不動産トピックス

【今週号の最終面特集】清掃ロボットの現状と今後

2021.10.11 10:48

ロボット導入でビルの資産価値に差 ビル・マンション内への荷物の運搬も可能
 今年の不動産ソリューションフェアに出展した清掃ロボットの販売を行うテクトレ。展示会で様々な企業と出会えただけでなく、ロボットのお披露目の場にもなった。今後清掃や配膳等に起用されるロボットは活躍の場を広げ、不動産の分野でも身近に浸透していくことが想定される。

総合ホテルリゾート ロボット導入に前向き
 テクトレ(横浜市中区)は、中国のメーカー・アイドライバープラス(智行者)が開発した無人運転清掃ロボット「viggo(ヴィゴー)」の国内販売を担当する。今後は清掃ロボットだけでなく、配膳や搬送ロボット(AGV)の提供にも自信を持つ。
 viggoは、GPS、RTK(リアルタイムキネマティック)のナビゲーションシステム、LiDar(光による検知と測距)カメラ、超音波レーダー等のセンサーを搭載した自動運転の清掃ロボット。広範囲の屋外清掃に適しており、道路上の掃除、吸塵、ゴミ収集、水巻き等の作業ができる。屋内清掃も可能で、広い商業施設や倉庫、ホテルでの運用を想定した問い合わせもあるほど。複雑な路上の状況を適切に判断し、人・障害物等の回避と、効率的な清掃が可能となった。強みは清掃面積。1日8時間計算であると、viggo1台で約6人分の掃除面積に匹敵。クラウド経由で手元の端末からロボットの居場所や状況等を常時把握でき、一定のクオリティを維持しながら管理業務は簡略化できる。
 屋外清掃と広範囲に対応できる点、清掃業務の簡略化等を理由に、夏頃から総合リゾート会社から前向きな問い合わせがあった。敷地内の清掃業務に多大な時間と労力の掛かっていた状況を改善するべく同社へ依頼。現地での導入試験も順調に進み、上手くゆけば早い段階で複数台の運用も始まる。その他に、団地内の落ち葉回収やマンション敷地内の屋外清掃を想定した企業から問い合わせも来ている。また2022年開催の北京オリンピックでは、競技会場の屋外清掃に数十台の導入が決定済み。効率化やスピード清掃に繋がることから、屋外清掃の大半をロボットに任せる計画とのこと。

人員不足の解消や感染リスクの軽減に
 代表取締役副社長の関野博樹氏は「国内で提供されている自立走行型の清掃ロボットや警備ロボットの大半は、屋外での運用に不安要素が見られます。一方viggoは、GPSやRTK等を利用したレベル4相当の自動運転技術を搭載し、極めて高い走行性能を実現しています。操作ではスマートフォンや他のタブレット端末で指示ができ、遠隔での指示や現状把握も可能です」と語る。
 また横浜中華街に立地する中華料理店・招福門では、同社の配膳ロボットが運用されている。事前に走行ルートを決めるだけとシンプルな運用であり、人員不足の解消や感染症リスクの軽減にも効果がある。実は配膳ロボットや搬送ロボット(AGV)で使用されている機能を生かせば、ビル・マンション内への荷物の搬送や倉庫内での運搬業務への活用も可能である。ロボットとエレベーターとの連動は必須となるが、実用化も難しくはないとのこと。
 関野氏は「自立走行型のロボットは、カスタマイズにより様々な状況で活用することができます。現在構想として、ゴミ箱とロボットの組み合わせがあります。単にゴミ箱をロボットの上に取り付けるだけですが、画期的な点はゴミを捨てたい人が手を挙げるとロボットがその場所を認識して移動します。ゴミステーション等へゴミを運ぶ必要が解消され、高齢者でも楽にゴミ捨てが可能になります」と語る。現状大型のオフィスビルや商業施設、マンション等での導入に適しているが、運用事例は少ない。しかし中国での運用状況を踏まえると、日本での普及・運用もそう先のことではないようだ。

