不動産トピックス

【今週号の最終面記事】収納もビジネスも宅配型 マンション対策の注目サービス

2023.02.20 10:26

物件の付加価値に宅配型収納サービス マンション系デベロッパーと協業 在宅勤務の執務エリアの確保も後押し
 レンタル収納スペース(トランクルームやストレージ)における収納物品の管理は利用者が自ら行う。出し入れは自由で、その際の煩わしい手続きは発生しない。一方使う機会の少ない物やシーズン物を収納する手間、出し入れを億劫に感じ、業者に依頼するケースもある。引っ越しや移転のタイミングに活躍するのが宅配型収納サービスだ。在宅勤務やリモートワークの定着で、需要が伸び続けている。

業界最安値の料金 配送時の送料無料
 日本パープル(東京都港区)は2017年から個人向けの物品保管サービス「AZUKEL」を開始。ここ数年はマンション系デベロッパーとの協力が増え、AZUKELの認知度も高まっている。
 元々情報セキュリティ事業やデジタルアーカイブ事業を展開していた日本パープルは既存ビジネスの基盤を生かして、個人ユーザーを対象にした宅配型トランクルームサービス「AZUKEL」を始めた。段ボール箱1箱から大型サイズの家電や家具まで、多様なサイズの収納に対応する。依頼はスマートフォンでするだけ。無料会員登録後に見積もりを行い、納得したら集荷の依頼となる。必要な時に必要な場所へ集荷や配送が可能。事前に料金シミュレーションができる点もユーザーから好評だ。
 業界最安値の料金プランも強み。段ボール箱で預かる「箱プラン」は、1箱165円のレギュラーサイズ、衣類などの収納に適した1箱220円のアパレルサイズ、小さなスーツケースまで収納可能な1箱385円のラージサイズがある(全て税込)。専用の段ボール箱の購入代、配送時の送料は0円。箱に入らない荷物もスペースプランで預かることとなり、サイズは0・1畳1100円から。3・0畳までの豊富な選択肢も魅力だ。荷物の預かり後には、アイテムを1点1点写真撮影。採寸を行った後に、スマートフォンやパソコンで保管した荷物の管理ができる。収納物を把握しやすいこともAZUKELの特長である。

都市部のマンション 収納スペースに仮題
 都市部のマンションでは収納スペースが狭小かつ限られており、従前から収納場所の確保が課題であった。コロナ禍になると在宅勤務やリモートワークを行う人が増加。自宅内を片付けてスペースを設け、在宅勤務用の執務エリアを確保。一方行き場の無くなった荷物の置き場所に、宅配収納サービスが活用される。需要は伸び、現在では住居における重要なサービスとも見られているようだ。同需要に応えるべく、同社と協業・コラボレーションするマンション系デベロッパーやマンション管理会社は多い。競合となるマンションに対して、また物件の付加価値としてのアピール材料にもなる。
 ストレージテック事業部GMの白石大輔氏は「引っ越しシーズンに限らず、子育てに伴うライフイベントや在宅勤務などで利用者が大幅に増えています。マンションの大規模修繕やビジネスに関する個人での物の収納にも最適です。昨今は副業(複業)や趣味のコレクションなど、様々な理由での利用が垣間見えます。その際にセキュリティや情報漏洩が懸念されるでしょう。安心安全な収納環境もAZUKELの強みなので、選ばれています」と語った。
 ちなみに同社は事業者向けの物品整理・備品管理サービス「Stock MAMORU」も展開している。大きな物品や什器、イベント物品、チラシ・パンフレット類などを預かり、オフィス内でのスペース確保に貢献する。一都三県を中心に展開し、利用者は主にビルに入居するテナント側だ。書類・文書や各種メディア媒体の保管サービスも展開していることから、実績を考慮しての利用も多い。

対応エリアを追加 需要に備え順次拡大
 昨年3月からゲオ(東京都豊島区)は、配送無料の宅配型収納サービス「2nd STORAGE」を開始。対応エリアを中央区・港区・江東区・品川区から、昨年10月には千代田区・新宿区・目黒区・渋谷区も追加し順次拡大していく。
 2nd STORAGEは、預かり・取り出し料金が完全無料な宅配収納サービス。預かり・取り出しの送料は何度でも無料で、1点だけの取り出しも可能。荷物を収納する保管用段ボールも無料であり、初期費用や最低契約期間もない。プランは他社と異なり、0・25畳と0・5畳のスペース(容積)内に荷物・アイテムが収納できた上で料金が算出。0・25畳プランであれば、全て段ボールで預けた場合に14箱が収納可能。0・5畳プランでは29箱収納できる。
 他社サービスと同様に、ユーザーはスマートフォン上で依頼・配送などを完結できる。預けた荷物は1点ずつスタッフが撮影。いつでもスマートフォンから確認でき、取り出しは収納したアイテム写真をクリックするだけ。撮影されたくない荷物や小さな荷物は段ボールに収納すれば、開けずにそのまま収納できる。プライバシーも守られる仕組みだ。もちろん、宅配業者が自宅まで集荷に来るため手間は掛からない。大型家具や家電の収納にも対応する。衣類であれば集荷と同時に、専門会社によるクリーニングサービスも提供する。クリーニング後は保管用ハンガーへ掛け替え、防虫カバーをかけ、丁寧に保管する。

昨今若年層の利用増 趣味等への投資影響
 トランク事業部の内山憲一氏は「収納物の買い取りサービスも行っています。当社グループのゲオ・セカンドストリートで取り扱いのある品物であれば、無料で買い取り査定及び買い取りを行います。衣料・家電・雑貨等が対象になり、主に服飾雑貨(バッグ、靴、アクセサリー等)や携帯電話、パソコン、家電製品、家具、スポーツ用品、楽器、ホビー含む生活雑貨などが散見されます。自宅に置き場がなくなり、収納場所まで持ち運ぶことも面倒くさい。また宅配型収納サービスを利用しているが、もう既に使うことがないため処分したい、といった要望に応えることができます。昨今は買い取りサービスがあるか、ないかで選ばれる場合もあります」と語った。
 開始当初のユーザーは中高年が占めていた。使わなくなったベビー用品やキッズ用品、シーズン物の衣類やレジャー用品など。これが昨今は若年層まで広がり、シングルやDINKs暮らしの人までも利用している。背景には趣味やプライベートへ投資する人が増えたこと。それもコロナ禍であると外出しにくい状況であったため、自宅でも楽しむことのできる趣味等を見つけた結果が影響しているようだ。
 また内山氏はシェアオフィスなどの普及も影響していると見ている。シェアオフィスやコワーキングスペースなどの利用者が増えた一方で、大半の施設は小さなロッカーを設置したのみ。十分でない収納スペースが影響し、宅配型収納サービスの利用に繋がっているとのこと。内山氏は「副業(複業)が趣味の範囲から派生したケースも見られ、その様な人が購入したアイテムの置き場にを2nd STORAGEを利用しています。昨年10月にエリアを拡大しましたが、これも需要があっての拡大です」と語った。

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