不動産トピックス

クローズアップ ウェルビーイング編

2022.06.06 14:54

 長時間労働や対人関係の問題などから、仕事の中で抱えるストレスは心身共に大きいもの。昨今は従業員の健康に意識を傾ける企業の向きも強い。今回は健康経営の取り組みを続ける企業とサービスに焦点を当てた。

社長の手作りランチやアプリ活用で社員の健康を 今年の健康経営最優良の500法人に認定
 大田区・品川区エリアを中心に住宅リフォーム事業を進めるキタセツ(東京都大田区)。設立30余年の同社では、健康経営に配慮した職場づくりに注力している。先駆けてはじめたのが「キタセツランチ」だ。「キタセツランチ」は、代表取締役社長の北川拓氏が自ら社員のランチを作るという斬新な取り組み。6年前から毎日継続して行っているという。
 「キタセツランチ」を始めたきっかけについて、北川氏は「会社が少しずつ大きくなっていくと、施工やお客様対応、事務業務など、日常の業務の大部分を社員が担っていくことになります。その中で社員のために何か役に立てないかと考えるようになり、昼食にカップ麺やコンビニ弁当などを食べている社員が多いことに気が付きました。それならばと、社員の食生活の乱れを改善すべくはじめたのが『キタセツランチ』です」と話す。
ランチのメニューは、北川氏がネットのレシピを参考に決めている。10時半頃に食材の買い出しに行き、11時半頃から自社4階にあるキッチンで調理を開始。メーンのおかずのほかに数種類の野菜を使ったサラダや味噌汁・ご飯を用意し、栄養バランスとボリュームともに満点のランチを提供している。ランチタイムには毎日総勢25~26人の社員が集まり、ブッフェスタイルで好きな料理を好きな分だけとって食べる。昼食代は福利厚生として会社負担。社員の財布にも優しい。この「キタセツランチ」を始めたことにより、社内の雰囲気にも変化が見られたという。
 「当社は5階建ての自社ビルとなりますが、部署ごとにフロアが異なるため、部署間の交流機会がこれまでは多くありませんでした。『キタセツランチ』では社員一同が同じ部屋に集まるため、部署の垣根を越えたコミュニケーションが目に見えて増えました。その結果、社員同士が仕事の相談からプライベートな話までしやすい雰囲気づくりにつながり、業務へも良い効果をもたらしています」(北川氏)。
 健康経営への取り組みは「キタセツランチ」に限らない。大田区の提供する健康アプリ「はねぴょんポイント」に会社を1グループとして登録。毎日の歩数が確認できるほか、大田区内・グループ内での歩数ランキングなども確認でき、自己の健康への意識づくりにも貢献している。昨年には健康経営に関するプロジェクトが社員発案で発足。プロジェクトメンバー同士で健康経営の具体的な取り組みについて定期的に話し合う機会を設けている。元スポーツインストラクターの社員を筆頭に短時間のストレッチ動画を見ながら社員一同でストレッチを行ったり、社内の連絡ツールを用いて「キタセツランチ」のレシピやカロリー情報を発信するなど、新たな取り組みも始めている。
 これらの取り組みが評価され、キタセツは今年の「健康経営優良法人」では最優良となる500法人に贈られる「ブライト500」にも選出された。地域密着型企業の健康に配慮した職場づくりに引き続き注目したい。

三井不動産の健康経営支援サービスに生活習慣病リスク予測AI導入へ
 三井不動産(東京都中央区)の健康経営支援サービス「&well(アンドウェル)」のアプリに、東芝(東京都港区)が開発した「生活習慣病発症リスク予測AI」と、「リスク低減シミュレーション」の2つを新機能として導入し、2022年4月から効果検証の実証実験を実施している。
 「&well」は、導入企業の従業員に対し健康意識と行動を変容させる「きっかけづくり」と、それを「継続・習慣化」につなげる独自の実践プログラムやイベントを提供するサービス。今回の実証実験では「きっかけづくり」を強化する機能として、東芝の「生活習慣病発症リスク予測AI」と「リスク低減シミュレーション」を導入。会員が自身の将来の疾患リスクを把握し、リスクを低減させるための目標体重をシミュレーションすることが可能になる。
 「生活習慣病発症リスク予測AI」が、1年分の健康診断結果をもとに5年先までの生活習慣病(糖尿病・高血圧症・脂質異常症)の発症リスクを予測。「リスク低減シミュレーション」が、AIが予測した生活習慣病発症リスクを任意レベルに低減させるための「目標体重」をシミュレーションする。「&well」は生活習慣改善のアドバイスと実践を、600本以上の配信動画やコラムの中から提案する。
 実証実験は2022年4~11月まで、「&well」導入企業の従業員300名を対象に行われる。実際に生活習慣病発症リスクや目標体重を算出し、目標に応じた行動促進コンテンツを提供。4カ月経過後に意識や行動への影響調査を行う。三井不動産では、22年度中に「&well」サービスでの本稼働を目指すとしている。

東急不動産 テナント向けヘルスケアソリューションの実証開始
 東急不動産(東京都渋谷区)が、オフィスビルテナントのワーカー向けに新しいヘルスケアソリューションの提供を目指したサービス実証を開始する。
 同社は2021年から、オフィスビルテナントのワーカーに新しい働き方とウェルビーイングの実現を目的としたトータルソリューション「GREEN WORK STYLE 未来の自分をつくる働き方」を提供している。同ソリューションは「ワークプレイス」、「環境」、「健康経営」、「ライフスタイル」に関する施策・サービスを展開するもので、今回の実証は「健康経営」に関するアクションと位置づけられている。
 実証では、事業化検討テーマとして「ウェルネスオフィスの構築」、「産業保健活動のサポート」、「行動変容を促す健康増進サービスの開発」、「エリア健康管理室の実装」の4つを設定。全11社のパートナー企業とコンソーシアムを組成し、各社が持つ既存リソースを有機的につなぎ合わせ、2023年度のテナント企業へのサービス提供をめざして取り組みを推進。さらに事業化も検討していくとしている。
 「行動変容を促す健康増進サービスの開発」では、「渋谷ソラスタ」のテナント企業のワーカーを対象に、「食事改善」のサービス実証を行う。パートナー企業のライフログテクノロジー(東京都中央区)が提供する健康管理アプリ「カロミル」を通して、一人ひとりの健康状態や食事記録をもとに最適なランチメニューのレコメンドを実施。レコメンドされるランチメニューは、実際に提供している飲食店舗のメニュー等が反映される仕組みとしている。

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