大型ビルだけでなく中小への導入も増加
 ソフトバンクロボティクス(東京都港区)が販売するAI搭載の自律走行型業務用清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」。徐々に大型ビルだけでなく、中小ビルへの導入も増えている。
 本格的に販売を開始したのは2019年5月。昨年10月にはバージョンアップした「Whiz i(ウィズ アイ)」の販売を始め、全世界で既に1万台以上も販売している。当初デベロッパーやビルメンテナンス会社への展開が中心であった。が、現在はビルオーナーや入居テナントにも注目され導入が進んでいる。ビルオーナーであれば、系列のビルメンテナンス会社や自社で雇う清掃スタッフと協議の上、共用部の清掃に採用。テナントであれば専有部内の床清掃に活用されている。導入の進んだ背景に、清掃業務の効率化やコスト削減、更に清掃スキルの向上も挙げられる。限られた時間中で一定のクオリティを維持しながら、指定した範囲内の清掃は「人よりもロボットが好ましい」と認識する人も少しずつだが増えている。

5人から3人へ削減 人員コストの削減に
 しかし、現状どの清掃ロボットも完全な清掃スタッフの代替えまでには至っていない。清掃箇所は床面のみ。壁際や階段等の段差がある箇所は対応できないことも導入を今一歩躊躇う要因と思われる。だが長い共用廊下や広いエントランス等を持つ大型ビルの場合、これらスペースの清掃時間は短縮できる。床清掃だけで見れば、5人から3人へ既存スタッフの削減が可能になる。また基準階面積の広いオフィスへ入居する企業であれば、夜間や人の少ない時間帯にオフィス内の床清掃を任せれば済む。機密保持の観点からも外部の人をオフィス内へ入れることがない。管理アプリケーションの「Whiz Connect」を使用すれば、複数台を遠隔管理できる。
 難しいのは中小ビル。1階のエントランスや各階の共用廊下ですらスペースは小規模で、ロボット採用のメリットが少ないことも考えられる。ここで重要なことは、自身の目測で「メリット無し」と決めつけないこと。ビルメンテナンス会社の中には清掃ロボットの採用や活用に積極的な企業があり、運用実績を持つ企業がいる。またメーカーや国内販売の代理店でも実績や知見を多く抱えている場合がある。これら企業と協力して、仮の運用実験等を一度行ってみることは良いかもしれない。実際、床清掃はロボットが担当し、ロボットが清掃中にスタッフは別の箇所を清掃するといった分担が行われていることも聞く。既に清掃スキルの高さ等は認知されているため、清掃ロボットの採用がビルの魅力形成や資産価値の向上にも繋がる可能性が生まれている。


広範囲の清掃にロボットは不可欠
テクトレ 代表取締役副社長 関野博樹氏
 今後導入の進む可能性がある範囲として、高層のオフィスビルやタワーマンション等を含む大規模再開発が挙げられます。広大な敷地を清掃し続ける、常に美観を保つとなればより効率的な運用と清掃システムは必須。清掃ロボットは不可欠です。更に一度清掃ロボットによる運用システムを構築できれば、敷地内での運搬や配送作業にも応用が効きます。マンション及び街区のブランド化に繋がり、既存の再開発エリアを再び活性化させることも可能と思われます。広域での運用実績は既にあり、その一つが輸出用の港です。海外へ輸出予定の新車を船に載せるまでの一時待機場所での清掃に使用されてきました。周辺の砂等を取り除くことで車体への傷を防ぐことに繋がります。範囲は約80万㎡と広大です。ロボットが我々の生活様式を変えることはもう間もなくです。

メンテナンス費用を軽減
ソフトバンクロボティクス 事業開発本部 営業推進統括部 部長 小暮武男氏
 「Whiz i」は、従前までの使いやすさに加え機能が向上しています。チリやゴミを吸い取る吸塵力は1・6倍になり、吸い取ったゴミの入る紙パックは従前の4リットルから6リットルへ拡張。更に土や砂利、クリップ等の大きなゴミを収容するトレーの容量が0・3リットルから2・4リットルへ大幅に増えました。紙パックの取り換えやゴミの廃棄が1週間に1回であったメンテナンスが、1~2週間に1回に軽減されています。ゴミの回収効果が向上し取り残しのない清掃を実現した点は、業務の効率化やクオリティの向上に繋がっています。

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