不動産トピックス

【今週号の最終面特集】物件の価値に差をつける 内装トレンドに注目

2023.09.11 10:35

メンテナンスいらずで美観を改善 ビル・マンション・店舗などで導入
床材・グリーン装飾のトレンドに焦点 物件の老朽化をカバーする内装戦略
 施設の美観を保つことは、利用者の快適性を維持するうえでも大切だ。オフィスにおいては、若手の採用強化面でも大切な観点になっていると聞く。今回は、内装・空間デザインにまつわるトレンドを取り上げる。

植物の内装・空間デザインをグリーンの専門家が提案
 メグラス(東京都港区)は2021年から、内装・空間デザインのパッケージ「GreeNest Interior」を提供している。
 同社は2015年、ヴィンテージ家具の販売事業をしていた太田豊洋氏をはじめ、数名により設立。植物とヴィンテージ家具の親和性に着目し、植物の外構メンテナンスやインテリア事業、オフィス・住宅・店舗などの内装など展開を拡充している。
 同社には植物のスペシャリストであるグリーンプランナーが複数人所属。顧客からヒアリングを行ったうえで、専門家の視点から最適な植物の装飾を提案する。
 プランナーの一人である内藤陽一氏は「当社にはバイヤーが複数所属しており、目利きから仕入れまで、当社で一貫して取り寄せた植物を納品しています。コンサル段階では、まずはお客様の内装したい空間を現地で見せていただき、そこに合う植物やインテリアの配置を考えます。私の場合は大きな植物を一点ものとして入れるデザインを得意としていて、目を引くようなデザインに仕上げています。当社の方で月2回ほど現地で水やり、清掃を行っていることも、メンテナンスの手間がかからないと喜ばれています」と話す。
 例を挙げると、都内のカフェテナント。テラスにフォトスポットとして映えるようなデザインにしてほしいとの依頼を受けて、フェイクグリーンの装飾を提案した。庭木のような細かい葉の造花を選ぶことで、外の空間にも溶け込む自然な景観を演出。ホテルのテラスのような高級感ある仕上がりとなった。
 「カフェテナントさんからは、『フォトスポットとしてお客様に喜んでもらえる場所になった』と大変お喜びいただきました。費用は30~100万円など、クライアント様の予算に合わせてご提案をしています」(内藤氏)
 グリーンを取り入れた内装は、老朽化した建物の競争力の向上にもつながる。目黒のマンションの例では、築年で入居者付けに苦労している状況下、エントランスにフェイクグリーンを導入したところ、居住者の満足度が向上したという。
 また、元電話ボックスだった空間を利用したいというビル管理会社からの問い合わせには、フェイクグリーンの装飾を提案。鏡とデスクも一新し、無機質な印象から明るい雰囲気のエントランスへと変化を遂げた。
 オフィスの緑化は、リラックス効果や業務効率などの観点からも注目されている。環境省が2019年に実施した「オフィス緑化に関する優良事例調査」を見ると、回答者の87%がプラスの効果を実感していることが分かった。働き方の選択肢が増えた昨今、グリーン化によるオフィス環境の整備は、若手の採用強化などにも波及していく可能性を秘めている。
 内藤氏は、「グリーン化の提案をする中で、意外と植物や緑化に詳しくない方が多いことに気が付きました。ですが実際に緑を装飾すると、社員間でのコミュニケーションが活発になったり、クライアント様から好印象を持たれると喜んでいただけます。これからも、お客様の要望に合ったグリーンを提案していきたいと思います」と結んだ。

高圧メラミンフロアタイル メンテナンスコスト削減に
 アイカ工業(名古屋市中村区、東証・名証プライム)は、メラミン化粧板で国内首位。2019年7月からは、非住宅向け床施工素材・高圧メラミンフロアタイル「メラミンタイル」を販売している。
 愛知時計電機から化学製品部門が独立する形で1936年、アイカ工業の前身「愛知化学工業株式会社」が設立。以降、樹脂製品の製造を強みに、化成品から建材まで事業を拡大してきた。
 建材においては新築住宅着工戸数の減少が予想される中、非住宅向け素材にも力を入れている。特に、優れた耐久性を持ったメラミン化粧板は、トイレの壁面や飲食店のテーブルの表面などに最適。全国の商業施設、オフィス、空港などで採用されており、メラミン化粧板で国内業界シェアNo.1を誇る。
 広報・IRグループの伊藤美沙子氏は「当社のメラミン化粧板の強みは、木目やコンクリート調まで、約700種類のバリエーションをもつ意匠性と、抗ウイルスや不燃性、消臭効果などの機能性です。接着剤を祖業とする化学メーカーのため、培ってきた樹脂技術を生かしてスピーディーな製品開発が可能です。代理店が全国各地にあることも後押しし、安定したスピードで納品できることも強みです」と話す。
 メラミン素材は伸縮するという性質上、床材として活用することが困難とされていた。アイカ工業では積み重ねてきた樹脂製品のノウハウをもとに、繊維向けに開発した特殊なアクリル樹脂を使用することでメラミン化粧板の伸び縮みを抑制することに成功。メラミン化粧板の強さと塩ビ基材の施工性を兼ね備える「メラミンタイル」の開発に至った。
 商業施設などでよく使われる床材の一つに塩ビタイルが挙げられ、加工・施工性や価格といったメリットがある。しかしヒールマークなどのゴム系汚染や毛染め液などの汚れが付きやすく、定期的な清掃とワックスがけも不可欠となる。
 一方で、高い硬度を持ち、汚れが付きにくいメラミンタイルは、ワックスがけが不要でメンテナンスが容易。施設運営者の負担削減につなげることができる。
 「汚れが付着した場合も水拭きで簡単に取り除けます。セラミックタイルもよく使われていますが、3分の1程度の重さでセラミックタイルに比べ施工しやすいことも引き合いの多い理由の一つと捉えています」(伊藤氏)。
 近年はメラミン化粧板にとどまらず、堅牢性にも優れたメラミン不燃化粧板「セラール」の用途拡大も推進している。東日本旅客鉄道(東京都渋谷区)、JR東日本建築設計(東京都渋谷区)との共同研究を経て、固定金具を見せずにメラミン不燃化粧板「セラール」を天井に乾式施工する、「セラールFP工法」を開発。昨年8月に開業した「東京」駅八重洲北口の飲食店街「グランスタ八重北」の天井に採用されている。
 美観を意識した天井材、床材の市場は今後さらに広がりを見せると捉える。

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