不動産トピックス

【5/5号・今週の最終面特集】地方都市で竣工続く 注目の新築中小ビル特集

2025.04.28 10:52

潜在的な中小テナント需要に応えて高稼働
エリア外からテナント誘致 地域活性化の後押しにも
 地方都市でもエリアによっては新築ビルの供給が続いている。駅至近の好立地は変わらず、最近まで新築の中小テナントビルが供給されていなかった点に着目。潜在的ニーズに上手く応えたことから、リーシングは順調に進んでいるようだ。エリアに適した建設事例を追った。

賃貸区画は全12区画 1フロア2区画の想定
 ライフ(神奈川県逗子市)は、京急逗子線「逗子・葉山」駅北口から徒歩1分、JR横須賀線・総武線・湘南新宿ライン「逗子」駅東口からは徒歩4分の好立地で「ライフ新逗子ビルディング」を建設している。竣工は2025年7月末の予定だ。
 「ライフ新逗子ビルディング」は、RC造の地上6階建て。敷地面積は371・47㎡。延床面積は1489・23㎡。同社が2022年8月に、相続人のいない同地を入札で取得したことが開発の始まり。場所は逗子市役所の通りを挟んだ向かいで、通りの名前はシンボルロード。逗子海岸まで一直線に伸びており、その入り口に位置する。特徴はタイル張りの市役所とシンボルロード沿いのイメージに合わせて、外観をレンガ調のタイルと濃いタイルを合わせたレトロ風に仕上げること。3~6階は景観条例もあり、レンガ調の色は使用できない代わりに、淡い色の質感のあるタイルデザインでバランスを整える。結果、同地の雰囲気に適したレトロ風の新築テナントビルが誕生する。
 賃貸区画は全12区画。1フロア2区画の想定で、101が77・39㎡。102が75・08㎡。201は117㎡。202は89・39㎡。3~6階は同じレイアウトとなり、301~601が122・41㎡。302~602が89・39㎡。1~2階が飲食店舗や物販などを対象としており、飲食に関しては軽飲食をイメージ。3階より上の空中階はクリニック、物販、オフィス需要などを想定している。デンタルクリニックやオフィスなどの入居が一部決まっており、この成約に合わせるように調剤薬局からの問い合わせが来ているとのこと。

新築ビルへの移転需要 増床ニーズにも対応
 代表取締役の薮島洋介氏は「『ライフ新逗子ビルディング』はバス通り沿い、および『逗子・葉山』駅のホームから正面に見える立地のため、入居テナントにとっては宣伝効果が非常に高いです。新築のテナントビルが供給されることも逗子エリアでは久しぶり。新築ビルへの移転需要や既存の賃貸面積から拡張したい増床ニーズにも対応できます。また敷地内に身体障害者用の駐車場を完備しています。様々な方の来店に応えることが可能です」と語った。
 リーシングにも同社の思いが表れている。現在逗子では地域の名産や見どころ、「これ」と言われる魅力が少ない。リゾート地として注目されることはあるが、観光客が立ち寄れるお店や帰りに購入するお土産(名産)の形成が求められている。同社はこの課題に着目。地域の名産を育成し、後に地元の活性化やPRにつなげたいと思っている。そのために前述のテナント需要に応えるだけでなく、自ら店舗の誘致を実施。遠方から同地に根付いてくれる店舗や企業を探している。和菓子の店舗に出店の誘いを行うなど、同地から街を盛り上げようと努力している。また逗子市内でも久しぶりのテナントビル建設とあって、行政と密に連携しながら開発を進めてきた。同地域における今後のテナントビルの建設モデルとあって、民間・行政共に注目度は高い。
 薮島氏は「地元企業の入居はもちろん、他エリアからの出店も大歓迎です。一緒に街のPRや魅力づくりに貢献する店舗を探しています。その様な企業が集まった、魅力的なビルとして誕生したいです」と語った。ビル竣工まであともう少し。それまでに成約状況も満室を目指す。

