不動産トピックス

【今週号の最終面特集】新しい形の街の育成事業 大塚発展の原動力に地元オーナーの姿

2021.05.06 11:49

地元オーナー・山口不動産の「再華再誇」事業 大塚の活性化・助力に取り組む
「ironowa hiro ba」竣工
 不動産デベロッパーだけでなく、地元地域の活性化や魅力形成に取り組む不動産オーナーがいる。不動産の賃貸業や仲介業と言ったビジネスを行いつつ、主眼は地域の魅力形成とその魅力を外へ発信すること。単なるビルオーナーとは違った目線とバイタリティで、豊島区の大塚界隈が今後どの様に変化をしてゆくのか注目だ。

ロータリー及び広場のネーミングライツ取得
 東京都豊島区のJR「大塚」駅周辺をはじめとする“大塚界隈”は、大正時代、芸者屋等が軒を連ねた東京最大規模の「花街」として栄え、来街者で賑わう繁華街としても機能していた。だが戦後、月日を経て街の様子も変化していき、現在の様子となった。その大塚をかつての華やかで賑わいのある街へ再び甦らせ、また現在の暮らしやワークスタイル等も意識し時代に適した地域の活性化・助力に取り組む地元企業がある。駅北口に本社を構える山口不動産だ。
 山口不動産は同地域を中心に不動産事業を展開する。特にJR「大塚」駅北口周辺には「ba」と命名した不動産を複数棟所有し、現在まで「ba01」~「ba07」まで開発してきた。「ba01」では、星野リゾートの新たなブランド「OMO5東京大塚」を誘致して話題となったことも記憶に新しい。が、同社の核となる事業は単なる不動産賃貸業や仲介事業等ではない。タウンマネジメントや街づくりといった、街の活性化及び魅力の形成である。それも行政や商店会などが行う整備事業や街づくり活動、単なる利回り重視の事業とは大きく違い、自社目線での「面白い」や「楽しい」にプライオリティを置いた街の活性化であり、同社では「再華再誇(さいかさいこ)」事業として取り組む。
 代表的な取り組みで直近の話題と言えば、駅北口前のロータリー及び広場のネーミングライツだ。3月27日、同社がネーミングライツを取得した「ironowa hiro ba(いろのわ ひろば)」が竣工。タクシーや車のロータリー交差点上にはサイネージを内蔵した大きなリングのモニュメントを設置し、夜間には光る5色のカラーリングで広場を彩った。モニュメントは「光のファンタジー」と命名し、チームラボ出身のデザイナー・穴井佑樹氏がデザインを担当。モニュメントの光は季節や国際的なイベント(スポーツイベント等)に合わせて変化を加え、駅の乗降者や来街者を迎えることも意識した。
 代表取締役CEOの武藤浩司氏は「『ironowa hiro ba』の『iro(色)』は五感や多様性を表現し、『wa(輪)』は人と人との繋がりを表現しました。様々な個性やバックグラウンドを持つ人々が集まり、手を取り合って主体的に暮らせる街にしたいという想いを込めています。またネーミングライツの費用は広場の維持費や美観等々も含めた管理費となります。駅前は来街者などが街を訪れた際の玄関にもなるので、見栄えや温かみを表現し、かつその環境を維持し続けることで街のブランド化定着も実現します」と話す。
 また他の取り組み事例に「矢羽」でデザインされたサイネージ付き看板の設置もある。これは街中にある施設の案内看板や通りの標識等を同社が費用負担で設置したケース。ボタンを押すと矢羽が示す通りの電飾が灯り、明るくカラフルに通りを彩った。「何故不動産オーナーが費用を負担してそんなことを」と思う方もいるかと思われるが、これも自社目線での「面白い」や「楽しい」を基準とした魅力づくりの一環であり、同地を訪れた豊島区の高野之夫区長や、地元の小さな子供を連れた親子からとても好評であるとのこと。大塚に暮らす人・訪れる人の双方の目線を意識した取り組みである。

運営・プロデュースも兼ねたテナント誘致
 更に飲食店の運営やプロデュースも兼ねたテナント誘致も実施する。武藤氏や同社スタッフなどが大塚へ誘致したい企業及び店舗を呼ぶことで、街の特長付けに繋げており、更にはその流れを連鎖する形で魅力的な店舗の開店・開設へと形成させる想いがある。昭和の面影を残す店舗兼住宅の古民家10棟が連なる「ba02」は、建物の雰囲気を生かしてリノベーションし、「東京大塚のれん街」としてオープン。賃貸マンション「ba03」は、入居者が利用可能なルーフトップテラスやシェアカーサービスを備える。2020年に竣工した「ba05」には、靴磨き世界チャンピオン・長谷川裕也氏が立ち上げた靴修理店が入る。最上階には、焼き鳥店で初めてミシュランガイド一つ星を獲得した目黒の名店「鳥しき」で修業した店主の焼き鳥店がオープン予定。内装は隈研吾建築都市設計事務所出身の設計士に依頼し、ビジネスパートナーや友人に「行ってみたい!」と思わせる店づくりを目指した。同取り組みによって魅力的な店舗が集積し、ビル及び近隣地域のブランド価値が向上することで、大塚を訪れる人や住民の増加にも貢献する形だ。

日常のあらゆるシーンに魅力的な場の提供を
 武藤氏は「これらに限らず山口不動産では、HPの拡充やイベントの企画・告知、更に、Instagramフォロワー23万人を超えるフォトグラファー・保井崇志氏が大塚の街と人の姿を切り取った『ironowa snap』の掲載も行っています。当社が街の情報発信の役割も担い、当社保有のビルや入居する店舗等は人の集まる交流拠点といった形です。この様な取り組みを続けて大塚の良さを更に形成させて伝えていきます」と語った。これらの取り組みに込められた想いは、同プロジェクト名やビル名に掲げられた「ba」という文字に表されている。「ba」とは、「being&association」の略。住む・食べる・泊まる、日常のあらゆるシーンに魅力的な場を提供したいという想いとともに、「そこにいれば、つながりを感じる場へ」という意味が込められているのだ。この姿勢こそが、昨今急激に発展してきた大塚の原動力とも思われる。


ウェブ媒体やSNSで飲食店やイベントの情報を発信
山口不動産 代表取締役CEO 武藤浩司氏
 当社の取り組みは、所有地に建物を建築しテナントを入れて終わり、ではありません。「ba01」に入っているカフェダイニング「eightdays dining」と卓球ラウンジ「ping―pong ba」は自社グループで運営しており、人と人とがつながる場づくりを行っています。今春からはウェブ媒体「note」にて私、武藤のブログ公開を始めたり、インスタグラムとツイッターの自社アカウント「大塚color」で大塚の飲食店やイベントの情報を発信したりして、このプロジェクトに込めた想いやワクワク感を伝えています。ぜひ大塚の街を訪れて、まちの体温が上がり始めた大塚を体感して頂ければ嬉しいです。

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