不動産トピックス

【今週号の終面特集】中小ビルにも採用の流れか 顔認証・非接触で感染症対策とセキュリティ強化

2022.03.07 18:18

 この1、2年で非接触や顔認証機能を採用したオフィスセキュリティが増加している。しかし導入コストを垣間見ると、初期導入費や月々のランニングコストは高額で、導入先も大手不動産会社のみ。この流れが今年からは変化する兆しが見える。中小ビルや商業施設でも高精度の非接触・顔認証機能を導入可能だ。大手と同じ土俵に立つ中小ビルも増えてくるだろう。
顔認証システム・デバイス・電気錠がセットのパッケージプラン
電源確保できれば工事不要で設置
 システム設計や開発、運用事業等を展開する東計電算(川崎市中原区)は、従前から提供しているAI顔認証システム「AiFa(アイファ)」シリーズに、4月から新たに非接触型の「AiFa 入退室管理システム」を開始する。
 AiFaは検温と勤怠打刻を同時にできる端末機で、壁掛け型、卓上型、スタンド型の3種類を使用場所に応じて設置が可能。卓上型とスタンド型は電源(コンセント)さえ確保できれば工事不要で簡単に設置でき、検温と共に扉の開錠にも転用できる(その場合はドア側の工事は必要)。USBタイプのフットスイッチを導入すれば、端末機へ触ることなく打刻モードへの切り替えも可能。認証速度は1秒以内、検温制度は±0・2℃で、認証率はマスク着用でも99・7%と高精度が強みだ。更に基幹システムとの連携も可能で、既に使用する勤務管理システムと連携した打刻情報の記録・保存を行う企業も複数社散見される。履歴を生かせば、社員の健康管理や感染症対策にまで役立てることが可能だ。
 AiFaの提供開始は昨年1月から。ソフトウェアベンダーや病理学的検査研究所、運送会社、造船会社、クリニック等で導入されてきた。例えばソフトウェアベンダーでは従業員1000人・8拠点において、AiFaを採用し勤怠管理と共に運用。一方運送会社では、従業員700人・12拠点において、他社の勤怠管理システムと連動しながら運用している。一般的な企業に限らず、病院や介護施設といった集団感染を抑えたい施設、また衛生対策やセキュリティを入念に行う研究所等にも適しており今後も需要が大きく見込める。衛生的でありながら生体認証のため、なりすましは困難。不正防止やICカードの貸し借り防止に繋がることも導入要因に挙げられる。

安価な導入費用と後付け可能が追風に
 同機能に加えて新たに開始するのが非接触型の「AiFa 入退室管理システム」。顔認証システムと顔認証用デバイス、ドアに取り付ける電気錠がセットになったパッケージプランで、後付け可能な非接触型の入退室管理システムだ。こちらも入口に設置した顔認証用デバイスにより事前に登録した顔写真と照合。入室者の本人確認と確認時の検温が可能だ。マスクしたままの本人確認も可能で、入退室時の操作は非接触により感染リスクの低減に繋がる。
 設備管理システム部の青木優介氏は「コロナ禍以降、多くの企業で出社時の検温やマスク着用、身体的距離の確保等の継続的な感染症対策が実施されてきました。しかし円滑な業務遂行とセキュリティの観点から、上手く非接触を維持しながら入退室管理までできたケースは少なく、かつ後付けでできる製品も稀でした。『AiFa 入退室管理システム』はこれら課題解決に加えて、退職者の入退制限やアルバイト・清掃サービス等の一時的な入退などタイムリーな入退管理にも対応できます。最短5営業日のスピード導入も実現可能です」と語った。
 実は同システムが注目を集める要因に、安価な導入費用と簡単に後付け可能なことが挙げられる。これまでのAI顔認証システムや入退室管理システムは性能にもよるが決して安価ではなく、更に双方の機能が加わると事前に取り付け工事が必要であった。デベロッパーや大手不動産事業社の携わる物件でしか導入されない高価な設備。ではなくなり、中小規模のテナントビルや商業施設でも実現可能となる。中小ビルの非接触・入退室管理を加速させるシステムとして注目だ。

AI顔認証非接触検温 勤怠管理にも活用可能
 住宅メーカーの大倉(大阪市北区)は、AIやIoT等の最新技術を組み合わせた次世代プロジェクト「HESTA SMART CITY」を展開している。住宅事業やリゾートホテル事業をはじめ展開する様々な分野に、AI等の技術を活用して暮らしの向上を図る取り組みだ。
 同社はスマートホーム化やAI搭載の無人店舗、コロナ禍における空気環境改善製品など多岐にわたって展開。ビルにも関連する製品にAI顔認証非接触検温システム「HESTA AI SECURITY GATE」を提供する。高性能サーモグラフィーカメラとAI顔認証の機能による正確な測定精度、国内最速クラスの迅速な測定が強み。測定の対象者はマスクを付けたまま検温が可能で、37・2℃以上の体温異常を検知する。温度測定精度は国内トップクラスで±0・1℃、検温速度は約0・2秒。時間を掛けずスムーズに対処できる。マスク未着用者にはマスク着用のアナウンスも可能だ。国内最多レベルである3万件のデータを自動保存し、感染発生時の後追い、顔認証機能による勤怠管理にも活用できる。
 また「HESTA AI SECURITY GATE PRO」は、検温システム及びサーマルカメラ業界でも数少ない複数人検温可能な製品。複数人を約1秒で同時測定でき、入場者数管理も容易である。大型の商業施設や店舗、イベント会場での検温業務をスムーズにでき、人の手で行う検温作業の負担も改善できる。精度の高さや利便性、スピード感等を背景に病院や学校、公共施設でも設置が加速。今後はビルのエントランス付近に設置し、ビル内で勤務するワーカーの健康状態を「一目で把握できる」+「クラスター感染を未然に防ぐ」ことも実現してくるだろう。昨今では管理会社や警備会社からの問い合わせもあるとのこと。
 東京本社・建設部の福島一之部長は「商業施設やオフィスビル等といった、大勢の人が集まる施設・建物が設置対象となります。非接触・瞬間での検温が可能なことから、感染リスクの低減と手間が掛からずに迅速な検査ができる点も利用者から好評です。スタンドタイプやコンパクトな卓上タイプ、複数人を同時検温できるシステムタイプ、消毒液用のディスペンサーとスタンドタイプを組み合わせた製品も購入した企業からは好評と聞いています。費用とニーズに応じて自在に対応可能です」と語る。


社員情報をウェブ上で一元管理可能
東計電算 設備管理システム部 制御管理システム課 主任 青木優介氏
 「AiFa 入退室管理システム」はクラウド型サービスなので、社員情報をウェブ上で一元管理でき、複数拠点やオフィスの入退室管理も一括管理できることが強みです。全拠点のシステムに指示を一度に反映させることも可能です。一時利用者向けには、顔認証の他に「QRコード認証」やBluetoothによる「スマホウェブキー」によるワンタイムパス機能(オプション)も用意しております。クライアントの要望に応じて、組み合わせた利用も可能です。ちなみに掛かる費用は初期費用と月額料金で、必要な機能や利用条件、ハードウェア台数等に応じて変動します。


今後は勤怠管理と組み合わせも定着
大倉 東京本社 建設部 部長 福島一之氏
 AI顔認証非接触検温システムを設置することで自社及びビルのコロナ対策に貢献・アピールでき、かつ今後は勤怠管理システムとの組み合わせも定着してくるでしょう。中にはテナントへのアピールポイントとして、上手くリーシングや長期入居にも生かせるかもしれません。まずは導入でビルの安全・安心と共に利便性確保も意識しては如何でしょうか。

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