不動産トピックス

第20回不動産ソリューションフェア人気セミナー紙上再現

2018.11.12 15:23

建替えパネルディスカッション「大空室時代を乗り越える中小ビル建て替え戦略2018」
プロなど協力パートナーも必要に

 先月開催された不動産ソリューションフェア。そのなかでの人気セミナーを再現する。今回は建替えパネルディスカッションと民法改正セミナー。ビルオーナーにとってどちらも興味・関心の高いテーマだ。この紙上再現から新たなヒントの発見につなげたい。

建替えの課題 立退きなど山積
横山 新築のときは何もしなくてもてなんとは入る、古くなるとなかなか埋まりにくい。建物が老朽化していきますが、その修繕費が数年に一度大きな負担としてのしかかります。そのときにお金をためているかどうかとかがすごく問われます。全国色々なオーナー見ていると、地方のビルは特に収入よりも支出が多くなってくるタイミングがあります。同じビルを持っていても地方だと家賃の下落傾向が強い。だからビルのメンテナンスがとても大変になります。この流れを今日は右肩流れにするためにもオーナーだけでなく、プロの方と一緒に考えていく必要があるといえます。
杉山 単純に建替えを行っていくというのは簡単ですけども環境や現状といった様々な課題がありまして、今弊社は課題があります。1つは建替えをするにも「建築費が高い」。もう1つは「満室状況の今行うべきなのか」。負債もなく利益が出やすいことも迷いの種です。建替えをするとなると非常に面白いのかなとも思う一方で、こんな課題もあるので延命プランも用意しながら考えています。
平岡 当社は父所有の北区を中心としたマンション、駐車場などがあるのですが、それらの相続対策を主導しております。法人としては千代田区内神田と岩本町、そして中央区にビルを合計3棟所有しておりまして、築年数でいうとそれぞれ39年、40年、55年です。一応新しいビルを購入することもありますが、3年前のバブルの時に1度アセットの転換という意味も含めて3棟売却いたしました。その後は別のアセットに切り替えているといった状況です。まず、東京の一部の地域は非常にまだまだ活況な時期が続いてはいるんですが、やはりその中でも2極化が進んでいたり、杉山さんからもお話しあったように、「『初期投資が相当多い中で20年、30年スパンでやるビジネスってものが本当にどうなのだろう』ということをもっとしっかり突き詰める必要性があるのではないか」という課題に対して私なりに、不動産オーナー自らが一旦課題を持ちながら意識改革が必要なんじゃないかということでその話を前半とさせていただきたいと思います。
横山 そういった市況の環境もありますが、自分自身の築古のビルをいっぱい持っているという状況だけをずっと続けているのでそれに対して学ぼうという意思から基本に立ち戻っているという意味ではシナリオをしっかり最初から作ってるなと感じます。もう一方からは、建替えをしたことについて話していただければと思います。
高橋 私は建替えをした側ということで今回登壇しました。実際何が起こったのかを簡単に言うと「ちょっと考えずに建替えしてしまった」というところがあったのかもしれません。物件としては上野の御徒町にございます。どんな物件であったかというと築46年、「高橋ビル」というありがちな名前で、もう1つは隣にある築50年以上のビルでした。この39坪と11坪のビルが2棟建っていましてこれを壊して建てたという話です。まず資金がどれくらいかかるのかというのを含めてシミュレーションし、銀行に概算を依頼したりしましたた。一言でいうと、銀行の金利は高め。そこから設計事務所をさがして決めて、メインテナントに立ち退きの交渉を始めて7カ月ほどでなんとかまとめてその後新しく建てた後、管理会社をしっかりいれようと思ったので管理会社の見積もりを複数とって決めました。解体、建築、リーシングは建築中に行うという流れで実質3年くらいかかりました。よく聞かれる話の中で「踏み切った理由は何?」ということで「当社の場合はガラスが相当割れたというので建替えないといけない」と感じた事でした。また苦労したことは先程の話でいくと想定以上のことが起こることです。お金の話で言いますと、延床面積が13%増え、売上が26%増えました。しかし無借金だったところ一挙に借金が増えてしまったいう形になっています。
