不動産トピックス

今週の一冊

2022.01.06 14:03

奥の深い鑑定業務

まるごと知りたい不動産鑑定士
著者:黒沢 泰
発行日:2021年11月10日
発行所:税務経理協会
価格:1800円(税別)

 「不動産の価値を適正に評価する国家資格」が不動産鑑定士だ。だがその実態はなかなか見えない。「不動産鑑定評価書」に示す価値はどう算出されるのか。
 「鑑定評価は実践科学(野外科学)」という。あらゆる観点から将来の価値も含めた価格判断をする不動産鑑定士。資格試験の門戸は広く誰でも受験は可能。行政法規・鑑定評価理論の短答式と、民法(借地借家法、建物区分所有法含む)、経済学、会計学の論文式の試験が毎年行われる。合格率は約15%、難易度は中の上といったところか。
 さて鑑定士の実務は「ラーメンからミサイルまで」に共通するものがあるとか。GNPや鉱工業指数、景気動向指数等の経済指標はもちろん、市役所や図書館で古地図を調べ、土地断面図、土壌調査まで目を通し、税制、建築、はては災害関連の知識も必要となると、確かに不動産の総合商社そのものだ。本書は鑑定士の試験委員も務める著者が業務の一端やキャリアアップの方法、業界について解説する一冊。
 「(不動産は)物理的な意味で動かないが、人の働きかけによってはいくらでも動く」にはハッとする。この寅年、我々はどの方向に動かし始めたのだろうか。

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