不動産トピックス

【今週号の最終面記事】空ビルから高稼働目指す 付加価値形成術

2023.04.03 10:50

1棟丸々セットアップオフィスへ斉征 1階にシェアラウンジ ニーズへ合わせて柔軟に対応
駅から徒歩15分の「フロンティアグラン西新宿」昨年9月に取得、先月中旬にオープン
 空ビルの再生方法は様々だが、駅から離れてくると埋め戻しは厳しくなる。賃料も割安になり、周辺相場より安くても高稼働が難しいこともある。その様な課題が想定されたビルを取得し、再生に繋げた事例が新宿に誕生。豪華でグレードの高さが感じられるラウンジを1階に設けた「フロンティアグラン西新宿」。ラサール不動産投資顧問とREQREEの2社協力による再生事例である。

現在までに20棟前後 実績のセットアップ
 「新宿」駅南口から徒歩15分に位置する「フロンティアグラン西新宿」。ラサール不動産投資顧問(東京都千代田区)が昨年9月末に取得し、先月中旬に1棟丸々セットアップオフィスのビルへ再生させた。
 ラサール不動産投資顧問が、ビル取得及び1棟丸々セットアップオフィスの構想を始めたのは昨年夏頃。2019年頃から投資案件を対象に、セットアップオフィスを展開。現在までに20棟前後の実績を持つ。従前同ビルを使用していた東京ガスグループは隣接する「新宿パークタワー」へ移転。代わりに空ビルとなった同ビルを9月末に取得した。
 駅から距離のある物件を如何に魅力的な内容へ再生させるのか思案した際に、実績のあるセットアップオフィスを選択。かつ1階にはカフェ&ラウンジ、会議室等も備えた入居者専用のシェアラウンジを採用。シェアラウンジやシェアオフィスの企画・運営を行うREQREE(大阪市北区、以下リクリー)に、施設の運営管理と設計等を依頼。協力して再生を成功させた。

高級ホテルのような内装 イベント等で活用可能
 ビルは1990年3月竣工の地上12階地下3階。1階に高級ホテルのようなデザインを採用したシェアラウンジを用意。入居者向け・セミナー形式のミーティングルームやオンラインミーティングにも活用できるフォンブース、自由にコーヒー等を堪能できるカフェスペースを構築した。総席数は78席(会議室16席とフォンブース6席を含む)と充実。来館者を招いての打ち合わせや自社社員の懇親を深めるイベント等にも活用可能。
 また地下にはゴルフスタジオやフィットネス空間、シャワールームを設置。始業前やアフターファイブ等に汗を流すといったこともできる。1階には自転車駐輪場(カードセキュリティ式・ペットの足洗いスペース)、地下には自走式駐車場32台を用意した。
 空中階は全てセットアップオフィスだが、それぞれ特徴付けや差別化を実施。2階はドッグフレンドリーフロアで、犬をオフィス内に入れて仕事ができる環境を造った。127坪と63坪の2区画を用意。3~10階は一般的な什器を施したセットアップオフィス。1フロア約190坪の貸室だけでなく、およそ90坪や60坪、40坪の区画を用意。企業規模や成長段階に応じて入居可能な部屋を複数設えた。

自社のPRにも最適 プレミアムフロア
 更に11階12階は高級感のある素材や家具で構築したプレミアムフロア。入居企業のステータスが高まるフロアを作り、「ホテルライクな空間の演出」と「働く場の機能性」の双方を兼ね備えた。今後自社の事業PRを積極的に展開していく、優秀な人材の確保や社員の満足度向上を図る、といった企業にも適している。
 ラサール不動産投資顧問の松田道夫氏は「駅からの距離や賃料単価の比較といった従来型の価値基準にとらわれない、これからの働き方やコロナ禍後における新たなオフィスの意義などを踏まえた基準となるオフィスを造りました。リモートワークや在宅勤務が普及した今、敢えて出社したくなるオフィスづくりや魅力構築が重要となりました。更にテナントの成長や宣伝効果にも繋がる目線で構築する必要があります。単に什器を揃えたセットアップではなく、様々な機能性や柔軟性が必要です。当ビルのセットアップは移転に掛かる費用と期間を抑えて移転でき、かつ社外向けのPRにグレードの高い設えのオフィスが活用できます。彼らの企業成長に寄与できることが大きな強みでしょう」と語った。
 またシェアラウンジの運営管理等を担当するリクリーの代表取締役 高室直樹氏は「シェアラウンジの柔軟性も強みだと思います。テナントの就業者が気分を変えて仕事をしたい。出社人数が増えた日だけの一時的なオフィス。プロジェクトチームのオフィスといった様々なニーズに応えることが可能です。室内デザインの高さから、来館者やクライアントへの自社のイメージアップにも貢献します。社員にも出社への前向きな気持ちを促します。ビルの新たな資産価値向上の手法として機能するでしょう」と語った。

現地内覧を重要視 体験から入居に繋げる
 双方は移転先選びでの現地内覧も重要視する。同ビルのHPはリクリーが作成。問い合わせてきた企業は最初HPから、オフィスのコンセプトや魅力を把握できる。VR内覧も採用しているため、HPでほぼ同ビル及びオフィスの雰囲気がわかる仕組みだ。
 しかし賃料や貸室面積といった単なる数値としてではなく、足を運んでもらい、体験しての入居に繋げたい想いがある。実際に現地内覧した人や企業の反応反響は良く、体験して改めて移転への気持ちが高まった事例もあるほど。リクリーはリーシングや自社保有ビルのPRも兼ねたHP作成やVR機能導入のサポートも行う。だが、これらはビルを知ってもらうための入り口。内覧で執務空間の良さを体験してもらうことが大事な点だ。
 同ビルの完全竣工(室内デザインの完成)及びオープンは夏頃。立地や賃料に縛られない新たなオフィスの完成を目指す。 

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