不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2020.12.21 10:54

旅館・ホテルのM&Aが活発化 後継者不在で小規模施設の売却増加
写真館が宿泊業へ 相乗効果を見込む
 ビジョナル・インキュベーション(東京都渋谷区)は事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」を運営しているが、このほど同サイトを通じて、ブライダル事業・写真事業などを運営する小野写真館(茨城県ひたちなか市)が、高級温泉旅館「桐のかほり 咲楽(さくら)」(静岡県賀茂郡)をM&Aで取得した。
 小野写真館は、事業の核となるフォトスタジオから始まり、結婚式場運営のブライダル事業などで順調に業績を拡大してきた。しかし、コロナ禍で既存事業が打撃を受けるなか、同社はビジョンとポートフォリオを再考。写真を中核に置きながら人が密にならない新事業を模索。その可能性のひとつとして選んだのがM&Aだった。
 ビズリーチ・サクシードを通じて小野写真館が出会ったのが、静岡・伊豆で予約の取れない旅館として有名な「桐のかほり 咲楽」。部屋数は4つの小規模施設だが、小野写真館は、この旅館に「サービス業」という共通点を見出したことで、事業譲渡によるシナジー効果を期待したのだという。
 小野写真館は、「宿泊×写真」と掛け合わせることで、通常営業に加え、旅館を全館貸し切りにした親族だけの挙式や還暦祝い、銀婚式、金婚式など祝いの場を設け、カメラマンが1日密着してアルバムを制作する新たなプランを提供する予定だ。
 一方、「桐のかほり 咲楽」は、オーナーが高齢になってきており、後継者もいなかったことから、売却を模索していた。
 今回マッチングを仲立ちした「ビズリーチ・サクシード」は、譲渡企業と譲り受け企業をオンライン上でつなぐ事業承継M&Aプラットフォームだ。譲渡企業は、同サイトに、会社や事業の概要を匿名で登録し、譲り受け企業は、その情報を検索して閲覧することが可能。これにより、譲渡企業は経営の選択肢の一つとして事業承継M&Aを早期から検討できるため、経営者の選択肢が広がっている。
 譲渡企業は、登録から案件成約時まで、本プラットフォームの利用料は無料。そのため、コストを気にせず、企業や事業の譲渡を安心して検討できる。また、譲渡企業から相談を受けたM&A仲介会社や金融機関等も、同様にこのプラットフォームを無料で利用することが可能だ。
 譲り受け企業は興味をもった譲渡企業へ直接アプローチできるため、譲渡企業にとっては、潜在的な資本提携先の存在や、自社の市場価値を把握するきっかけになる。2017年11月下旬にサービスを開始し、2020年12月現在、全国の譲渡案件が累計7200件以上登録され、累計譲り受け企業は6300社以上にも上る。
2021年事業承継元年買収チャンス到来
 同サイトでは、このほどこのサービスを利用している譲り受け企業とM&Aアドバイザーを対象に、「M&Aに関するアンケート」を実施。
 これによれば、回答者104件のうち83%が「2021年にM&A市場は活性化する」と回答した。また、譲り受け企業の76%が「コロナ禍においてM&Aはチャンスだと捉えている」、87%がコロナ禍でても、M&Aを前向きに検討していることが分かった。実際、コロナ禍でも、同サービスの直近3カ月間の成約数は前年同期比で1・9倍になっているという。
 譲り受け企業がコロナ禍でもM&Aを前向きに検討するのは、「コロナ禍の経営への影響にかかわらず、M&Aは必要であるため」と51%が回答し、自社の経営にも影響があるもののM&Aには意欲的と考える経営者が多いのがわかる。「M&Aによって技術者および経験者も得られるため、M&Aを通じた新規事業を積極的に立ち上げたい」、「来年は今年以上にチャンスと捉えて積極的に事業多角化の手段として活用したい」といった声が聞かれた。
 一方、M&Aアドバイザーに、「コロナ禍を受けて、以前と比較してどのような譲渡希望理由が増加していますか?」と複数回答可で聞いたところ、57%が「業績不振」、43%が「資金確保」が占め、38%が「後継者不在」という回答があった。
 ビズリーチ・サクシード事業部前田洋平事業部長は話す。
 「民間調査会社の調査によると、2020年1~9月に、後継者難を理由に倒産した中小企業が前年同期に比べ約1・5倍の278件でした。これは、コロナ禍で、後継者未定の問題がより加速しているものと思われます。今後、中小企業のM&A件数は急増し、2021年は『中小企業の事業承継M&A元年』になると予想しています。現在の不確実性の高い経済環境において事業を成長させ続けるためには、経営のパートナーと出会えるM&Aを経営の選択肢とすることが必要でしょう」。
 特にコロナ禍では、ホテルや旅館を売却したいというニーズも多く、2021年以降こうした施設でのM&Aがさらに活発化していくとみられている。

