不動産トピックス

クローズアップ SDGs編

2021.09.21 14:09

 ビル業界でも取り組みが進むSDGs。大手デベロッパーを中心にして保有ビルの再生エネルギー活用などが行われている。直近では中小ビルオーナーも同様の取り組みに参画できるサービスも誕生。環境負荷の低減だけで無く、建物の付加価値向上策としても注目される。

ビルオーナー向け緑化支援サービス展開 中長期的には再開発事業での参画も
 Beeslow(東京都江東区)は今年4月よりビルオーナー向け緑化支援サービス「Beeslow Garden」を展開している。都内のビルの屋上などにハーブガーデン付き養蜂場を設置し、オーナーはコストゼロで建物の緑化を行うことができる。
 「コストゼロ」を実現したスキームはこうだ。ビルオーナーや管理会社などはBeeslowに対して屋上やビルスペースを提供し、Beeslowは無料の緑化とともに、CSR活動やSDGsの取り組みを支援していく。一方で誰でもワンコインから都市の屋上緑化に参加できる「Beeslow Club」を組織。財源を確保するとともに、ファンディング参加者には屋上で育ったハーブやハチミツの提供、開催イベントへの招待などを行っていく。
 国内のビル屋上で養蜂による生物多様性や緑化を促進している事例は少ない。一方で代表取締役の船山遥平氏は「海外ではつい最近、類似のサービスが発表されました」と話す。ゴールドマンサックスがオフィスビルなどを対象にして、アセットマネジメントのなかにミツバチを持ち込んで、不動産の付加価値向上への取組をはじめた。アセットマネジメントにおけるESGへの取り組みは一般化しつつある。
 カナダで養蜂事業を展開する企業は、「人々がミツバチを好きになり、生態系への意識を高め、ひいてはより持続可能な都市やフードシステムを構築すること」を目的として、屋上での養蜂事業を展開。既述のゴールドマンサックスと協業し、北米のオフィスビルなどを対象にして、屋上養蜂プログラムを提供開始した。今年末までに30カ所で当プログラムを開始すると発表し、世界的にSDGsの様々な観点から養蜂が注目されていることがわかる。
 「私たちは養蜂のみならず、緑化でもビルのバリューアップをしながら、入居者満足度や周辺環境の改善やビルの環境性の向上に貢献します。当社はこれまでハチミツをはじめとするナチュラルプロダクトの製造販売、養蜂を通じた体験型イベントの開催等を行ってきました。そこで築いたノウハウや知見を生かして、『Beeslow Garden』を展開していきます」(船山氏)
 すでに複数のビルオーナー企業や管理会社と連携し展開。中長期的にはデベロッパーとも連携して、再開発におけるミツバチ目線のまちづくりを模索している。
 不動産業界でもトレンドとなっているESGやSDGs。数年後にはビル屋上に養蜂場、というのも「見慣れた光景」になるかもしれない。
<世界に広がる養蜂事例 パリには700の巣箱>
 都市養蜂は世界各国で進められており、フランスのパリでは特に活発であり、ヴァンドーム広場、オルセー美術館など歴史的建造物の屋上にミツバチの巣箱が置かれている。2017年5月時点でパリ市内に700個もの巣箱がある。

東京建物 SBT認証取得
 東京建物(東京都中央区)は今年6月に策定した脱炭素社会の実現に向けた温室効果ガス排出量削減目標が国際的な気候変動イニシアチブであるSBT(Science Based Targets)イニシアチブより「SBT」の認定を取得したと発表した。
 SBTイニシアチブはCDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)によって2015年に設立された国際的な気候変動イニシアチブで、世界の各企業・団体が設定する温室効果ガス排出削減の目標がパリ協定の求める水準に整合しているかどうかを審査し認定する機関。パリ協定は世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑える、または1・5℃に抑えることを目指す。
 同社グループは気候変動が最も重要な社会課題の一つであり脱炭素社会の実現に貢献することは社会的使命であるとの認識のもと、東京建物グループが取り組むべき重要課題の一つと位置付けている。21年6月に19年度を基準年として30年度までにCO2排出量を4割削減する温室効果ガス排出量削減目標を策定。当該目標がパリ協定の目標達成の水準に整合しているとして今般認定を取得した。
 不動産業界での認定は三井不動産、三菱地所、東急不動産ホールディングス(SBT1・5℃水準)などの大手デベロッパーがこれまでに認定を取得している。

PAGE TOPへ