不動産トピックス

【今週号の最終面特集】オフィスの食事環境における新たな動き

2021.07.19 11:27

テレワークに対応する置き食品
医療・福祉等のライフライン関係のワーカーに需要増加

 コロナ禍以降、改めてサービス内容を高く評価されたのが「置き食品」だ。外出を避けて購入でき、健康に配慮したメニューも揃えている。テレワークや在宅勤務にも対応したサービスの拡充を図っており、急速に普及している。

ボックス設置は無料 個人で代金を支払い
 2016年に江崎グリコ(大阪市西淀川区)の子会社として誕生したグリコチャネルクリエイト(大阪市西淀川区)は、置き菓子サービス「オフィスグリコ」を展開してきた。先月14日からは、新たに「どこでもオフィスグリコ便」を開始した。
 2002年3月より開始した「オフィスグリコ」は、主にオフィス等の職場向けに菓子・食品・飲料等を提供する置き菓子R方式のサービス。企業側は職場内に専用ボックスを設置するだけであり、購入は個人で商品の代金を支払う仕組み(現金かQRによる電子決済が可能)。ボックスの設置料金は無く、冷蔵庫を設置する場合は電気代だけが掛かる。利用者からは「仕事の息抜きにお菓子を食べ、リフレッシュできて効率が上がった」や「お菓子を通じて職場のコミュニケーションが活性化した」等のメリットがあるとのこと。また東日本大震災以降は、ローリングストックのできるBCP(災害備蓄)として。コロナ禍においては、エッセンシャルワーカー等が外出を避けて菓子等が購入できるサービスとして注目を集めている。これまでに首都圏・中京・近畿・九州エリアの主要都市で規模を拡大しており、現在全国のコンビニよりも多い約10万台のサービス拠点を保有する。
 オフィスグリコ事業部の中山和士氏は「医療・福祉従業者をはじめとするエッセンシャルワーカーの利用だけでなく、プロジェクト等の立ち上げで時間が惜しいワーカーや終日オフィスに詰めて集中したい場合等に、ビルの外や低層階まで足を運ばなくともお菓子やご飯を購入できる時間の節約に良いことが好まれています」と利用者の反響について語った。ただ同サービスは、スタッフが定期的に訪問して商品管理や代金回収を実施する。サービスを提供できるエリアが限定されており、昨今は感染リスク等を危惧する企業も増えてきた。その様な状況で対応できるサービスが「どこでもオフィスグリコ便」だ。

自身でセッティング 訪問しない販売方法
 「どこでもオフィスグリコ便」は職場に専用ボックスや商品を発送し、利用者自身でセッティングする「訪問しない」販売方法である。QR決済による支払いに限定することで、従来対応できなかったエリア外や部外者の立ち入りが許可されていない環境でも利用することができる。導入や運用にあたって企業負担は無料で、30名以上在籍している職場であれば沖縄・離島を除く全国どこでも申し込みが可能だ。決済方法は「PayPay」、「d払い」等のQR決済のみ可能。現金を使用しないため管理者の負担軽減にも繋がる。
 中山氏は「昨今はお菓子だけでなく健康を意識した食品・飲料の取扱いや、契約企業様の在宅従業員に向けた商材、例えば誕生日を迎える従業員や社内での表彰、インセンティブ等の福利厚生サービスとして『アニバーサリーボックス』の商品も扱っており、在宅勤務ならではの孤立や孤独感の解消、コミュニケーション不足の解消等に生かすことができます。使い方次第で従業員の充実感が満たされ、退職者を防ぐことにも繋がります。どこでもオフィスグリコ便は、今年12月末までで3000カ所を目指し順次拡大しております」と語った。

