不動産トピックス

クローズアップ VR・AR編

2023.09.04 10:02

 VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の応用範囲が広がり続けている。不動産や建築の分野では物件の内覧・内見などに取り入れられているが、昨今では新しい働き方への対応や街の活性化などにも応用されるようになってきている。

日建設計 仮想空間と現実空間を融合 新たなワークプレイス実現へアプリを開発
 日建設計(東京都千代田区)とホロラボ(東京都品川区)は、仮想空間と現実空間が融合するワークプレイス「Cyber-Physical Workplace(CPW)」の実現に向け、MRのプロトタイプアプリケーションを開発した。
 「Cyber-Physical Workplace」とは BIMデータを元に構築されたサイバー空間(仮想空間)と、IoTを活用したフィジカル(現実)空間のセンサー情報を組み合わせ、異なる空間同士をMR技術で繋ぐ事により、高度なコミュニケーションと労働生産性向上を目指すワークプレイス。日建設計とホロラボは、今回の開発を通してニューノーマル時代における新たなワークプレイスのビジョンを提示するとしている。
 開発したアプリケーションは、テレワークとオフィスとを問わず、そこで働く人同士の偶発的な出会いを創出するためのもの。MR技術によってジェスチャーなどを用いた「ノンバーバル(非言語)コミュニケーション」を強化し、テレワーカーの孤独感軽減やコミュニケーション誘発につなげる。
 在宅ワーカーはVRデバイスを通じてオフィスの仮想空間に入り、オフィス内に実在するオフィスワーカーのアバターと交流できる。オフィスワーカーはARデバイスを通じて投影された在宅ワーカーのアバターと触れ合うことができる仕組み。実証実験では、在宅ワーカーの孤独感の軽減や、在宅ワーカーとオフィスワーカー両者の身振り手振りも合わせたコミュニケーションが可能であることを確認したという。
 日建設計では機能を強化するため、体験者を増やしていくとしている。また、同様の技術をビルやメタバースに応用するため技術開発を行い、ワークプレイスの提案力強化とコンサルティングへつなげていく構え。

大和ハウス/など 建築プランをリアルに体感 建物の実寸モデルが目の前に
 大和ハウスグループの大和ハウス工業(大阪市北区)と南国アールスタジオ(東京都渋谷区)、トラス(東京都千代田区)の3社は、BIMを使用して作製した商業施設や事業施設などの建物の3次元モデルを、XR技術を活用することで、メタバース「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)」として可視化させる技術を開発した。
 同技術では、パソコンやタブレット、ヘッドマウントディスプレイなどのデバイスを使用し、計画する建物の建設予定地でメタバース「D’s BIM ROOM」に入ることで、実寸大の外観イメージや色味、周辺環境との距離感などをリアルに近い形で体験することができる。「D’s BIM ROOM」内で、遠隔の顧客や関係者といつでもどこでも、まるで建物内にいるかのように、建物のプラン提案から竣工前まで、建物の大きさの確認や内装の色決め、家具の配置などの打ち合わせを容易にする。
 8月22日に行われた記者発表会の中で、大和ハウス工業上席執行役員の河野宏氏は「当社は2017年に、5名でBIM構築をスタート。建設業の課題である『働き方改革』を推進してきました。当社が創業以来培ってきた建築の方法をさらに進化させながら、建設DXの実現を進めています。現時点で建設系のBIM移行率は100%、CDE蓄積累数は4万件に上りましたが、これらの累積してきたデータを、ICT施工・設計に循環していことが必要だと考えています」と展望について語った。
 「D’s BIM ROOM」では今月から、大和ハウス工業が建設する商業施設や事業施設等において検証を進め、順次導入することで、生産性向上および業務効率化を図っていくという。

凸版印刷/福岡地所/palan ARを活用した回遊促進の実証実験
 凸版印刷(東京都文京区)、福岡地所(福岡市博多区)、palan(東京都渋谷区)の3社は、地域活性を目的とした観光客の回遊促進の実証実験「福岡電脳物語」を2023年8月1日~31日の期間で実施した。
 実証実験は、複合施設「キャナルシティ博多」とその周辺施設を結ぶルート上の目印をスマホで読み込むと、画面上の風景の上にコミックが表示され、次の目的地へ誘導するもの。道中の各スポットで連続したストーリー性のあるコンテンツを表示することで、目的地までの回遊促進効果を検証した。
 3社では、観光需要の回復が期待される一方、特定の商業施設や観光スポットに人流が集中してしまい、街中への回遊を促す施策が求められていると分析。ARを活用した従来の回遊施策でも、観光地などの目的地にのみARコンテンツが設置される傾向があり、目的地と目的地間の周辺地域への回遊効果には課題が残っていたとしている。
 このような背景から、実証実験ではpalanが提供するAR作成プラットフォームを使用し、福岡市地下鉄「櫛田神社前」駅と「キャナルシティ博多」、櫛田神社を結ぶ2つのルート上にAR漫画を設置。各スポットで表示されるARの漫画を読み進めることで目的地へ誘導。移動中の利便性の向上と、エンタメ体験による観光客の回遊促進効果を検証する。
 今後は、実証実験の結果から抽出される課題を解決し、観光地や商業施設周辺エリアにおける利用者の回遊を促すサービスとして、展開を図っていく。また、交通機関などとの連携により、より広域範囲での回遊促進を行うサービスの構築を目指すとしている。

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