不動産トピックス

【今週号の最終面特集】コロナ禍でも勝算あり「逆張り」戦略に迫る

2021.04.26 11:30

目利き力生かして商業ビルや宿泊施設に買い コロナ禍を乗り越えV字回復の需要に先手

 コロナ禍で商業、ホテルは苦境に陥る。そのなかでも活発に投資を進める企業もある。彼らを動かすのは「目利き力」だ。

店舗不動産ファンド事業 20年3月から立ち上げる
 店舗リース事業を中心に不動産事業、工事事業などを手掛ける店舗流通ネット(TRN、東京都港区)。店舗リースにおいてはこれまで3500件以上の出店を支援。同社営業マンは経営者や店舗開発の責任者などの出店可否を決められる人とコネクションも強い。
   そのなかで昨年3月よりスタートさせたのが店舗不動産ファンド事業だ。駅前商業立地の店舗ビルを対象に取得、あるいは自社で開発を行いファンドに卸す。すでに1号ファンドは運用中であり、近々第2号ファンドを70億円規模で組成する予定となっている。
 店舗不動産ファンド事業部長の金子貴是執行役員はこの事業を始めたいきさつについて次のように話す。  「店舗リース事業における当社リスクは空室、空家賃が発生することです。名古屋の柳橋中央市場や四日市などでビル1棟を設備改修やリノベーションをかけてマスターリースした実績がありますが、投資効率は高いもののやはり空中階の空室リスクは付きまとう。いっそのこと当社の培ったリーシング目線を基に、サインプランや導入などリーシングのしやすい建物を自社で開発した方が、運用もしやすい上、出口戦略が描きやすい。とはいえ、不動産の保有にはB/Sの観点からも限界があるため、ファンドを組成しオフバランス化することで永続的に開発を続ける。これらのことを踏まえて当社が取得、ないし開発した物件を基に店舗不動産ファンドを展開していこうと立ち上がりました」

自社開発ビル「TRUNK」来年4月には麻布十番にも
 自社開発した商業ビルは「TRUNK」シリーズとして展開している。これまでに「名古屋」駅から徒歩1分の「TRUNK椿町」、愛知県刈谷市の「刈谷」駅から徒歩3分の「TRUNK刈谷」、また大阪市の「福島」駅から徒歩3分の「TRUNK福島」の3物件がある。来年4月竣工予定で「麻布十番」駅から徒歩2分の場所で開発を進めている。
 事業で取得、ないしは開発する物件規模について「貸床面積30~50坪が基本線」(金子氏)とする。「大手の店舗事業者も小箱化が進んでおり、出店需要の最も高いボリュームゾーンが駅前商業立地でこの面積の物件なのです。景気の変動期は新たな業種業態が生まれる時期でもあり、新規開業者でも手を出せる面積でもあります」と説明する。出店意欲の高低やその理由をヒアリングし、ストックしてきていることの強みはここでも生かされている。そしてエリアは東京、名古屋、大阪をはじめとして全国主要都市をカバーしていく考え。なかでも東京は目下注力しているエリアだ。

24年にはREITに 運用資産規模500億へ
 ファンド事業は昨年立ち上がったばかりだが、小規模でのファンド組成を繰返し、2024年にはREITの組成も目指していく。金子氏によると「証券会社からは『コロナ禍にあって商業アセットはリスクとの見方が大半ではあるが、TRNグループは店舗不動産に特化してきたからこそ、コロナ禍でも面白い投資商品になる』と評価して頂いています」という。この事業を推進していくことで、他の不動産会社が後続してきて、マーケットが活性化していくことも期待する。
 当面の目標は取得・開発の規模を年間100~150億円とし、REIT組成時には運用資産規模を500億に乗せること。「物件の売却価格はあまり下がっていませんが、これまでにマーケットに出てこなかったようなものも出てきているのが現状です。価格を見極めながら、適切に投資を進めていきます」(金子氏)。
 業界内でも独特な立場を築いてきた店舗流通ネット。ファンド事業の進展に期待が募る。

