不動産トピックス

【8/11号・今週の最終面特集】採用進む外国人人材 不動産業界における最新動向

2025.08.11 11:04

不動産業界でも加速する外国人採用
投資用不動産の紹介や住まい探し 管理業務にも中国語需要増加
 不動産業界およびビル業界では外国人の雇用が進んでいる。建設工事やビルメンテナンス、昨今は不動産の売買・仲介業務でも需要は高まっている。しかし日本語を流暢に話すことのできる外国人就業者を集めることは難しい。実績のある企業と組むことが成功の秘訣である。

NIPPON仕事.com 外国人求人情報サービス
 2002年11月設立のグッドマンサービス(東京都千代田区)は、外国人を中心とした人材紹介・人材派遣業を行っている。グローバル人材向けの求人情報サービス「NIPPON仕事.com」を運営・展開。外国人および彼らを雇用したい企業からの需要が高い。
 グッドマンサービスは、外国人の採用を検討する企業へ採用業務をサポートする「グローバル事業」と、ホテル・旅館・スキー場などへリゾートバイト向けの人材派遣を行う「リゾート事業」を行っている。リゾート事業は創業時から実施。地方と若者をつなぐプラットフォーム「リゾートバイト.com」を運営しており、「食費・宿泊費は無料」である代わりに住み込みで働くことで、リゾート施設の人材問題を解決。若者(労働者)は短期間で稼げるといった相互メリットの仕組みを生かし、全国規模で展開してきた。
 2009年からはリゾート事業の中で、ワーキングホリデービザの活用を開始。ワーキングホリデービザは休暇を主な目的としつつ、一定期間日本に滞在。その滞在資金を補うために就労が認められた特別なビザ。就労経験や語学力向上、異文化体験などさまざまな目的で利用されている。ワーキングホリデービザの活用をきっかけに、彼ら外国人へ仕事を紹介する需要が伸びてきた。
 2010年に日本で働きたい外国人をサポートする「グローバル事業」を開始。さらに日本で働きたい外国人求職者が多くいること、国内の企業でも外国人採用を積極的に進めたい企業がいることから、15年に外国籍・バイリンガル人材向けのグローバル求人情報サービス「NIPPON仕事.com」を立ち上げた。今年4月15日でサービス開始10周年を迎えた。世界135カ国・3万人を超える外国人求職者からの会員登録と就業サポートの実績を持つほどまでに成長。現在スタッフは9割が日本人。残り1割が外国人。外国人求職者の利用が多いからこそ、ネイティブに話せる外国人スタッフを抱えている。
 グローバル事業では主に人材紹介と人材派遣がある。人材紹介は企業の採用条件を基に、グッドマンサービスが求人を実施。要望にマッチしたスタッフを紹介する。紹介料は想定年収の20%。一部職種により採用単価が異なる。グッドマンサービスからの派遣スタッフとして企業に人材派遣を行う場合と、「紹介予定派遣」として直接雇用されることを前提に、一定期間派遣スタッフとして就業する場合もある。期間終了後に派遣先と本人の双方が合意した場合に社員・契約社員などで採用できる。同社がビザ手続きを事前に行うため、雇用が切り替わる際もスムーズに手続きを行うことができる。
 東京本社 グローバル事業部の大谷龍亮部長は「不動産事業者への外国人の紹介実績もあります。例えば、2020年からはビルクリーニングにおける外国人技能実習生の需要が伸びました。ビルメンテナンス業界では、清掃スタッフの確保が年々難しくなっており、外国人の採用・雇用が増えています。特に一定の専門性や技能を取得している、即戦力となる特定技能取得者のニーズは高いです。また中国語の需要も増えています。投資用不動産の紹介や住まい探し、内見等で話せるスタッフが求められています。マンションの管理業務でも中国語の需要があり、特にネイティブに話せる人のニーズが直近は伸びています」と語った。
 同社の強みはサポート体制。求職者に対して基本的には日本語での面談を行うことで、求職者の日本語レベルを的確に判断し、企業の求める日本語レベルを持つ人材紹介を実施。応募する外国人も一定の日本語スキルを持つ人が多く、彼らを派遣して終わりではなく派遣後のサポートも熱心に行う。
 同事業部の牛暁元部長は「当社は全国規模で対応可能です。ちなみに当社の『NIPPON仕事.com』は、毎月の新規応募登録数(外国人求職者)が300~500名前後。日本で働きたい・仕事を探している外国人なら、間違いなく知っています。当社は今後日本語を話すことのできる外国人の派遣だけでなく、付加価値の提供や日本企業の人材確保に協力できる体制の拡充なども行っていきます。また日本語学校との提携、日本人を海外企業へ派遣する事業も検討しています」と述べた。

