていきます」と述べた。

7階でスモールオフィス「ワークステーション博多」
 「はかた近代ビル」はJR「博多」駅から徒歩3分、博多駅東1丁目1番地に立地する。7階でスモールオフィス「work station 博多(以下、ワークステーション博多)」を運営するのは、木下不動産(福岡市中央区)と、運営・管理を担当するサイフォ(福岡市中央区)だ。
 木下不動産 代表取締役の木下真吾氏は、以前東京に本社がある不動産会社で勤務していた時に、何度かリーマンショックなどの不況の煽りを体験した。その際に独立・起業する設計事務所や個人事業主が多いことに着目。この出来事をきっかけとして、後に起業家・スタートアップをターゲットとしたスモールオフィス「ワークステーション」を始めた。コンセプトは「さあ、小さな一歩をここから始めよう!」。初期投資をできるだけ抑えたい、かつシンプルでスピーディーに始めたい起業家等に好まれる環境を整えた。
 1拠点目は福岡市中央区舞鶴3丁目の昭和通り沿いで開始。その後赤坂や薬院でも始め、博多で4拠点目。今年1月末時点で総戸数は93戸。入居率は98%。「ワークステーション博多」は、2021年11月に開業。部屋数は29室。先月末時点で稼働率は100%。1~2名用の完全個室で構成され、部屋の広さは3・2~5・5m2。他拠点と比較し、法人利用での問い合わせが多い。
 代表取締役の木下真吾氏は「法人利用の多さは『博多』駅至近のアクセス性とネームバリューが影響しているでしょう。福岡で開業するならば『博多』駅とイメージしやすく、従前から支店・営業拠点開設の高い需要に加え、昨今は外資系企業の利用も増えています。入れ替えがあってもすぐに次の利用者が決まります。施設は無人対応。宅配便は宅配ボックスに、各郵便物はメールボックスで対応できます。インターネットや会議室(ミーティングルーム)の利用、光熱費などの料金も月額賃料に含まれており、分かりやすい料金体系が新規の契約および継続利用につながっています。法人の住所登記にも費用は発生しません」と語った。
 セキュリティも特徴。無人管理なため、全部屋にスマートロックを設置。物理的な鍵を使用することなく開錠・施錠できる。また完全個室なため、オンラインでの打ち合わせも容易。音漏れを気にすることなく、自由に利用できる。士業関係からはプライバシー保護を理由に選ばれる傾向がある。現在福岡市はスタートアップの支援に注力している。とはいえ、創業間もない個人事業主が安価で借りることのできる、かつ利便性の高いシェアオフィスやコワーキングスペースは少ない。昨今は付加価値が高い分、利用料金も高いシェアオフィスが増えている。これらの流れもワークステーションの利用に追い風となっている。
 管理担当のサイフォ 賃貸管理部の松岡哲也氏は「リーズナブルな料金でも、安心・安全・快適に利用できる環境として、コストパフォーマンスが高く支持を集めています。博多だけでなく舞鶴、赤坂、薬院にも拠点はありますので、今後もこれら施設の質を高めながら、利用者の満足度にもつなげていきます」と語った。




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