不動産トピックス

クローズアップ 建築コスト削減編

2022.04.11 10:21

 建物の新築や改修工事において、昨今は建築資材の価格高騰や人材不足などから、コストの上昇傾向が続いている。コスト削減を実現するためには、専門家の知見のほか、最新技術の活用が求められている。

キリアオフィス 専門家による検証で改修工事費用を1~3割削減
 キリアオフィス(東京都港区)では、不動産オーナーの視点に立ち、改修工事や修繕工事の内容を精査。工事費削減の提案を行っている。同社の中野優人社長は全国で事業展開を行う建設会社の出身。多くの工事現場を経験する中で、施主の費用負担を軽減できる可能性を感じてきたことが独立開業のきっかけになったという。
 「既存ビル・マンションの改修工事や修繕工事は、建物管理を行う会社が元請けとなり、管理会社が工事の施工業者を選定するのが一般的です。工事の実務を下請け・孫請けが担当することで中間コストも上乗せされ、施主の費用負担増大を招いてしまいます。また、必要な工事の有無も第三者が精査することでコスト削減を図れる場合があります」(中野氏)
 検討にあたっては建築・設計に精通した専門家が現地を調査し、必要な工事内容を分析。従来に比べ、費用を平均1~3割削減することも可能だという。横浜市内の総戸数120戸のマンションで実施した大規模修繕工事では、管理会社の指定工事業者が提出した約1億8000万円の見積りから、工事内容等の適正化を行い、1億4000万円弱まで費用を削減。削減額は約4000万円と、適正化を行う前から20%強のコスト削減を実現した。建築や設計のノウハウを有する同社ではこのほかにも、オーナー側の指定業者で実施されることの多い入居者負担のB工事のコスト削減提案も行っている。建築工事は専門性が高く、費用の透明化が難しい。同社のような第三者の知見を加えることによって、オーナー側もテナント側も費用の無駄を最小限にすることが可能になるのだ。

フォトラクション 配筋検査の作業時間を50%超短縮
 建築・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発および運営を行うフォトラクション(東京都中央区)は、工事現場における配筋検査の準備(黒板作成や必要図面の整理)プロセスを55%削減する建設業特化AIを開発。今後は建設業特化AIにオペレーターを組み合わせたサービスの展開を加速し、建設業界における人手不足の解決を目指す。
 同社が開発した建設業特化AIは、大規模建築を中心とした設計図面の解析を得意としている。通り芯や寸法線などをはじめ、非定型な書式である設計図面から記載されている情報を自動的に抽出することが可能で、この技術をサービス化して提供するために、配筋検査の準備プロセスにおける必要な情報抽出に特化して開発が進められてきた。
 配筋検査は主に鉄筋コンクリート造の躯体工事において、コンクリートを打つ前に組み上げる鉄筋の配置が適切に行われているかを確認する作業のこと。検査の前には、現場で活用する書類や工事黒板(工事現場では頻繁に使われる手持ちサイズの黒板)の準備が必要であり、従来であれば設計図面から鉄筋コンクリートに関する部材符号を抽出して、活用する工事黒板、そして検査するチェック項目を人の目で照合して作成する必要があった。これらの作業は650㎡の建物であれば1フロアあたり10~13時間という多大な時間がかかっている。建設業特化AIは設計図面から検査の対象となる配筋情報と、部材の位置を抽出し照合することで、工事黒板への転記や最終的に使う書類の作成までを自動的に実施することが可能。これにより、配筋検査の準備作業のプロセスを55%削減することに成功し、1フロアあたり5~6時間程度で作業が完了することを実現している。

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