不動産トピックス

クローズアップ 新しい働き方編

2023.05.22 11:16

 コロナ禍で推し進められた働き方改革は、その収束とともにオフィス回帰へと進みつつある。新たに求められるオフィスの役割や機能などに応える、さまざまな取り組みを紹介する。

場所・環境にとらわれないワークスタイルの構築 コミュニケーションツールの補完や働く場の選択肢を増やす
 改修・移転に伴うワークプレイスの構築などを手掛けるフロンティアコンサルティング(東京都千代田区)。同社はパーソナルシェアオフィス「comolu」の開設や、仮想オフィス「Oasis」を手掛けるエクステンシブル(東京都渋谷区)との資本業務提携などを実施。場所・環境にとらわれないワークスタイルを想定し、システムやツールの拡充に取り組む。
 同社は改修・移転等に伴うワークプレイスの構築をはじめ、ビル資産価値の再構築、サードプレイス構築などの事業を中心に展開している。移転のタイミングに合わせて効率的なオフィス改修や再構築を得意とし、テナントに最適な執務空間を提供可能。また企業のブランディング強化やPR等も兼ねた、雰囲気やデザインの実現も得意とする。
 昨年には、パーソナルシェアオフィスの「comolu」を開始。渋谷区円山町のビル5階に第1号店 渋谷道玄坂店を開設。安全性の高いネットワークと安定した通信環境を完備。高集中・長時間のデスクワークに対応し、リモートワーク等の需要に対応できる。ちなみに「comolu」は15分単位の従量課金制。今年1月からは個人利用も開始し、副(複)業といったフリーランスや個人事業主の需要にも応えることができる。
 一方同じ時期に、バーチャルプラットフォーム「Oasis」を手掛けるエクステンシブルと資本業務提携を締結した。背景にはコロナ禍で急速に進んだハイブリッドワークに伴い、様々な企業で気軽なコミュニケーション機会の損失や新入社員の組織への早期順応・定着に課題が発生。しかし、移動時間短縮による生産性向上やワークライフバランス等のメリットも改めて認知されることとなった。同社では「自宅 1stプレイス」、「センターオフィス 2ndプレイス」、「フレキシブルワークプレイス 3rdプレイス」に続く、働く人々が物理的距離を超えてコミュニケーションを図る「バーチャルオフィス 4thプレイス」の需要増を予想。ワークプレイス構築を主幹事業に持つ同社がパートナーとして関わることで、より最適なバーチャルオフィスの創出に寄与すると見ている。
 前述の2つの事業は、とても密接に関係している。それは場所・環境にとらわれないワークスタイルの実現に必要なシステムやツールであること。「comolu」であれば、リモートワーク用のオフィスやアフターファイブでの利用が可能に。一方「Oasis」であれば、バーチャルプラットフォームを通してのワークプレイスとなる。ワーカーが何処に居ようと、形は違えど、働く場「オフィス」として機能する。 特に「Oasis」は、社員同士のコミュニケーションロスを補完できる。加えてUX(ユーザーエクスペリエンス)に近い形で、共有できることも強みだ。ちなみにUXとは、ユーザーが商品やサービスを通じて得られる体験を指す。社員同士の感情の共感を促すことにも繋がる。
 代表取締役副社長で市場創造開発本部の佐々木真志本部長は「単に働く場を提供するのではなく、コミュニケーションツールの補完や働く場の選択肢を増やすことで、ワーカーにとって利便性・快適性の向上に繋げつつ、かつビジネスシーンや新しいことへのチャンス創出にも繋がると想定しています。今後はより一層、場所・環境にとらわれないワークスタイルが浸透していくでしょう。当社ではその様なニーズを取らえながら、最適な形で提供していきます」と語った。

愛犬同伴出社で交流活発に シェアオフィスでペット同伴出社の実証実験
 サンフロンティア不動産(東京都千代田区)は、同社が運営するシェアオフィス「AYOTSUYA(エーヨツヤ)」でペット同伴出社が可能なオフィス開発のための実証実験を実施した。
 実験では、3月22日~4月19日の約1カ月間の水曜日、全5回にわたって同シェアオフィスに入居しているPETOKOTOの従業員がペットと一緒に出社し、その効果と課題を他の入居企業などとともに検証した。
 実証内容は、「ペット同伴出社におけるルール検証」、「ペット同伴日の清掃オペレーション検証」、「シェアオフィス『エーヨツヤ』入居企業へのアンケートによる効果検証と課題把握」、「実証実験対象企業へのアンケートによる効果検証と課題把握」の4点。
 実証実験実施後、「エーヨツヤ」に入居する全企業にアンケートを実施したところ、ペット同伴出社については83%が「賛成」、「どちらかといえば賛成」を選択。本格導入に向けた実証実験の継続にも8割以上が「賛成」を選択した。
 ペット同伴出社の取り組みでは、「働き方の多様化につながると思う」との回答が最も多く、その他「交流が生まれやすくなる」、「場所が明るくなる」など、コミュニケーション活性化への有効性に言及した回答が多かった。
 一方で「懸念が多いと思った」との回答が12%あり、主な懸念事項として「アレルギーやペットが苦手な方のストレス」や「オフィスの清掃面」についての声が挙がった。
 実際に犬を連れて出社した人からは、「愛犬もたくさんの人に可愛がってもらえて嬉しそうだった。普段より交流が活発になり、有意義に感じた」、「犬が苦手な人もいると思うので『犬OKルーム』があると安心できるかなと思う。共用スペースのルール作りも大切だと感じる」、「社員同士が積極的に犬の面倒をみようと声をかけあっていたのが印象的だった」、「当初は不安だったが、グッズやルールの整備、イベントの企画などで快く出迎えてもらい、安心して出社できた」といった声が挙がっていた。
 サンフロンティア不動産では今回得られた結果をもとに、本格導入に向けたさらなる研究を進めていくとしている。

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