不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2020.06.01 15:02

アフターコロナ対応した使い方を提案 客室をテレワーク貸しで収益源に
OYOホテル5連泊特別割引で新プラン
 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発令を受け、オフィス閉鎖や交代制出勤の対応を取り、テレワークを導入した企業が増えてきた。
 一方、テレワークで仕事をするオフィスワーカーは、Wi―Fiのネットワーク環境や仕事をしやすいデスクなどが自宅になく、職場と同じような仕事環境を整えるのが難しいという声も多い。また、同居する家族への配慮や通勤時に交通機関を長時間、頻繁に利用することによる感染予防など様々なニーズが見込める。こうしたことからテレワーク対応のホテルが増えているのだ。
 現在、米国、ヨーロッパ、英国、インド、中東、東南アジア、日本を含む80カ国800以上の都市でホテルを展開しているOYO Hotels&Homesの日本法人、OYO Hotels Japan合同会社(東京都千代田区)では、新型コロナウイルス感染症による影響でテレワーク環境を必要とする法人やビジネスパーソン向けに、平日の月曜日から金曜日の5連泊の宿泊料金を特別に割引するテレワーク応援プラン「Work from Hotel(ワーク・フロム・ホテル)」をスタートさせる。
 同社の客室は、ビジネスタイプのホテルの客室だけでなく、リゾートタイプの客室や「OYO Ryokan」もWi―Fiを完備している。プランは、平日の月曜日から金曜日まで、土曜日チェックアウトとなる。5連泊の1滞在に対して合計1万円の割引が適用される。
 自宅から近いOYOの宿泊施設を平日に長期で滞在してもらうことで、より効率的な仕事を可能にしてもらおうというもの。  「OYO Hotels では、新型コロナウィルスに関連してお困りの皆様に宿泊施設を通してお役に立つことを考えて様々な取り組みをしております。帰国困難者向けの大使館割引きや、医療従業者向けに無料の宿泊提供などをすでに導入しています。今回は法人向けの割引として、テレワーク応援プランをご提供することとなりました。宿泊プランでご利用いただけるOYOの客室は、無料でご利用いただけるWi―Fiをご用意しています。パソコンやスマートフォンをご持参いただけば、ビデオ会議にも対応できますし、周囲の音を気にせずに集中して仕事をすることができると思います」(チーフ・ビジネス・オフィサー 田野崎亮太氏)。
MDIは民泊施設で多様性ある運営模索
 一方MDI(東京都中央区)では、同社が運営する民泊施設の設備に、「テレワーク設備を充実」することで、多様性を持った民泊運営を開始させる。近年の働き方改革により、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方が広がっている。民泊施設に宿泊して、観光のみならず、ビジネスとしての有効活用も可能になる。 
 同社は大田区で25施設の民泊運営をしており、この1施設でスタートさせる。同施設は、JR京浜東北線「蒲田」駅徒歩9分に位置、ワイヤレスインターネット(超高速接続サービスNURO)、パソコンデスク・チェア、空気清浄機、ヨガマット、バランスボール、キッチン、ユニットバス(浴室換気乾燥機付)、洗面化粧台、ウォシュレット付トイレ、Netflix対応フラットスクリーンTVなどを配置する。
「ホテルシェルター」予約サイトを開設
 「HOTEL SHE, KYOTO」などを運営するL&G GLOBAL BUSINESS(京都府京都市)の関連会社で、ホテルの自社予約システムを運営するCHILLNNは、自宅にいることに課題のある方に向けてホテルを貸し出す「ホテルシェルター(HOTEL SHE/LTER)」専用の予約プラットフォームを公開した。
 まずは自社ホテル5施設を掲載しており、今後複数のホテル様の掲載を進めていく。すでに全国230施設、合計5000室超から掲載希望の申し込みが来ており、随時案内をしつつガイドライン作成などを進めていきたいという。
 サイトでは、当初より同社が提案してきた独自の安全基準を取り入れた「ホテルシェルター」加盟ホテルはもちろんのこと、「ホテルで働く」「ホテルに住む」といったウィズコロナ時代に向けた独自のプラン、独自の安全対策を用意するホテルなど、幅広い顧客ニーズに対してホテルを紹介していく予定だ。
 予約プラットフォーム公開に先駆けて、医療監修を受けた独自のホテル運用ガイドラインを用意。社会的距離の維持やウイルス感染拡大防止のゾーニング、徹底した清掃・消毒などの注意点をまとめており、「ホテルシェルター」への掲載を希望するホテルへ配布する。滞在中には専用のLINEアカウントを用意。滞在中の体調不良などに対してもオンライン診療を受けられる体制を整えている。
 「ホテルシェルター」は自宅以外に居場所を求める人々に向けて、安心して滞在ができるホテルを紹介する予約プラットフォーム。家庭内環境に問題があって自宅にいることでストレスを感じる方やスーパーなどで働くエッセンシャルワーカー、電車通勤を余儀なくされているサラリーマンなどに向けて、ホテルを滞在場所・仕事場などとして使ってもらおうというもの。

