不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2021.10.25 10:49

グリーンズ ライフスタイルに合わせた人事制度が効果 社員応募者数増加、離職率2%低下
 日本全国で宿泊特化型ホテルやシティホテル等を運営しているグリーンズ(三重県四日市市)では、昨年10月よりライフスタイルに合わせ、都道府県単位で勤務地区分を選択できる新人事制度「社員がChoiceできる人事制度」を導入しているが、約1年が経ち、大きな効果があったという。
 離職率が前年比で2%低下したほか、内定辞退者の減少、社員募集に対する応募者数が増加した。
 この制度は、ライフイベントに合わせた多様な働き方の中でも、中長期的なキャリア構築を可能にしたもの。
 同社が抱える経営ビジョン「TRY!NEXT JOURNEY~新たな旅に踏み出そう」にちなみ、勤務地区分は「旅」になぞらえた5区分に設定。 「グローバルジャーニー(全国勤務)」「カントリートラベル(10都道府県程度)」「リージョントラベル(4都道府県程度)」「エリアトラベル(2都道府県程度)」「ローカルトリップ(転居なし)」のそれぞれの「旅」区分では、あらかじめ設定された数の都道府県を転勤可能地域として選択できるが、各「旅」区分内で選択する都道府県には近県や隣接県等の制約はなく、例えば「北海道」と「沖縄」といった選択も可能だ。勤務区分設定により「地元志向」の人には安心して働くことができ、より遠くへ「旅」をする人には広がりに応じたバックアップ施策を充実させている。
 導入後、具体的には2020年6月期の離職率16・34%から2021年6月期は離職率14・27%と、約2%低下したほか、内定通知後の辞退者数が2020年6月期比で73%減少、社員募集に対する応募者総数が2020年6月期比で175%増加したという。
 1957年に三重県四日市市で「駅前旅館」として誕生した同社は、これまでも定期的な健康診断に加え、メンタルヘルス診断・従業員向け相談窓口の運用など、24時間365日営業するホテルを運営する企業として、その運営を支える従業員の心やからだの健康維持・管理に取り組んできた。
 従業員のリフレッシュが重要であるとの考えのもと、年2回取得可能な7日間の連休制度は20年以上前から導入し、さらに有給休暇の取りやすい環境づくりなど、より実効性の高い心身の健康づくりにも取り組んでいるという。
 同社では、「制度導入時には、特定の勤務地区分に偏るのではないかとの懸念がありましたが、現状社員の区分選択は想定割合におさまっており、今後はライフスタイルに合わせた区分選択をしながらも管理職に就く社員が増えていくとみています。離職率の低下は、コロナ禍の影響もあるものの、自身が主体的に選択した範囲内での転勤となる新制度による納得度の向上もプラス影響を与えていると思われます」と分析している。 グリーンズは、40ヵ国以上7000軒以上のホテルチェーンのグローバルブランドを擁する「チョイスホテルズ事業」と、60年以上のホテル運営の実績をもつ「グリーンズホテルズ事業」の2本柱で展開している。
 「チョイスホテルズ事業」では、北海道から沖縄まで全国各地でコンフォートブランドのホテルを展開。コンフォートブランドのホテルでは、ビジネスや観光に便利な立地、バランスよくヘルシーな朝食、オリジナル寝具による快眠へのこだわりなど、充実したサービスを提供している。また、2018年5月31日の世界禁煙デーをもって、全国に50軒以上の規模を展開するホテルとしては日本で初めて、全室禁煙化を達成した。

三菱地所グループが京都に新施設オープン
 三菱地所グループのロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ(東京都千代田区)では2022年4月1日に、「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 京都」(京都府京都市)をオープンさせる計画だ。
 同ホテルは、地下鉄烏丸線・東西線「烏丸御池」駅より徒歩約2分に位置、延床面積7399㎡、RC造(一部S造・SRC造)、地上9階建て。客室は125室で、レストラン、バー、パティスリー、宿泊者用ラウンジ、大浴場などを併設する。
 コンセプトは「あたらしい、あなたに気づく」。滞在しながら、さまざまな「気づき」「発見」をしてもらおうというもの。キービジュアルは珪藻をモチーフに、「気づき」と「美しさ」を表現し、街とホテルでの滞在を通して無意識の世界や自分自身を再発見していただきたい、という想いを込めたという。珪藻とは植物プランクトンの一種。ガラス質の殻を持っているのが特徴で、種類によってさまざまな形をしており、珪藻1つの大きさは0・005mm~0・5mmととても小さく、ミクロの宝石と呼ばれている。本来、顕微鏡でしか見えない珪藻の形状や色を活かし、アート作品に仕上げた。
 客室での滞在だけでなく、コロナ禍以降需要が増している「ステイケーション」も提供する。約200㎡という広さを持つラウンジにはファイアーピットを囲むテラス席を設けている。
 スイート1室を含む全125室の客室は、シンプルで洗練されたデザインが特徴。京都の路地をイメージした格子を取り入れ、柔らかに照らす光とともに京都らしさを演出する。特に、3~8階の各フロアに1室の「コーナーバルコニー」は、祇園祭の山鉾や時代祭の行列巡行ルートである御池通りに面したバルコニーを備える。

