不動産トピックス

クローズアップ 空きスペース活用編

2023.07.03 10:36

 どれほど空間効率を追求したビルでも、テナントの入れ替わりや設備更新などを繰り返すうちに空きスペースが生じてくる。コストを抑えて収益化できる、そんな空きスペースの活用策をいまいちど検討してはどうだろうか。

保有ビルを撮影スタジオに 業務を続けながら遊休時間を収益化
 ビルの管理やメンテナンスなどを主業とする街コーポレィション(東京都墨田区)が保有する「笠間MNビル」は、コンクリート打ち放しの外観が特徴的だ。著名な建築家が設計し、現在では同社グループの本社機能のほか、資材倉庫やNPO法人なども入居する多用途ビルとして活用している。このビルを、映画やテレビドラマの撮影スタジオとしてレンタルするプロジェクトがスタートした。
 撮影スタジオといっても、特に改修などは予定していない。建物も内装も、室内の什器類などもそのまま。業務に使用している執務スペースや資材置き場などもそのまま撮影用にレンタルするという。撮影のためにレイアウトを変えたり装飾したりするのは可能だが、基本的にレンタルするためのコストは一切かけない方針。業務時間か否かを問わず、条件が合えばいつでもレンタルする。
 映画やドラマにはさまざまな場面がでてくるが、そのぶんだけスタジオやロケ場所のニーズがある。「笠間MNビル」には、オフィスから打ち合わせスペース、廊下や階段、首都高速が見渡せる屋上に、作業場、資材置き場、駐車場と、多種多様なスペースが内蔵されており、あらゆるシチュエーションの撮影に対応できるのが強み。これを映画制作会社やテレビ局に認識してもらうことで、一定の利用を見込んでいる。
 スタジオの運営を担うのは、街コーポレィションの不動産部門として設立された街不動産管理。担当課長の宮腰聡一氏は、「今回の取り組みは、グループで進めている経営多角化・収益力強化の一環です。初めてですのでどのくらい利用があるかわかりませんが、コストもかからないということで試験的にスタートしてみることになりました」と話す。
 今回の自社ビルでの取り組みが軌道に乗れば、メンテナンスや管理をしている物件でのスタジオレンタルも視野に入ってくる。外回りの営業中に使用できそうな物件を確保しておき、撮影依頼があったら物件を紹介する。いわゆるロケーションコーディネートだ。ビルメンテナンス業務や不動産仲介業務との親和性もあり、グループでは新規事業として育てていくかまえだ。

紳士服のコナカ店内に無人ワークプレイス
 三井物産グループのMoon Creative Lab(東京都港区、ムーンクリエイティブラボ)が開発した、空きスペースをワークプレイスに転換できるサービス「Suup」が、紳士服販売のコナカ(横浜市戸塚区)と協業を開始。コナカの店舗内スペースを無人ワークプレイスに転換する取り組みを開始した。
 6月10日にオープンした第一弾は、東京都江戸川区の「コナカ南小岩店」内。デスクとチェアのほか、電源、Wi-Fi、ウェブ会議個室などを整備した。出社とテレワークを併用したワークスタイルが定着したなかで、自宅では集中できない人に好適という。
 料金は1時間500円、1日最大2000円で、月額7800円から。営業時間は午前10時から午後8時までで、定休日はなし。
 コナカでは、「コナカ店舗の運営効率改善と店舗区画の有効活用による収益改善という2つの課題を同時に解決させる方法を探るなか、コワーキングスペースの導入を決定した。施設管理の手間をかけることなく、かつ低コストでワークプレイスを開業・運営できることを期待して『Suup』の導入を決定した」としている。

顔認証付き「ガレージゴルフ」 プレハブガレージ応用、予約・入退室システム完備でかんたん開設
 顔認証ソリューションを展開するHOUSEI(東京都新宿区)は、ユアサ商事(東京都千代田区)と協業し、稲葉製作所(東京都大田区)の「イナバガレージ」を活用したシミュレーションゴルフ「ガレージゴルフ」を販売している。  「ガレージゴルフ」は、顔認証システムで予約管理・入退室管理を可能にしたシミュレーションゴルフシステム。組み立て式で、短期間かつ低コストで設置可能なイナバガレージと組み合わせることで、「遊休地の有効活用」と「手軽にゴルフを楽しみたい」というニーズに応える。
 富山県の運送会社の敷地に導入した例では、事務所横の空きスペースに、高さ約3・4m、幅約4mの「イナバガレージ」を設置。内部でシミュレーションゴルフを楽しむことが出来る。ユアサ商事とHOUSEIで約1年間構想を練り完成させたという。設置までに必要な期間は約1・5カ月と、短期間で導入できるのも特徴的。HOUSEIは今回の事例で、シミュレーションゴルフ機器と防球ネット、手配、予約システム・顔認証システムの設計・設置を担当した。
 HOUSEIでは、想定される導入シーンとして、駐車場や遊休地の活用、コインランドリーの併設利用などのほか、会社の福利厚生やプライベートなゴルフ施設経営などを挙げている。また、ガレージと顔認証予約システムを汎用させることで、コワーキングスペース、カラオケ、ホテル、エステサロン、小売店、フィットネスジムなど多分野での導入も視野に入れている。小規模なスペース活用のニーズに応えるべく、「ガレージゴルフ」で柔軟に対応していくとしている。

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