コロナ禍なんのその アパホテルが新大阪に660室
 アパホテル(東京都港区)は、新大阪エリア最大級の全660室を誇る「アパホテル〈新大阪駅前〉」を開業させた。
 同ホテルは、JR東海道・山陽新幹線、東海道本線、大阪メトロ御堂筋線が乗り入れる大阪有数の交通の要衝「新大阪」駅から徒歩2分に位置。「アーバンリゾート」をコンセプトに、かがり火を焚くなどの演出を施し、2階には露天風呂付き大浴場を設置した。
 客室は機能性・利便性を追求した最新仕様とし、最大4名で利用できるスイートルームの他、デラックスツインルーム・コネクティングルーム等、バリエーション豊富な間取りで、ビジネスのみならず、国内レジャー、インバウンドなど幅広い宿泊需要を取り込んでいく。
 客室は全室禁煙で、高品質・高機能・環境対応型を理念とする「新都市型ホテル」の標準仕様として、全室50型以上大型液晶テレビを設置。館内案内をテレビ画面上に集約表示した「アパデジタルインフォメーション」には、自身のスマホからYou Tubeの動画や写真などをテレビに映すことができる「ミラーリング機能」・テレビリモコンでチェックアウト時間の延長手続ができる「セルフ延長機能」などを備えている。
 その他の全室標準仕様として、ベッド下に荷物の収納スペースを設けたオリジナルベッド「Cloud fit SP(クラウドフィット エスピー)」や、リュックサック等を掛けるフックを設けた多機能姿見を設置、空間を立体的に活用しているほか、照明スイッチ類、空調リモコン等をベッドの枕元に集約し、携帯・スマホの充電に便利なUSBポート・コンセントを枕元に設置している。
 最先端のIT開発として、全予約経路対応、スマホ決済にも対応するチェックイン機に加え、クレジット決済に特化した小型の卓上型チェックイン機を導入。公式サイトで事前にクレジットカード決済をするアプリチェックインを行うことで、当日のチェックイン手続きが大幅に簡素化される為、非接触型のチェックインとして注目を集めている。
 同ホテル開業にあたりグループ代表の元谷外志雄氏はこう話す。
「現在、新型コロナウイルスでインバウンドが激減し大変な時期ではあるが、新型コロナウイルスが収束すれば、日本は観光大国化していくと考える。観光産業とは数年のスパンではなく、数十年のスパンで考えていく必要があり、長い目で見れば観光産業が今後一番の成長産業である。厳しい時ほどピンチをチャンスに変えて、ホテル業界におけるシェアアップを目指していきたい」。
 同グループでは現在、FC、建築・設計中を含め、大阪市内のアパホテルは23ホテル1万453室、大阪府下では26ホテル1万801室を展開している。2025年に開催が決定した大阪万博による需要の拡大を見込み、大阪エリアで大型ホテルの開発に注力しており、今後3年間で、34階建て、全1704室の「アパホテル&リゾート〈大阪梅田駅タワー〉」、39階建て、全2060室の「アパホテル&リゾート〈大阪難波駅タワー〉」の開業も控えている。

カラカミ観光 デジタルトランスフォーメーション化を支援
 カラカミ観光(東京都中央区)では、テクノロジーを活用した業務プロセスのデジタル化を推進するファウンダーズ(東京都渋谷区)と、非接触型次世代ホテルオペレーションシステムの検討に向けた基本合意書を締結した。今後は基本合意を通して、観光産業でのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援していきたいという。
 両社は、長年ホテル運営で培われたオペレーションや知見と、デジタルネイティブな事業活動を実践するスタートアップ企業のノウハウやサービスで、DXを必要とするすべての観光産業の「デジタルシフト」を強力に推進・支援する体制を整備していく計画だ。
 まずは、ホテル・旅館の予約から清掃までのプロセスのオートメーション化、ルームサービスのデジタル化を推進・加速するため、多様な選択肢から最適解の提供と、現実的な運用を提案し、日本のホテル・旅館が培ってきた強みやサービスクオリティを維持しながら、業務特有の甚大な固定費削減をサポートする。まずはカラカミ観光の保有するホテル、運用を開始した後に外販していく。
 新型コロナウイルスにより、観光産業は大きな打撃を受けている。そうした中、終息後の近い将来もまた、同種の有事が起こることも想定し、抜本的な産業構造の見直しが求められている。
 そこで両社は、双方の強みを生かし、観光産業のDXを支援すべく、ポストコロナの時代に即した、非接触型次世代ホテルオペレーションシステムの検討を開始することとなったもの。
 今回作り上げるホテルシステムは、単にオートメーション化を推進するだけではなく、地域におけるホテルを中心としたサービスのオンデマンド化を推進することで、ホテル、旅館のサービスクオリティを上げることも視野に入れているという。

未来の宿泊券 特別割引で販売
 神奈川県の南東・三浦半島随一の温泉リゾートホテル「マホロバ・マインズ三浦」は、未来の宿泊券となる1泊2食付き宿泊前売券を発売。
 今回初めて一般消費者向けに作成・販売された宿泊前売券は、平日用と休前日用の2段階の料金を設けると共に、有効期限を17ヶ月間と長く設定し、多様な顧客のニーズに対応したもの。通常8500円~1万3500円のところ8000円、1万2000円~2万6000円のところ、1万2000円で宿泊が可能となる。
 同館では、下半期も上半期を補う急激な需要回復を期待できないことから、未来に使える宿泊券により、従業員の雇用の確保と旅行業界の活性化を目指して販売が決定された。

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