不動産トピックス
【12/23号・今週の最終面特集】表参道で竣工続いた新築中小ビルの最新情報
2024.12.23 10:54
「GREEN TERRACE表参道」竣工 コンセプトに共感し出店 表参道での店舗需要も掴む
ボルテックスのmaximシリーズ6棟目「VORT南青山maxim」
新築物件であってもビルのコンセプトやリーシング戦略を入念につくり込まないと、竣工後にテナント誘致がうまくいかず、空室期間が長引く場合がある。今月は表参道で新たに竣工を迎えた物件と、本格的にリーシングを開始した物件がある。用途は違うが今後の進展に注目だ。
地上4階地下1階建て ロハス通りの商業ビル
不動産オーナーのスリーエフ(東京都港区)は、東京メトロ「表参道」駅A1・B2出口から徒歩2分のロハス通り沿いで、商業ビル「GREEN TERRACE表参道」の建設を進めていた。19日に竣工を迎え、関係者等を招いての竣工式ならびに祝賀パーティーを開催した。
「GREEN TERRACE表参道」は、地上4階地下1階の商業ビル。延床面積は1020・20㎡。賃貸区画は1階と2階が1フロア73・12坪。3階が約50坪、4階は約30坪、地下フロアは約50坪。1階は3区画に分割し、ヨーロッパ発祥のオーガニックの化粧品&スパ、国内の新ブランドのアパレル、ヨーロッパ発祥の香水店が日本初出店で入居。3階はしゃぶしゃぶ、4階はオーガニックのジェラートが出店する。地下には世界的に有名なバリスタが東京初出店の店舗を出す予定。同ビルはコンセプトを「子供からお年寄りまで等しく楽しめること」と決めていたことから、この理念や思いに共感するテナント、また表参道エリアでの出店機会を探していた企業が集まった。
ビルの動線も特徴的。屋外回廊を歩きながら最上階(屋上)へ自然と誘う造りとなっている。入居テナントを眺めつつ各階のピロティを経由しながら、屋上まで巡ることができる。各所には植栽やベンチを設けており、癒しや安らぎのスペースも構築。加えて植栽に囲まれた外観とすることで、築年数が経過しても陳腐化などのイメージは損なわず、むしろ物件の付加価値として印象が高まる造りとなっている。屋上にはエレベーターと屋外回廊からアクセスでき、明治神宮側に開けた景色を堪能しつつ一息つける空間となった。地下フロアには誰でもトイレ(バリアフリートイレ)やナサリールームを設置。エレベーターはバギーを複数台乗せることのできる24人乗りと、大型サイズを採用。「誰でも使用できる」かつ「障壁のない快適な設計」を意識しており、子供連れや車イスの利用者も不自由なく巡ることができる。
築年数が経過しても味わいが出るデザイン
完成を記念した祝賀パーティーでは、設計を務めたツチヤタケシ建築事務所(東京都中野区)をはじめ、施工を担当した北野建設(長野県長野市、東京本社は東京都中央区)や同社と取引・交流のある企業が多数集まった。開催に先立ちスリーエフの中澤明子社長が登壇し、同ビルを建てることとなった経緯や青山との繋がりについて語った。
「祖父が青山の土地を購入したのが1919年(大正8年)と、以降100年以上にわたって青山でお世話になっています。従前のビルには作家の落合恵子さんがオーナーの『クレヨンハウス』という子供向けの玩具や書籍、オーガニック食材を扱う店舗がありました。そのクレヨンハウスが吉祥寺に移転したことを契機に、2022年から建替え工事に入りました。皆様に親しまれていたクレヨンハウスの良さを継承しつつ年数が経過しても味わいや良さが出るデザインとし、また設計を担当したツチヤタケシ建築事務所と建設担当の北野建設の協力も得て、素晴らしいビルに生まれ変わりました」と語った。
ビルのコンセプトがしっかり練られていたこと、また同地の店舗需要も影響し、高稼働でのオープンとなった。店舗の大半は来年4月にグランドオープンを予定しており、3月中にはプレオープンも計画している。普遍的な店舗ビルではなく、独自性を追求した結果と思われる。
青山に新築ビル誕生 企業の拡張移転先に
「区分所有オフィスR」を主軸に資産形成コンサルティングを行うボルテックス(東京都千代田区)は、都市部を対象に「VORT」シリーズを展開してきた。規模、デザイン性、視認性を基準としてハイスペックな物件は「maxim」と命名。10月末にmaximシリーズ6棟目の「VORT南青山maxim」が竣工した。
「VORT南青山maxim」は、東京メトロ「表参道」駅徒歩1分の青山通り沿いに立地する。規模は地上9階建て。延床面積は2882・05㎡。用途は事務所・店舗で、貸室面積は1階の路面店が157・39㎡。2階の店舗フロアは304・88㎡。3~5階のオフィスフロアが306・46㎡。6~9階のオフィスフロアが306・38㎡となる。オフィスは空調機器と全熱交換器が実装されており、手元でゾーンごとのオンオフや温度調整、冷暖房切り替えが可能。1フロアの収容人数は40名程度で、造りはダイレクトイン。レセプション用のカウンター等も設置することができる。また屋上は、緑に触れられる開放的なリフレッシュスペースとしても機能する。気分転換や社員同士のちょっとした交流にも役立てることが可能だ。
同ビルは3次セキュリティに対応可能。オフィスエントランスに顔認証システムを採用しており、この他に非接触ICカードやQRコードなども利用できる。複数の非接触式アクセスにより、IT系や外資系企業などの高いセキュリティ性能を求める企業に適している。加えてエントランスでは、IFRA(国際香粧品香料協会)の安全基準を採用したフレグランスを使い、空間アロマデザインを実現。空調ダクトを通して、吹出口から室内に香りを届ける。エントランスホールや風除室、屋上エレベーターホールではBGMで居心地の良さも演出。来館者を気持ちよく出迎える。ちなみに建築物省エネルギー性能表示制度「BELS」認証取得を予定している。
現在1階にはカフェの出店が決定。その他フロアでも既に反響があり、近隣に事務所を構えている企業の拡張移転先に、またクリニックや美容系テナントの新規出店場所にも好まれている。「高級住宅街」のイメージが強い青山エリアは、ハイブランドの旗艦店や個性的な小規模店舗の出店が目立つ。一方周辺では再開発や単体での建替えなども活発に行われている。ビジネスエリアとしての側面もあることから、今後もオフィス需要は底堅い。その様なニーズを上手く掴み、早期に満室稼働を目指す。
表参道エリアのオフィス新築で特にニーズ堅調
スリースター(東京都港区)が運営する賃貸オフィス検索サイト「officetar」に掲載されている表参道エリアの賃貸オフィス物件情報から算出した賃料相場(12月20日時点)を見ると、30坪以下のオフィスで坪2万3779円。30~50坪で坪2万6778円。50~100坪では坪3万285円とある。「渋谷」駅周辺のハイスペックなオフィスビルの人気・需要が高く、近隣エリアで入居できる新築オフィスを探している例も聞く。また増床・拡張移転先として、1フロア1テナントで専有できる高スペックな中小ビルのニーズも高まっている。ここ数年は採用強化を視野に新築ビルへ移転する企業も増えており、今後ますます新築ビルの需要が高まり、相対的に募集賃料の上昇も期待される。