不動産トピックス

クローズアップ 環境建材編

2021.04.12 10:36

 SDGsが企業活動において不可欠な要素となるなかで、不動産業界でも同様の取り組みが広がっている。昨今、「木造ビル」などにも注目が集まるが、建材という観点から環境負荷を低減したビル経営を目指すのも一手だ。

環境建材・日射を遮るステンレスカーテン 2月発売の「パンチングウェーブ」引き合い順調
 建築物の金属製内外装を手がける菊川工業(千葉県白井市)は今年2月、日射を遮る環境建材として、波型ステンレスパネル「パンチングウェーブ」を開発・販売開始した。
 ステンレス材に細かなパンチングを施したウェーブ形状の外装パネルで、ブラインドや日除けルーバーの機能もある。
 同社のショールームを兼ねたサテライトオフィスでも使用されている。ガラス張りの上から、パンチングウェーブをカーテンのように施工しており、デザイン性の高いオフィスとなっている。
 ステンレスを加工し、波型の曲線とすることで柔らかい丸みが出る。パンチングで穴が開いているステンレスは、直射日光を遮り、屋外から内部の様子は見えにくいが、逆に建物内側からは屋外が見え、マジックミラーのような役割もある。 
 太陽光発電アドバイザーでもあるKCT建材部次長の奥野木宏一氏は、「環境建材は10年以上前から取り組んでいる分野です。日射しを遮り、夏の温度上昇を抑制できます。環境建材チームはもともと、太陽光発電システムをやっていました。今回の『パンチングウェーブ』はその延長線上で、日焼けルーバーのようなご利用を提案しています。銀座界隈のブランドショップの改修工事などで、元々ある外壁の更に外側にこのようなパンチングウェーブを施工することは前々からやっていました。中から外を見た感じは透けていますが、外からは見えない、ちょっとおさまりを考えて標準化しよう、という流れですね。穴のサイズなど何度か試作を重ね、比較的つるっとした感触のパンチング加工としました」と語る。外壁を覆い、建物の内側から見ると網戸のように屋外が透けて見える。
   外壁をカバーすることで建物の傷みも減少でき、ビルのバリューアップにもつながる。「オーナーさんから直接、この『パンチングウェーブ』をビルに施工してほしいとお問い合わせも増えています。目標は初年度、1000万円以上を目指しますが、そのほか、この商品を元に様々なバリエーションなどのオーダーメイドに発展していければと思います。毎月、100件近くの引き合いも頂いており、今後はマーケティングにも注力していきます」(奥野木氏)。
 同社ではほかにも様々な加工製品のバリエーションを拡大しており、鏡面ステンレス材に波紋模様のエンボス加工を施した「水面(みなも)パネル」をブランド化。インテリア工事の需要拡大を受け、「KIKUKAWAオリジナル・マテリアル」の販売促進を強化する。

淺沼組 「GOOD CYCLE PROJECT」スタート 人間にも地球にも良い循環目指す
 淺沼組(大阪市浪速区)は「人間にも地球にもよい循環」をテーマにした循環型プロジェクト「GOOD CYCLE PROJECT」を4月1日よりスタートした。
 現在、「いかに環境負荷を抑制し、持続可能な事業を行うか」が課題となっている。そのなかで同社では建設事業における環境に対する責任から、人間にも地球にもよい循環をつくるため、リニューアル事業コンセプト「ReQuality」を立ち上げた。
 これは人間の環境だけでなく、その先の地球環境のことも考えることで資源が循環し、そこで生活する人たちの巡りも良くなる。そのような好循環を同社ではリニューアル事業を通じて生み出していくというコンセプトだ。
 同社では今回のプロジェクトを通して、クラウドファンディング(GOOD CYCLE PRODUCT)、リニューアル事業(GOOD CYCLE SERVICE)、名古屋支店リニューアル(GOOD CYCLE BUILDING)、オウンドメディア開設(GOOD CYCLE TALK)の4つのアクションを展開していく。クラウドファンディングでは、廃棄予定の吉野杉を資源と捉えてプロダクトにデザインした杉の香りのインテリア「ヨシノチップス」が応援購入可能。こちらは「MAKUAKE」上で6月29日まで行っている。また同社名古屋支店のリニューアルでは築30年の自社ビルを「ReQuality」のコンセプトに則り、「GOOD CYCLE SERVICE」として提供する既存躯体・空間の有効活用の可能性を示すとともに、建設残土をアップサイクルした版築ブロックや土壁、吉野杉を使用したファサードなどの技術や素材を活用したオフィスビルとなる。空間ヘルスケアの知見なども活用していく。
 新しいビルの竣工予定は2021年10月を予定している。

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