東急ビルメンテナンス 外国人材紹介の子会社設立
 東急コミュニティー(東京都世田谷区)の子会社・東急ビルメンテナンス(東京都世田谷区)は、外国人材と日本企業を支えるプラットフォームを提供する企業、Global Gateway Japan(東京都渋谷区、以下G2J)を今年2月20日に設立。ライセンス取得を経て、今月4日から事業を開始した。
 G2Jは日本が直面する労働力不足や高齢化などの社会課題の解決を目指し、外国人材と企業が互いに信頼し合い、安心して働ける環境づくりのために設立された。親会社である東急ビルメンテナンスの事業を通じて、多くの外国人とともに培ってきた経験やノウハウを生かし、グループ企業をはじめ、宿泊・外食・介護などさまざまな分野へ事業を広げていく。国籍に関係なく平等な機会と、正当な評価を受けられる社会を実現し、一人ひとりが成長し活躍できる社会の実現を目指す。
 事業は主に3つ。1つ目はグローバル人材紹介。「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」など、一定のスキルや専門性を備えた外国人材を企業のニーズに合わせて紹介する。外国人材は日本在留者を含み、現場を支える即戦力を紹介するサービスだ。
 2つ目は登録支援機関業務。「特定技能」制度において義務付けられている就労・生活両面の支援を、法務省登録の支援機関として受入企業に代わり提供する。外国人材の「安心して働ける環境」を、制度・現場の両面から支える。
 3つ目はサーティフィケイト提供。独自の「3ステップ・サーティフィケイト制度」を提供し、学習・成長を見える化。採用前・内定後・入国後の段階で適格性や習得度の評価を提供することにより、受入企業が安心して人材を採用・育成できる仕組みを整える。サーティフィケイトとは、スキルや知識、能力を取得したこと・基準をクリアしたことを証明する「認定証」のこと。学習と成長をしっかりと「見える化」するG2Jオリジナルの認証制度を提供する。受入企業の安心にもつながる仕組みだ。
 同社は前述の3つの事業を柱とし、一気通貫で展開。企業の成長と日本で働きたい外国人材の未来を一緒に支えるパートナーを目指す。同社の代表取締役社長は、現在東急ビルメンテナンスの代表取締役社長の亀島成幸氏。8月4日のリリースで亀島社長は「G2Jは、多様な人材が安心して働き、活躍と成長につながる環境をつくるために設立されました。働きたいと願うすべての人に対して、フェアな機会と適正な評価を提供することで、キャリア形成を支援し、企業の持続的な発展を後押しします」とコメントした。

外国人材マネジメントのエンプラス 家賃保証会社と業務提携
 エンプラス(東京都中央区)は今年5月、Wellon Solutions(東京都中央区、以下WS)と業務提携契約を締結した。
 エンプラスは来日する外国人材のマネジメント業務「グローバルリロケーションサービス」を展開している。ここ数年急激に需要が伸びており、特に外国人材を採用する企業側は外部にマネジメントを委託することで、効率化と業務負担軽減につながる。片やWSは、「ポータブル家賃保証 with 外国人コール24」を提供している。家賃債務保証サービス「ポータブル家賃保証」に、多言語サポートサービス「外国人コール24」を付帯した新たなパッケージサービスのこと。
 今回の提携によりエンプラスはWSから物件情報の提供を受け、グローバル人材の住まい探しの選択肢が拡充された。またグローバル人材に対しては、WSの「ポータブル家賃保証 with 外国人コール24」の紹介機会を創出していく。さらに両社共同でネットワークを活用した法人の取引先の開拓も行う。企業活動にまつわる外国人の部屋探し(新規採用、転勤など)を両社でサポートしていく。




週刊不動産経営編集部  YouTube