不動産トピックス

クローズアップ 不動産プラットフォーム編

2019.08.19 14:14

 不動産業界でIT化が進むなかで、賃貸や物件、情報などをやり取りするプラットフォームが立ち上がっている。それらのなかには「外国人」や「空き家」といった近年のキーワードに着目したサービスも多い。今後の事業展望について、彼らはどのように考えているか。

外国人向け賃貸プラットフォーム「AtHearth」展開 入居のハードルをクリアに
 2018年末の在留外国人273万人超。在留資格別でみると、技能実習や技術・人文知識・国際業務の2つのカテゴリーで年20%弱伸びる。そのなかで、不動産業界での受け入れ態勢の整備が課題となっている。
 そこでアットハース(東京都千代田区)が展開しているオンラインを活用した賃貸契約のための多言語対応プラットフォーム「AtHearth」が注目を集めている。同社代表取締役社長CEOの紀野知成氏は大手商社を退社後に、これまでコンセプト型の賃貸物件300棟を企画・運営。並行してプラットフォームの設立に尽力。これまで数々のアクセラレーションプログラムで採択されてきて、今年2月よりサービスをスタートさせた。
 この「AtHearth」は在留外国人が賃貸物件に入居する際のハードルをクリアにしていく。入居者向けには物件検索から問い合わせ、内覧・申込、支払・成約、入退去、そしてオーナー向けには企画・施工、集客、仲介、賃料管理、運営管理までサポートする。
 このようなサービスを展開する紀野氏には原体験がある。「幼少期に米軍基地内に住んでいたことがあり、大手商社にいた頃も長期でフランスに出張することがありました。海外で日本人が物件を借りるのが苦労するのと同様に、外国人が日本で物件に入居するにも大きなハードルがあります。それを取り除いていきたいという思いから、『AtHearth』を立ち上げました」。
 ターゲットとなる層はミドルからアッパー。家賃は月額7万5000円~29万円ほどだ。紀野氏は「超富裕層向けにはサイトがありますが、中流層向けは空白となっている分野です」と指摘する。宣伝活動はこれからだが、外国人向け賃貸物件展開などの実績があることから外国人からの問い合わせも増えている。大手の物件管理会社にとっても注目度は高い。人口減少が続く日本人のみをターゲットとするのは限界を感じているからだ。
 今後の展開について紀野氏は「今年は東京をまとめ、来年は日本、そして海外もカバーしていきたい」と語る。台頭していけば賃貸版「Airbnb」として期待できそうだ。

「家いちば」運営を新会社に 第三者割当増資で機能拡充へ
 空き家問題を解決する不動産プラットフォームとして2015年より運営されている「家いちば」が今月1日付で旧運営会社のエアリーフロー(東京都新宿区)から家いちば(東京都渋谷区)に事業譲渡が行われた。同時に両社で業務提携を締結し、「家いちば」でマッチングした顧客の不動産売買系客などの媒介業務は引き続き宅地建物取引業者である旧運営会社が行う。併せて、同日付で約4000万円の第三者割当増資を実施、この資金によりシステム開発等の積極投資を行っていくという。
 「家いちば」はこれまで他の物件サイトではあまり見られないような郵便局や味噌工場といった物件が売られているユニークなサイトとして注目を集めてきた。特に田舎の空き家が数十万円、あるいは0円で売られることも珍しくなく、「安ければ買いたい」といった需要を掘り起こしてきた。これまで掲載物件数は709件にのぼり、成約物件は122件、取扱物件価格累計は65・4億円。延べ利用者数は9837人となっている。
 空き家問題が年々深刻化するなかで、「家いちば」がどのように成長していくか。注目したいところだ。 

物件会議、登録ユーザー5000社突破
 物件会議(名古屋市中区)が2018年4月より運営する不動産情報交換プラットフォーム「物件会議」が先月時点で登録者数が5000社を突破した。
 このサービスはチャット形式で行う会員制のBtoB不動産情報交換プラットフォーム。不動産仲介業者、建築会社、デベロッパー、ハウジングメーカー、パワービルダー、弁護士や税理士などの士業、出店を希望する企業の開発担当者など不動産取引に関わるあらゆる業者間でチャットを使ってクローズドなコミュニケーションが可能になる。ユーザーは不動産の借主側、買い手側のニーズを投稿することで、情報を持っている企業から個別に情報提供を受けることができる。
 同社では来月2日には大幅なリニューアルの実施を予定している。これに併せて、成果報酬型の課金を開始する予定だ。既に実施しているデベロッパーや店舗開発担当者の交流会や、リアルイベントの開催にも力を入れていくという。そのほかにも、より精度の高いマッチングを実現するためにAIを実装し、自動で売り手企業に対し自社の持つ物件情報に合いそうな買い手企業をレコメンドする機能や、売り手企業の持つ物件情報を簡単に取り込むことのできる機能を追加する予定だという。

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