東急グループ ヒルトンと協業で初進出ブランド
 東急不動産(東京都渋谷区)と東急リゾーツ&ステイ(同)、ヒルトン(本社・米国バージニア州)では、ヒルトンのラグジュアリーブランド「LXR ホテルズ&リゾーツ」のアジア太平洋地域初進出のホテルとして、京都府京都市北区で運営するリゾートホテル「ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts」を開業させた。
 同ホテルは、京都市内北部の鷹峯三山の麓に開業するラグジュアリーホテルで、本阿弥光悦が芸術村を築き上げ、才能ある芸術家を世に輩出してきた琳派発祥の地とされる鷹峯に位置。「Dive into Kyoto」をコンセプトにリゾートでの滞在を通して「知る人ぞ知る京都の魅力」を提供していきたいという。 
 全114室の客室は5つのタイプから成り、客室の広さは49㎡~100㎡まで用意。壁紙の一部に使用されている唐紙や、西陣織のアートワークなど、日本の素材が持つ魅力と職人技の巧妙さをシンプルに表現している。客室の窓は、鷹峯三山の雄大な景色を楽しんでもらえるよう全面ガラス張りになっており、季節ごとに移り変わる風景を、堪能できる。また、客室に入る茶器も階数によって異なる作家の作品を採用した。
 館内にある料理店内は「シェフズテーブル」「オールデイダイニング」「ザ バー」と3つのシーンに別れており、それぞれ希望のスタイルや用途によって選ぶことができる。和傘照明が目を引く店内のインテリアは、京都の伝統工芸である「竹細工」をテーマにアートワークが施され、落ち着いた雰囲気の中で料理を提供する。

「和多屋別荘」イノベーションプロジェクト
 佐賀県嬉野温泉・旅館「和多屋別荘」は創業から71年目を迎える11月3日に館内に、新たに7つの施設を同時に開業する。2万坪のイノベーションプロジェクトをパートナー企業とともに「Reborn Wataya Project」と題して今後、随時発表する。
 新型コロナウィルスのまん延により、Withコロナの観光業の在り方や新たなビジネスモデルが求められる中、和多屋別荘では「旅館=泊まる場所」という垣根を超え、昨年よりオフィス棟の開設による企業・ワーカーの誘致や利用者の多種多様なニーズに答えるべく、館内のレストラン・スパサービスなどをリニューアル・拡充してきた。 
 まずは7施設を同時オープンさせる。これまで非日常空間として、旅館やレストランで提供してきたノウハウやサービス、おもてなしの心を基に、今後は「地元のお客さまにも足を運んでいただける場所」を目指し、利用者の日常に寄り添ったサービスやコンテンツを提供していきたいという。

「熱海」をキーワードにコンサルティング
 ACAO SPA & RESORT(静岡県熱海市)と、タイソンズアンドカンパニー(東京都品川区)は、熱海市を中心に飲食・物販業およびコンサルティング業を展開し、食用バラの生産なども行うジョイントベンチャー「ACAO BLOOM」を設立した。
 ACAO SPA & RESORTは、従来のホテル事業に加え、地形を活かしたガーデンやビーチリゾートの運営など、70万m2の土地を最大限に活かした新規事業を推進し、文化と芸術が育つ文化圏の創造に取り組んでいる。一方、飲食を軸とした幅広い事業を展開するタイソンズアンドカンパニーは、長期的な経営を基本に、その土地に暮らす人々のライフスタイルにあったコンセプトメイクと、長く続く店づくりを強みとしており、現在、東京都内で13のレストラン・カフェを経営している。 
 両社が設立した「ACAO BLOOM」では、ACAO SPA & RESORTが有する環境と歴史、タイソンズアンドカンパニーが培ってきたホスピタリティとプロデュ―ス力を掛け合わせ、飲食業の強化・オリジナル商品の製造・販売などを通じて、世界に選ばれるディスティネーション、熱海のブランド構築を目指していきたいという。

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