ソラーレホテルズアンドリゾーツ 「アンドルームス」ブランド京都に
 ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ(東京都港区)では「ホテル・アンドルームス京都七条」(京都府京都市)を2021年3月6日に開業させる。
 同ホテルは、地下鉄烏丸線「京都」駅より徒歩5分に位置し、京都観光の拠点としての利用を期待している。  建物は地上5階建て、客室数83室。大浴場、コインランドリー、喫煙室、自動販売機、製氷機、電子レンジ、全館無料Wi―Fi等を完備する。
 障子など和の風情を取り入れた客室は、スタンダードダブルからプレミアツインまで7タイプ、1室最大3名まで宿泊できるためグループやファミリーでも利用可能だ。 
   同社では“一泊のストーリーを充実させる「&」がある”というコンセプトのもと、「ホテル・アンドルームス京都七条」ならではのサービスを提供していく考え。1階のカフェ「ウニール 京都店」ではスペシャルティコーヒーを提供する。またカフェの朝食を指定の時間に届ける「ブレックファスト・デリバリー」も導入する。広々とした石造りの和モダンな大浴場は午後3時から深夜2時まで、午前6時から10時まで入浴できるため、利用客の都合に合わせて利用可能だ。
 同社は「雨庵 金沢」「ザ・スクエアホテル」「ホテル・アンドルームス」「ハタゴイン」「ロワジール」「ロイヤルパインズホテル浦和」「チサン」などのホテルブランドを有し、国内51カ所、海外1カ所、7422室のホテル宿泊部門および売店部門・料飲部門・大浴場・スパの運営、アセットマネジメント、フランチャイズ運営などの事業を展開している。

NEXCO中日本 サービスエリアにカプセルホテル
 NEXCO中日本 名古屋支社(愛知県名古屋市)と中日本エクシス 名古屋支店(同名古屋市中区)は、東名高速道路上郷(かみごう)サービスエリアで、24時間営業の簡易宿泊施設「ファーストラウンジ上郷」を12月25日にオープンさせる。ラウンジ付き簡易宿泊施設の設置は高速道路で初めて。
 同施設は、「空港のラウンジのような上質な空間と、幅広い用途に対応できる宿泊スペースの提供」をコンセプト。宿泊や旅で疲れた身体を癒す空間として、客室のほか、ラウンジスペースやコインシャワーなどのサービスを提供する。    客室は全面禁煙で、洗練されたシックで落ち着いた色合いでコーディネートされており、一人ひとりにプライベートな空間を提供する。 
 移動中の休憩や、旅で疲れた身体を癒す空間として設置するラウンジスペースは、宿泊以外の利用者も趣味やテレワークなどで気軽に利用することが可能だ。
 客室タイプはシングルタイプ・ファミリータイプの2種類で、部屋数はシングル20室、ファミリー2室。室内にはベッド、テレビ、デスク、椅子、施設内ラウンジやコインシャワー、コインランドリーを無料で利用できる。
 ラウンジスペースには、コミュニティソファ、テレビ付きリクライニングチェア、区切られたワークスペース。ラウンジ利用者向け無料サービス付き。コインシャワーは男性用5ルーム、女性用3ルーム。

USEN 音楽配信サービスを提供
 USEN―NEXT GROUPのUSEN(東京都品川区)は、ニュー・オータニ(東京都千代田区)が運営するホテルニューオータニ(同)内のウェディングゾーンへ、同社プロデュースによるオリジナルプレイリストを提供する。  
 この取り組みでは、楽曲単位で選曲ができる音楽配信サービス「OTORAKU―音・楽―(オトラク)」の機能を活用し、ホテルニューオータニの要望を踏まえたオリジナルプレイリストをプロデュースすることで、ウエディングゾーンの空間演出をサポートする。 選曲にあたっては、コロナ渦の結婚式を悩む利用者が少しでも明るいイメージを抱けるよう、ポジティブなイメージを持つ楽曲を中心にセレクト。主役の二人が家族や友人とともに、明るい未来と感動を分かち合うことができればという想いも込めているという。  
 「OTORAKU」は、利用者自身が選曲してプレイリストを作成できるため、同社がオリジナルプレイリストを担当することは、業界初の試みだという。

湯快リゾートが老舗宿リブランディング
 湯快リゾート(京都府京都市)は、皇族を始め多くの賓客を迎えてきた「縁起の宿」矢田屋松濤園をリブランディング。
 同施設は1929年創業で、館内の随所に縁起物を配置することで利用客に縁起を感じてもらえるような滞在を提供する。 
 宿泊客の出発時に、干支のお守りを土産として提供する。矢田屋松濤園の木製の札の付いたお守りは宿泊された記念として、宿泊客に福が舞い込むように一つ一つ願いを込めて渡すという。 料理は季節の機微を感じ取り、八節(四十五日)ごとに献立を替え、その時期に最も良い状態のものを、最もふさわしい場所から、土産土法の精神と技術で提供。地元食材「じわもん」から選び、料理人が腕を振るう「立場(たてば)料理」は同施設の名物となっている。

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