不動産トピックス

クローズアップ 建物再生編

2022.12.19 10:11

 間もなく突入する人口減社会を前に、空き物件の活用は喫緊の課題となっている。物件取得の際、新築物件や稼働中の既築物件だけでなく、未稼働物件の再生も選択肢に入れて検討したい。

歴史的建造物から身の回りの空き家まで ワンストップで「使える古民家」に再生
 もんじゅ建設(東京都足立区)は、デザインから施工管理、大工工事までを個人で請け負う工務店。メーンとなるのは住宅など築年数が経過した建物のリノベーションだが、価値ある古材の引き取り、古材を使った工芸作品の発表など、幅広い角度から古民家の再生に取り組んでいる。
 代表の門主学氏は、大学で歴史的建造物の保存再生について学んだ後、数寄屋建築専門の工務店に就職し腕を磨いた。和風建築の新築工事に携わるなか、古民家再生への想いが強まり2019年に独立。もんじゅ建設を設立した。
 「あるとき、『古民家を再生するより、新築を建てた方が安くて早いのは常識』という話を聞きまして」と、独立の経緯を語る門主氏。「いや、そんなわけないだろうと思い、自分でやってみようと工務店を立ち上げました」(門主氏)
 以後、古民家や歴史的建築物の再生に本格的に取り組み、東京都台東区下谷の銭湯「快哉湯」をカフェにリノベーションしたプロジェクト、板橋区の有形文化財「板五米店」の改装工事、そのほか、飲食店のインテリアデザインとその工事などを手掛けてきた。
 最近では古民家再生にとどまらず、一般向けのDIYセミナーや解体される建物の古材の引き取りなども展開。古材を素材とした工芸作品も製作するなど、展覧会やイベントの企画・主催も手掛けている。また2022年には無印良品の新店舗と共同で、廃棄扱いになった無印良品の家具をアップサイクルする企画「反製品喫茶」も開催。古材を使用した家具の製作や、木屑で古着を染めてリサイクルするなど、建築以外の生活アイテムのプロデュースも進行中。活動の幅が年々広がっている。
 「古民家再生は、その目的によって工事の仕方に変化が必要です。設計・施工・管理も現場に常駐しながら行うことで、臨機応変に対応します。堅苦しい歴史的建造物の保存再生論などはアカデミックな人たちに任せて、身の回りの空き家をまずは使えるように再生することで、建物を活かし倒していきます」(門主氏)

東急不動産 築27年の社宅を賃貸住宅に コンセプトは「暮らしのアップサイクル」
 東急不動産(東京都渋谷区)とリノべる(東京都港区)は、築27年、全76戸の企業社宅をリノベーションした賃貸レジデンス「コンフォリア高島平」を竣工させた。建替えに比べ、CO2排出量76%減、廃棄物排出量96%減と、環境への負荷を大幅に削減することが可能としている。
 建物のコンセプトは、「『空間のアップサイクル』と『マテリアルのアップサイクル』を通して実現する、『暮らしのアップサイクル』」。既存躯体のみならず、廃材となるものも素材として生かし、豊かな暮らしを実現するコンテンツを付加。環境にやさしく、暮らしを楽しめる住まいを具現化したという。
 建物は敷地面積3740㎡、建築面積1980㎡、延床面積8480㎡。RC造の地上8階建で、1995年の竣工。居室面積は67・8~75・6㎡。間取りは1LDK、2LDK、3LDKで、全室ペット可。
 東急不動産ホールディングスの保全森林である岡山県西粟倉村の間伐材を専有部や共用部に使用し、集会室を改修したプレイルームやワークスペース、テレワークルームには、体育館の床材を転用した家具や、北日本の広葉樹を使用したインテリアを配置した。中庭にはキッズスペースと菜園を設置。間伐材を活用した屋外ファニチャーを設置し、遊具としても利用できる。
 そのほか共用設備として、ドッグラン、生ゴミの削減につながるコンポストを設置。敷地内にはバス停広場も設けた。また、宅配ボックスや防災備蓄倉庫、トランクルームなども完備する。住戸プランも刷新し、街とシームレスに繋がるランドスケープを実現することで、街の新しい価値となる都市型賃貸レジデンスを誕生させた。

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