不動産トピックス

今週の一冊

2024.01.22 11:10

日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増補改訂版「日本『式』経営の逆襲」

著者:岩尾俊兵
出版:光文社
発行:2023年10月30日
価格:990円(税込)

 日本企業の多くは「お金より人が大事」という企業方針のもと、人材教育に注力し、それが結果的に企業の成長の原動力となってきた。しかし時代が経つにつれ、日本企業は自らの強みであった「お金より人」の考え方を捨て、「ヒトよりカネ」に走り、米国式の合理的な企業経営を表層的に模倣し、その結果として低生産性と低賃金という低空飛行に陥ってしまったと著者は分析する。この「負のスパイラル」から脱却するためにはどうすれば良いか。東京大学史上初の経営学博士を授与された平成生まれの慶應義塾大学准教授である著者が、日本企業再生に向けたアプローチを開設する。
 アマゾン創業者のジェフ・ペゾス氏が、日本企業の経営技術から多大な影響を受けていると公言していることはご存じだろうか。実は世界的企業の経営者や実業家の中には、日本式の企業経営を学んでいたという例が多いのだ。一方で日本国内では、より成長性の高い米国式の企業経営を模倣する動きが加速。日本が培ってきた企業経営を悲観的に見る向きが強まってしまった。
 島国である日本は多民族・多言語のコミュニケーションに乏しく、それがビジネスの世界でも海外に後れを取る遠因になったと指摘する声もある。しかし著者は「自国の経営技術を信じる力」が弱い点を挙げる。
 自動車産業をはじめ、日本が世界に誇るものづくり文化はまだ息づいている。自国の企業経営に対する自虐を捨て、人が中心の企業経営という原点に立ち返ることが、名目GDPでドイツに抜かれ世界第4位となった日本の企業が目指すべきスタンスではないだろうか。

PAGE TOPへ