昨年7月に民泊参入 逆張りも中長期で構え
 むすびて(東京都港区)は不動産活用とIT・マーケティングを掛け合わした領域で事業を展開している。民泊・旅館・レンタルスペースなどの開業支援から、空室期間の長い物件や遊休不動産の収益化、オウンドメディア運営などによるウェブマーケティング支援などを行う。
 そのなかで同社では昨年、民泊物件を居抜きで賃借し、民泊運営をスタートさせた。7月に福岡市、11月には箱根で施設をオープンさせている。
 民泊市場は逆風が吹く。コロナ禍でインバウンド需要がほとんどなくなったことは大きすぎる逆風。それ以前からも住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されたことで、それまでの投資家は妙味をなくしたとして撤退するケースが多くあった。
 一見、最大の「逆張り」に見えるタイミングでの民泊参入だが、代表社員の鈴木教平氏は「中長期的にはインバウンド需要は回復し、そこまで継続できた民泊施設は投資妙味を得られるでしょう」と話す。このような見立ての理由として挙げるひとつが、経済成長を続けてきたアジア諸国が地理的に近いことだ。魅力的な観光スポットが多いことも、コロナ後の訪日観光客数回復の見方の論拠だ。
 また現在、多くの民泊事業者などが撤退しているのも「好機」とみる。「かなり供給が細っている状況で、需要過多になるものとみています」(鈴木氏)。現況を乗り越えられれば十分に収益をあげられると読む。
 ただ直近では厳しい状況が続く。稼働率は直近の3月で福岡50%、箱根は40%。緊急事態宣言が発令されるなど、感染症が拡大してくると20%まで落ち込むこともある。収支としては「GoTo効果があった昨年11~12月や今年3月は黒字を確保」したものの「投資期間全体としては赤字」だと明かす。そのなかでマンスリーマンションなどとしても利用できるなど、複数の活用法方で稼働状況の向上策も打つ。
 同社では来年4月頃には、宿泊市場全体の稼働率が一定数回復すると期待している。国内の感染者数の推移やワクチン接種状況にも左右されるところ。ただ先行する欧米やイスラエルといった国では、新規感染者数が落ち着きを見せている。火中の栗を拾って、コロナ後の果実を取りにかかる。


物件改修時は遵法性確保が必須
店舗流通ネット 執行役員 店舗不動産ファンド事業部部長 金子貴是氏
 駅前商業立地で、貸床面積30~50坪クラスのビルの場合、所有者が個人であることが多く、築年数も30年以上経過しているものが多くあります。ファンドへの組入れには遵法性が整っていることが大前提ですが、旧耐震や違法増築、消防法に違反した構造になっているなど、遵法性への認識が低いのが実情です。当社では1級建築士や施工工事のスタッフを自社で抱えていますので、法的治癒のための是正工事のノウハウを得ることが出来ました。 店舗不動産の法的治癒には多くの手間と費用、時間がかかる反面、1物件当たりの規模が一般的なオフィス、レジデンスと比較し小規模であるため、証券化が進んでいない分野でした。
 これら法的治癒を通じ、我々が商品化プロセスを確立できれば、世の中の駅前の店舗不動産の安全性が担保され、より安心、安全な街づくりに貢献できると考えています。  これまで培ってきたリーシング力や店舗のトラブル対応、法的治癒からファンド組成までのプロセスなどのノウハウを、自社の資産だけでなく外部の店舗不動産にも波及し、コーポレートスローガンである「明日の街、もっと楽しく」を実現するため、今月より店舗不動産に特化したビル管理サービスの提供を開始する。

世相を反映するテイクアウト需要
ミネギシビル管理 代表取締役社長 峰岸直也氏
 渋谷・明治通り沿いで当社が所有する「第1ミネギシビル」の1階には、昨年10月末に牛乳食パン専門のショップがオープンしました。この店舗は足立区の老舗牛乳販売店が新業態として始めたもので、イートインスペースはなく持ち帰り専門です。当ビル1階には過去に外食チェーンが手掛ける弁当販売店が入居したことがありますが、その際はあまり長続きせず、食品販売店が入居するのは久しぶりのことです。オープンから半年が経ちますが、近隣にお住まいの方が購入されるほか、お土産として購入される方も多く、テイクアウト専門店はコロナ禍の現代の時流にマッチした業態なのだと感じました。来月には東京タワー内にも出店されるとのことで、店内での飲食を伴う業態は依然厳しいものの、テイクアウト主体の業態は高い需要に支えられているようです。渋谷の賃貸ビル市況は新型コロナ感染拡大まで非常に良好な状態で推移してきました。現在のビル市況はオフィス・商業ともにその反動が大きく、コロナ禍が収束すれば商業店舗には人が戻ってくるかもしれませんが、企業の間ではリモートワークが定着し、オフィスはダウンサイジング需要が主流になるのではないでしょうか。

運営施設数増加へ積極姿勢
むすびて 代表社員 鈴木教平氏
 コロナ禍によって投資家や事業者は民泊事業から撤退する動きも多くあります。一方でコロナ禍による訪日需要消滅はあくまでも一過性のことで、遅かれ早かれ反転すると考えます。当社では今後も物件を見極めながら運営する宿泊施設数の増加に努めていくとともに、中長期的には運営代行業やツール開発業の展開も検討中です。


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