不動産トピックス

【今週号の最終面特集】自家消費型太陽光発電で脱炭素・ESG

2022.04.11 10:43

発電余剰分の変動を制御「SmartSC」 蓄電池と太陽光パネルの連携 省エネ対策や緊急時の電源供給に
産業用・自家消費型の蓄電システム 省エネ・BCP・脱炭素でも注目

 郊外や地方に事業用不動産、自社物件を保有するオーナーも多いだろう。その様な物件・建物に昨今、産業用(発電量が10kW以上)の自家消費型の蓄電システムを取り付ける事例が増えている。ここ数年で省エネやBCP対策、脱炭素等の視点から注目され、特に工場や商業施設、宿泊施設等のエネルギーをたくさん消費する建物に好まれている。屋上や敷地内に太陽光パネルを設置して自家消費として運用している。

自社開発の双方向電源とリチウムイオン蓄電池
 YAMABISHI(東京都大田区)は設立から60年以上、蓄電システムやバッテリー充放電試験装置、無停電電源装置(UPS)などの開発・製造・販売している。昨今は産業用(発電量が10kW以上)の自家消費型の蓄電システム「YRWシリーズ」が、省エネやBCP対策、脱炭素としても注目されている。
 YRWシリーズは自社開発の双方向電源とリチウムイオン蓄電池を組み合わせた産業用の蓄電システム。一般的な蓄電池としての機能や使い方に加えて、太陽光パネルとの連携による省エネ対策や緊急時の電源供給も可能とした。製品は電源と蓄電池が一つの筐体にまとめられた「蓄電池一体型」と、筐体が分かれた「蓄電池セパレート型」に分類され、入出力相数の単相2線・単相3線・三相の全てに対応。セパレート型であれば用途やニーズに合わせて、電源容量やコンバータ容量、蓄電池ユニット数が選択できる。
 一方一体型はコンパクトな筐体に双方向電源と蓄電池、コンバータをまとめて搭載。省スペースでの設置や導入コストの低減にも繋がっている。また蓄電池は東芝製の二次電源「SCiB」を採用。海外製のリチウムイオン蓄電池を搭載し野外設置できる新モデルの販売も予定している。電気を大量に消費する工場やスーパーマーケット・ショッピングモール等の商業施設、宿泊施設等はもちろん、中規模から大型のオフィスビルやコンビニエンスストアといった店舗にも対応できる豊富なラインナップを持つ。
 昨今は産業用の自家消費として、特に太陽光発電や蓄電池との組み合わせが多い。しかし、上手く消費電力のピークカットに繋がっていないケースや余剰に発電した電力を持て余す事例が散見される。同社はそれら課題にも対応した。自家消費を最適化及び制御する新技術「SmartSC」である。

運用実績で再エネ率51% 電気代削減率は約50%
 東京営業所の平瀬哲也氏は「SmartSCは天気や負荷の予測から余剰分を算出し、事前に蓄えた電力を制御しながら消費することで発電を制限せず受け入れができる新技術です。天気が曇・雨の低発電時や快晴でも暖房負荷で余剰が出にくい冬季は、充電率を高く維持します。このため事前の充電が必要な『ピークカット』や『自立運転』の効果を制限しません。弊社工場における2021年の運用実績では、再エネ率51%と高い環境価値を記録しました。また電気代削減率は約50%と経済性においても高い効果を確認しました。まさに『蓄えて消費する』から『消費して蓄える』を実現しました」と語った。
 そもそも太陽光パネルで発電した余剰分の電力は蓄電池へ充電し、夜間に放電(使用)することで一段と使用料金が削減される。しかし夜間の使用量が少なく蓄電池に空きがないと、すぐにフル充電となり発電制限に繋がる。また蓄電池があれば雨天や夜間でもピークカット放電ができ、基本料金も削減できる。
 が、蓄電池が事前に充電されていないと充電不足でデマンドオーバーになる。充電不足は災害時のBCP対策にも影響する。蓄電池が事前に充電されていないと短時間で電力不足に繋がり、対策としての機能を失う。これらの原因には「発電余剰分の変動」が上げられ、この変動を上手く制御することが肝であった。その制御(コントロール)を実現したのが「SmartSC」である。
 平瀬氏は「その他にもウェブブラウザで運用実績を管理できる『みえる化システム』により脱炭素社会への貢献もアピールできます。特に工場や病院などの設備の稼働停止ができない施設において、災害時の電源確保に貢献します。当社の蓄電システムは無瞬断で電源を供給できる無停電電源装置としても併用できるため、その様な施設での導入に最適です。消費電力の削減を実現しながら、災害時には避難してきた方に安全な環境を提供できる。事業用不動産を保有・運営する企業へ設置を勧めます」と語った。

即時償却で節税やイメージ工場に貢献
 設置・導入環境が多少限定される産業用の自家消費型の太陽光発電であるが、現在多様な視点から注目されている。大きくは4項目で「電気量料金の削減」、「有事のリスク低減」、「企業イメージの向上」、「即時償却で節税」といったところ。
 2017年以降電気料金は値上がりを続けており、近年は電気料金の高騰が利益を圧迫している様子も見られる。石炭や液化天然ガスの輸入価格高騰、また国際情勢などの影響も受けるため、値上がりのリスク・可能性を常に含んでいる。一方自家消費型の場合、使用するはずであった電気を太陽光パネルで発電し自社で賄う仕組みだ。不足分だけ購入することとなり、当然電気料金は安くなる。また電気料金は、使用した分の「電気量料金」に毎月固定で掛かる「基本料金」を加えて算出される。更に基本料金は「基本料金単価」と「契約電力(最大デマンド)」を掛け合わせることで算出される。ちなみに最大デマンドは、過去1年間の最大需要電力(デマンド)の中で最も大きな値のことを指し、そこを基準に「基本料金」が計算される。そのため最も電気を使う時間に、自家消費型太陽光発電システムで消費量を抑え、最大デマンドを下げることができれば、毎月の基本料金も下げることが可能だ。
 またイメージしやすい項目としては、有事のリスク低減が上げられる。災害の多い日本において、災害時や停電時の経済活動の停止を心配する企業は多い。海外とのビジネスがあるメーカーの工場や地元住民に親しまれるスーパーマーケット、ショッピングモールなどは特に気を付けなければいけない項目だ。病院や介護施設なども補助電源の確保は必須。加えて、継続しての電源も求められるため自家消費型の発電システムは必要となってくる。近年では「CO2削減に協力して企業イメージを高めたい」や「ESG経営で脱炭素化し、地域の環境に貢献する」などの環境配慮や時勢に応える事を意識した「企業イメージの向上」として取り組む様子も多い。
 最後は節税対策。「営業利益が出たので節税対策として」の要望も散見される。地方公共団体や地方自治体では再生可能エネルギー普及活動のため、導入にあたって税制優遇や補助金が提供されていこともある。中小企業が自家消費型の太陽光発電システムを導入すれば、設備費用の全額を一括で償却できる即時償却や設備費用の最大10%の税額控除が受けられる税制優遇などもある。その他に新築建物の場合、最大3年間固定資産税が免除されるなど、様々な税制優遇が利用できる。

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