不動産トピックス

【今週号の最終面記事】備えあれば憂いなし 火災対策 消火器特集

2022.09.05 10:16

今は消火器を選ぶ時代
高性能消火器・デザイン消火器 設置場所に合わせて選択
 9月1日は「防災の日」。ビルオーナーやビル管理会社では地震や水害等へ対策を施している様子は見かける。が、火災はどうか。ここ数年は放火による痛ましい事件が散見され、ビル側も「備え」が求められている。従来の消火器よりも消火能力が約2倍となった高性能型消火器が登場していることもあり、耐用年数が切れたタイミングで取り替えてはどうか。ビル及び就業者を守る、重要な設備である。

従来より消火能力2倍 アルテシモ・プラス
 モリタ宮田工業(東京都江東区)は2020年1月から、高性能型アルミ製蓄圧式粉末ABC消火器「アルテシモ・プラス」を販売している。
 アルテシモ・プラスは、従来の10型消火器よりも消火能力が約2倍となった高性能型消火器。消火薬剤にリン酸アンモニウムを90%以上含有。油火災(B火災)では、従来の10型は消火に10秒を要していた。同製品は4・5秒と、約2分の1に短縮。工場や倉庫、危険物施設での設置に加え、ガソリンスタンド、プラント、可燃ガス製造施設、重要文化財での設置事例が多い。業界で最も軽い高性能型消火器なことも強み。鉄製の従来製品から約24%の軽量化に成功。誰でも扱いやすいため、既に設置している10型消火器から取り換えることもある。
 営業本部 機器事業部の平野康司氏は「ラベルは視認しやすいように書体と色使いを配慮した、ユニバーサルデザインを採用しています。業界初の4カ国語対応です。更にラベルはゴールドの鏡面仕上げであり、高級感のある美しいデザインとなりました。多様な人が訪れる商業施設や病院、ラグジュアリーホテルでの設置にもおすすめです」と利用者や施設にも配慮している。
 モリタ宮田工業の強みは、多彩な消火器を用意していること。施設に合わせて最適な消火器を選択できる。例えば、中性の強化液消火器「セーフミスト」。お酢の成分と食品材料から作られた中性薬剤を使用し、身体や環境に優しい。厨房や食品工場、病院等の衛生管理を求められる場所に最適。粉末消火器を厨房で使用することを嫌がる店舗も多く、消火に躊躇うことも過去にあったとか。セーフミストであれば、使用後の汚損は少なく復旧も容易。これまでに中華系の飲食店組合から、導入についての問い合わせもあった。
 その他に、水(浸潤剤等入り)消火器の「クリーンミスト」がある。クリーン性が高く二次災害の影響が少ない消火器。電子・精密機器、クリーンルームなど、埃や塵、化学物質の混入がない安全性を求める場所に適している。半導体工場やデータセンター、ビルの電気室等の設置に向いている。平野氏は「今は設置場所に最適な消火器を選ぶ時代です。オーナーが建物の安全性を考慮するにあたって、何の消火器が適しているのか把握することで、入居企業や来館者へのアピールにもなるでしょう。古い消火器から入れ替える際には、検討しては如何でしょうか」と語った。

住宅用強化液消火器 オンラインで発売
 初田製作所(大阪府枚方市)は5月から、住宅用消火器に新たな商品ラインナップ「デザイン消火器 CREATORS’MODEL」を追加した。
 デザイン消火器は、3名のクリエイターが協力。個性的な10種類を用意し、オンラインショップで販売を開始した。サイズは直径8・9cm×高さ38・5cm。総重量は約2・7kgと軽量で、持ち運びやすい。消火薬剤は強化液1リットルを使用。放射距離は4~6m。使用期限は製造年から5年で、価格は1万2000円。ホワイト5種、ブラック3種、レッド2種から選択できる。
 法令で設置義務のある業務用消火器は、表面積の25%以上が赤色でなければならない。一方任意設置の住宅用消火器は、色の定めがない。そうしたあまり知られていない点に着目。2014年からキャラクターの絵柄が入った住宅用消火器を展開してきた。せっかく設置するなら、「インテリアや雑貨を選ぶ感覚で楽しく備えてもらえたら」が商品企画のきっかけ。
 また20~50代の子育て世代を中心にアンケートを実施。「普通の消火器を部屋に置くのは抵抗がある」や「かわいいものなら部屋のアクセントになりそう」等の声を得た。また「実家にはあるが、自分では買うきっかけがなかった」、「プレゼントされたら嬉しい」といった声も。ギフト需要も意識して、パッケージを見直した。購入しやすいオンラインショップで展開する。
 総務省消防庁の発表(令和3年版消防白書)によると、令和2年中の住宅火災出火件数は1万564件。住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く)899人のうち、65歳以上の高齢者の死者数は645人。全体の71・7%を占めている。また日本消火器工業会と消火器リサイクル推進センターが20年9月に行った「一般家庭の消火器保有・廃棄に関する実態調査」では、一般家庭の消火器設置率は43・3%。うち10年以上経過し、使用期限が切れている可能性がある消火器は全体の21・8%といわれている。辻本氏は「事故防止の観点からもデザイン消火器をきっかけに住宅用消火器の設置、新しい消火器への交換を検討頂ければ」と勧める。

格納箱にIoTセンサー 関係者へアラート通知
 エイムネクスト(東京都港区)と日本ドライケミカル(東京都北区)は共同で、地域防災向け消火器の使用検知・管理ソリューションを開発した。
 同ソリューションは、消防設備設置と管理義務のある施設の利用者・管理者・保守点検事業者が対象のサービス。消火器の使用検知と関係者への異常アラート通知、点検実施状況検知による保守管理及び点検漏れのアラート通知、消火器における保守点点検業務のサポート、といった機能を提供する。消火器の使用検知や点検実施状況検知は、格納箱に省電力IoTセンサー(EnOceanR920Mhz帯及びモノワイヤレス2・4GHz帯)を取り付けることで実現。格納箱の開閉による異常アラートを場所で特定し通知する。火災発生また消火器へのいたずらなどの可能性を早期に把握でき、かつ関係者へ通知が可能となった。
 またIoT機器は省電力タイプ。保守コストの低減を実現した。EnOceanRはエネルギーハーベスティング。モノワイヤレスも省電力で発信可能なIoT機器を採用。電池交換や製品交換等の業務も省力化に繋げた。一定規模以上施設で実施する消火器点検記録機能と、消防設備保守点検業者の保守施設管理機能も提供する。管理及び保守点検業者にも適したソリューションだ。
 エイムネクストは、2019年に宮崎県児湯郡高鍋町と包括連携協定を締結。高鍋町で地域IoTプラットフォームを構築した。地域のニーズに基づいたスマートタウンアプリケーション開発を進め、一方日本ドライケミカルは総合防災企業として各種防災設備の設計・施工から消火器、消防自動車の製造・販売等を行う。ちなみにエイムネクストがシステム及びハードウェア開発を担当。日本ドライケミカルが総合防災メーカーとして、地域防災における安心・安全へのソリューション提言を行う。加えて開発費への協賛、IoTセンサーを取り付ける格納箱及び消火器を高鍋町役場へ寄贈した。
 22年1月からは高鍋町役場にて、消火器の使用検知・管理ソリューションのシステム実証稼働を開始。その後、機能拡張も行いながら高鍋町内の他施設への展開を目指すと共に、自主防災組織との連携についても進めていく予定とのこと。

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