1品100円の総菜 レンジで温めるだけ
 OKAN(東京都豊島区)は2014年3月から、置き型社食サービス「オフィスおかん」を展開してきた。都心のオフィスビルで働く「ランチ難民」を救うサービスとして注目を集め、後の働き方改革や健康経営等の社会的風潮と相まって導入実績も伸びている。
 置き型社食Rサービス「オフィスおかん」は、1品100円の健康惣菜を冷蔵庫から出して電子レンジで温めるだけで社食になるサービス。冷蔵庫と専用ボックスを設置するだけと導入しやすく、現在全国2500拠点以上で導入されている。従業員の食事支援や満足度向上、採用への活用等を目的に、食堂設備が設置できないオフィスビル、工場、病院等での採用が多い。「オフィスおかん」の特長は、管理栄養士監修のもと、旬の食材を使った和中心の惣菜を独自で開発していること。賞味期限は30日以上と長く、廃棄ロスも非常に少ない。惣菜の他、ご飯系、パン、スープ類等も販売しており豊富なメニューも強みである。また50cm四方の小型冷蔵庫がベースの自動販売機タイプも販売する。「おかんpay」というキャッシュ決済アプリを開発しており、スマホを使用した購入・決済も手軽にできる。持ち帰って夕飯やお弁当にも活用できるなど使い勝手も良いため、10~60代と幅広い年齢層に好まれている。
 代表取締役CEOの沢木恵太氏は「当初は都心のオフィスエリアで見られたワーカーによる『ランチ難民』を救うサービスとして注目を集めましたが、開始当時は『ブラック企業』が社会で問題となっており、社内の福利厚生や従業員の健康といった視点からも大きく注目されました。実際、採用した企業内においても導入前と導入後で大きく変化があったようです。主に健康への意識変化やコミュニケーションの活性化、子育て世帯の食事準備の負担軽減等で、また『ホワイト500(公的に認められた健康経営優良企業)などへの食事項目としての申請・発信の活用』や『人材採用時のセールスポイント』にも繋がったと聞いております」と導入のメリットについても語った。

感染予防で食堂廃止しオフィスおかんへ変更
 そんな同サービスも昨年4月の緊急事態宣言以後、オフィス出社減少を理由に休止・解約をする企業が相次いだ。だが同時に「外出への不安」や「感染予防」を理由に導入する企業もあり二極化が進行。また食堂設備のある企業が食堂を廃止し、稼働率の低下や感染予防を理由に「オフィスおかん」へ切り替えるケースも登場した。更に同社ではテレワーク及び在宅勤務を採用する企業向けに、昨年5月から「オフィスおかん仕送り便」を開始した。沢木氏は「仕送り便は、これまでオフィスへ届けていた一食分の食べきりサイズの惣菜を、毎月プランに応じて従業員の自宅に配送するサービスです。社食同様、福利厚生として導入する企業があり、サービスのシステム利用料金の負担も企業持ち。出社時は『オフィスおかん』、在宅時は『仕送り便』と両方使う企業もあります」と仕送りサービスの内容についても語った。
 テレワークや在宅勤務は、感染症対策や理想的なライフワークバランスの実現、コスト削減等を利用に導入した企業が多いと思われる。が、異例の事態で緊急的に導入した企業や未だテレワーク等の環境及び制度が整っていないことも多く見られ、中には長引く在宅勤務によるフィジカルヘルス・メンタルヘルスの悪化や育児家事の負担増加も問題となってきた。オフィスおかんはこれら課題解決と共に、「優秀な人材確保」といった採用面にも活用できる。テレワークの普及した現状において、重要度の増しているサービスではないか。

ビルオーナーの視点
手軽に買えてテナント満足度の向上にも
髙菱商事 代表取締役社長 髙橋正晃氏
 当社が運営しておりますオフィスビル「G―SQUARE上野」では「置き食品」を導入しています。サービスを導入したきっかけは入居テナント様からの要望としてあり、あるコンビニエンストア系のサービスを採用しました。当初は「周辺にはコンビニも多く、需要は限定的では」と懐疑的でしたが、想定以上に需要がありました。各フロアの休憩スペースに設置しているので手軽に買えることが好評いただいているポイントのようです。実は最近、サービスの切り替えを行う必要があり、いくつかのサービスを比較検討することがありました。ポイントは「お菓子がある事、カップラーメンがある事、定期的に取り換えて頂き賞味期限切れが起きない事、ビル側負担が少ない事」と考えています。

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