駅新幹線口から徒歩3分 新築の中小オフィスビル
 不動産事業者の明和不動産(熊本市中央区)が企画した新築オフィスビル「LAMONTE熊本駅前(ラモンテ熊本駅前)」が、2025年3月に竣工した。JR「熊本」駅新幹線口から徒歩3分の好立地に建ち、同エリアにおける中小規模のオフィス需要に応える。
 1981年4月創業、86年設立の明和不動産は、不動産の売買・交換・賃貸借およびそれらの仲介業、不動産に関する資産運用コンサルタント業、不動産に関するデジタルソリューションの提供などを手がけている。地元熊本を中心に、福岡・鹿児島・東京にも店舗・支店を展開しており、着実に実績を伸ばしてきた。テナントビルも複数棟保有・管理しており、今回の新築ビル建設にもこれらノウハウや知見が影響している。
 開発のきっかけは、昨今の「熊本」駅周辺における潜在的な中小オフィスの需要があったから。同地は電車やバス等の公共交通機関による利便性の高さから県内はもちろん、県外企業からもオフィス需要の高いエリアとして注目されてきた。しかし、現在のオフィス供給数はその需要に追いついておらず、特に中小規模のオフィスが不足。2021年に「JR熊本駅ビル」が開業。2023年には「JR熊本春日北ビル」竣工と話題は多いが、規模および募集賃料の高さから中小企業が新築ビルに移転することは難しかった。中心市街地や他エリアに選択肢を広げざるを得ない状況を垣間見た同社は、この需要に着目。テナントビルの運営管理実績を生かして開発に取り掛かった。

県外企業の進出促進と県内企業の拡大支援
 新たに竣工した「LAMONTE熊本駅前」は、S造の地上6階建て。1階がピロティで、貸室は2~6階の空中階となる。66・16~66・24㎡(約20坪)の賃貸オフィス区画を10室備えており、貸室はOAフロア等を設えた内装仕上げ済み。最新のセキュリティ性や屋根付き駐車場15台分を確保するなど、新しい営業拠点としてのオフィス需要に対応している。特徴はやはり駅至近のアクセス性。九州新幹線やその他鉄道を利用できる環境にある。また久しぶりに新築の中小オフィスビルが竣工したとあって、既存オフィスからのスペック改善などを視野に入れた新築需要や拡張移転にも対応できる。新築ビルへの移転に伴う企業PRやブランディング効果も高い。
 リーシング業務を担当する法人事業部テナント事業課課長の山本誠吾氏は「県内外の大手保険会社や大手システム会社、IT系企業などから熊本支店のオフィス拠点として注目されています。また、中小を含む県外企業の熊本エリアへの初進出拠点としても検討していただけると思います。今回はオフィスにフォーカスしていますので、一般的な複合ビルにならないよう気を付けました」と語った。
 開発担当の売買事業本部資産運用部収益物件売買チーム係長の内海大樹氏は「今回の開発は『県外企業の進出促進』と『県内企業のビジネス拡大支援』を目的としています。駅至近の利便性から県外企業が熊本進出を検討しやすくなり、また県内企業は福岡やほかの近隣都市へのビジネス展開がよりスムーズとなります。この利便性と快適性を最大限に活用していただき、入居企業様にとって熊本県全域の企業活動の活性化を促進する拠点となっていくことを目指しています」とのこと。
 同事業は明和不動産が土地を仕入れビルを開発。後に開発物件としてオーナーへ売却(管理業務は同社グループ会社の明和不動産管理)するプラン。今後も適した土地・環境があれば、開発物件の事業を手掛けていく方針だ。


<物件概要>
●ビル名:ライフ新逗子ビルディング
●竣工:2025年7月末竣工予定
●オーナー:ライフ
●管理:ライフ
●延床面積:1489.23㎡
●敷地面積:371.47㎡
●規模:地上6階
●所在地:神奈川県逗子市逗子5-6-19


<物件概要>
●ビル名:LAMONTE熊本駅前
●竣工:2025年3月
●管理:明和不動産管理
●延床面積:1033.47㎡
●敷地面積:496.77㎡
●規模:地上6階
●所在地:熊本県熊本市西区春日4-25-5




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