不動産トピックス
【2/16号・今週の最終面特集】空き家ビジネスの現在地

2026.02.16 10:36
空き家管理の先を見据えたサービス戦略 地域加盟店の「空き家サポーター」が鍵
空き家をリノベーションし非住宅の用途へ転換 目標は空き家をなくすこと
今後ますます増えていく空き家。管理不全による地域への悪影響が指摘される一方で、適切な管理や再生によって新たな価値を生み出す動きも広がる。本特集では空き家管理を担う企業と、空き家の活用に取り組む企業の現場を追った。
特徴は動画での報告 加盟店800社体制を目指す
L&F(千葉市美浜区)は空き家を管理するサービス「日本空き家サポート」を運営している。
「空き家で悩む人をゼロに」がコンセプト。相続などで空き家を取得したものの、頻繁に様子を見に行けない所有者を対象としている。
「日本空き家サポート」を立ち上げたのは2015年。代表取締役社長の森久純氏は前職の大手賃貸サブリース会社に勤めていたころ、全国への出張を重ねる中で空き家やシャッター通り商店街が各地に広がっている現状を目の当たりにした。「空き家は今後ますます大きな課題になる」と感じる一方で、当時は管理を専門に担う事業者がほとんど存在していなかった。空き家規制の法整備もまだ十分ではなかったが、将来的に規制が強化されると予想。空き家管理事業での起業を決意したという。
サービスの基本プランは月額1万円で、1カ月に1回の巡回を行う。「空き家サポーター」と呼ばれる「日本空き家サポート」の加盟店が現地を訪れ、外観や室内に入り侵入の形跡がないかの確認、通水状況などをチェックする。巡回時には複数の動画を撮影し、所有者はマイページ上で確認できる。プランによっては外観確認のみや月2回巡回のコースも用意する。対応エリアは全国。
動画による報告が特徴だ。写真だと使いまわしができてしまい、本当に巡回を行っていない可能性がある。動画は写真と異なり使い回しが難しいため、管理状況の透明性が高い。また家の様子を動画で見た所有者から「懐かしい」との声も聞かれるという。
「空き家サポーター」の加盟店は不動産関連事業者が中心。宅建免許を持つことが必須となる。不動産会社のほかに、工務店、ガス会社なども含まれる。現在、全国で約245社が加盟している。加盟にあたっては、地域性や継続していけるかなどを重視している。外注は認めず完全自社対応ができる事業者に限定。闇雲に増やすのではなく、信頼できる加盟店を増やす指針としている。将来的には800社体制を目指し、現在加盟店を募集している。
森氏は「空き家管理は建物の管理だけでなく思い出も管理します。鍵を預かって家の中に入りますので、真心を持って管理する。このため志を持った加盟店に加盟してもらうことを大切にしています」と語る。
サービスは管理にとどまらず、その後の売却にもつながりやすい点が強みだ。「日本空き家サポート」のサービスを解約した所有者の約4分の3が、最終的に売却に至っているという。「しっかり管理してくれたから」と、空き家の管理を任せていた不動産会社に最終的な売却相談を持ちかけるケースが多い。売却時の手続きは「空き家サポーター」の加盟不動産会社が担う。「不動産会社は将来の売却を見据え一生懸命管理を行う。所有者はきちんと家を管理してくれてうれしい。ウィンウィンの関係を築くことができる」(森氏)
「空き家サポーター」に加盟する際の初期費用は、加盟費用として180万円、初期導入費として20万円。月会費は2万円となる。座学の研修やOJTを通じて加盟店にノウハウを提供。販促ツールも用意する。
サービス立ち上げ当初は収益化に苦労したというが、品質維持を徹底してきた。クレームもほぼゼロだという。加盟店の人員不足などで巡回が難しくなった場合は、引き継ぎ先が決まるまで同社が対応する。森氏は「新しい加盟店に引き継ぐまで、毎月飛行機を使って鳥取県まで行ったこともあります」と振り返る。
森氏は今後について「現在はお断りせざるを得ないエリアもありますので、今後は全国のほとんどのエリアを管理できる体制を作っていきたい。そのために加盟店を最低限800社に増やしていく。そして空き家・中古住宅の、今までになかった新しい流通のプラットフォームを作るというステージに入っていきたいです」と語った。
「活用」で地域の空き家減少へ 長期で借り上げ収益を確保
ジェクトワン(東京都渋谷区)は空き家事業「アキサポ」を展開している。「アキサポ」は「買取」と「活用」の2つの事業で構成され、空き家対策の総合的なサービスも行っている。
「買取」は空き家を直接買い取るサービス。全国が対象。物件を買い取り、個人投資家等へ向けて販売する。
「活用」は、所有者から定期借家契約で物件を借り受け、基本ジェクトワンが費用を負担しリノベーションを実施。一定期間転貸する仕組み。売却・解体とは異なる第三の選択肢として提案する。対象エリアは首都圏と関西圏。
「活用」の特徴は、住宅を非住宅用途へ転換する点。住宅から住宅へのリノベーションでは空き家の総数は変わらないが、店舗やオフィスなどの非住宅用途に転換することで地域の空き家減少につながる。賃料も居住用に比べ、高く設定することができる。具体的な転換例としてはシェアハウス、シェアオフィス、飲食店、トランクルームなど。
代表取締役の大河幹男氏は、その土地に眠るニーズや価値を掘り起こすことが重要だとする。「例えば住宅街に空き家があったとき、周囲を調べると狭小住宅が多かったとします。収納場所が少ない住宅が多いため、トランクルームに転換すると需要を取り込むことができます」
「活用」で条件が合わなかった場合も、売却や解体といった別の選択肢を提案する。「空き家を放置せず、なくすこと」を目的に、さまざまな方法を模索する。大河氏は「空き家は今後も増えていきます。空き家をなくすことが、不動産事業として成り立つ。そこに民間企業のあるべき姿があると思っています」と語る。
「アキサポ」を始めたのは2016年。既存事業の収益が安定し、新しい事業を模索していた時期だった。当時は空き家問題がクローズアップされ始めてきたころで、「空き家を使って新しいビジネスを始められないか」と考えたことがきっかけだ。当時は空き家ビジネスといえば、空き家の管理や売却を促すセミナーが中心。空き家を売りたくない層への選択肢が少なく、「自分だったら費用負担なく空き家を再生したい」と考えたことが現在の事業の形へとつながった。
大河氏は事業として収益化するのに苦労したと話す。空き家事業はリスクも大きい分野。見積と実際の工事費が異なるケースも少なくない。長期で借り上げ、時間をかけて収益を確保していく事業モデルとする。事業を開始する際は、他社の知り合いや社内の社員から反対の声も上がったが、「いつか大きく発展させ事業として成り立たせたい」と進めていった。当初はあまり反響が得られなかったというが、テレビに取り上げられたことをきっかけに大きく話題となった。現在問い合わせは年間4000~6000件ほどが寄せられる。累計で約600件の実績を積み上げている。
AIの積極的な活用も進めている。これまで買い取り金額の査定はアナログで行っていたが、自社開発でAI化。自動で空き家の査定を行うアプリの開発も進めており、今後提供を開始する予定だ。
大河氏は「『活用』では東京や大阪、地方都市で、民泊やゲストハウスの展開を進めていきたい。『買取』は年々反響も増えてきていますので、全国規模でさらに拡大していきたいです。さらにAIを活用し、事業の合理化もしていきたい」と先々の展望を語った。