横山 2017年に当社でも建替えしました。今まで10階だったビルを2階にしたのです。色々と驚きや反応を頂いています。この2階建てにしたとき、テナントから敷金を受け取って建てました。テナントに自由に利用して頂くことを前提とした条件を作りました。当社の保有物件も築古で売上が下がってきたときに営業損失が生まれる状況になりました。今年の純利益は2億と、しかし法人税の支払いは17万と、これはなにかというと法人には累積をためていけるという赤字を9年間ためて、その分が去年赤字だったら今年利益が出てもその赤字で補填できるよという法人の特徴の一つを使っていくわけですね。まだまだ私の会社は企業再生中です。でも今年からは毎年利益が出てくるので当社はあと3年程度で借金を完済できると。当初立退き含めて10億以上かかると言われていました。それでも6億くらいまで抑えましたね。ここからは後半部分です。杉山さんが今取り組んでいることというのはそこから具体的な戦略、手法を使ってどう変えていったかということをお話ししていければと思います。
杉山 先程の続きです。建替え計画という所をある程度作りこみましたという話です。建替えの中で重要なのは立退きとと建替えプラン、この2つが非常に重要かなと思います。まず「普通借家」から「定期借家」への切り替えという所を全部考えました。はじめ全部普通借家契約だったですけれども、だいぶ進んできています。それにともなって立退きのシナリオを練って進めているところです。容積緩和を最大限適用すれば11階までできるので投資に対する利回りの良いプランを模索しているところです。続いては延命計画ですね。延命となると単純に先細りしていく懸念があります。賃料も下がって、逆に修繕とかのコストは上がっていきます。いかに利益を確保するかというところで賃料増額と修繕計画が重要なのではないかと思っています。満室のため賃料の増減が決まってしまっていると、修繕費用の予測ができません。そこで賃料の増額の交渉です。現在進行中ですが、関内の地域再開発の影響で近隣相場が上がっているため1社のテナントでは賃料15%アップに成功しました。
横山 私も自分のビルで実験してコラムでも書いているのですが、100あるテナントのうち70は4~5年ぐらいしっかり経営してれば定借に切り替えられて30%くらいは普通借で残ります。それで結果100のうち3人が裁判になりました。平岡さんからはこれからの計画についてどのようにお考えですか。
平岡 私にとっての建替えということで先程お話ししたように全て古いですが、順調に経営しているので、危機感が不足しています。ただ安定した収入を上げるためにはどこかで新しくしないといけない。当然建替えは先程お話ししたように投資になりますので、資産を増やすための建替えにしないといけないと思っています。全て償却が終わっている。当然課税所得が多いと言う事で建物の資産バランスを考えるとやはり少し新しめの物件で償却を少し当てていかなければなりません。また古い建物の負債を残すことが次世代にとってどうなのか。それに対して阻むこととしては、立退きとかそれに対する準備交渉。また地区計画というのが出ています。千代田区や都心部は住居系にすることによって例えば13階建ての建物を建てられます。
横山 杉山さんは今のビルは延命できる方なのか、今後どういった判断をしようとおもいますか。
杉山 先程延命と建替えのハイブリッドというところだったのですが、延命するにしても賃料のアップがないと先細りするだけです。建替えは当然もっと幅がありますよね。一棟丸々変えることができるので1棟貸しのホテルや賃料が取れそうなプランというのもできるですが、延命には幅があるのでレバレッジが少ないというかそんなに急拡大できないと思うので、それで修繕がかかるなら建替えしてしまったほうがいいと思います。もう一つ言いますと、立退きは一番お金がかかるところです。それに対して裁判になるケースがありますけど老朽化の理由っていうのが築45年だと弱いんですよね。築60年位になると老朽化という理由を打ち出せます。ただそれまでに空室ができたり、修繕費用がかさんだり、そういう理由によって建替えをしなければならない状況に追い込まれるとしなければならないですけど、延命できるなら本当はした方が、一番トータルのコストとしては下がるのかなと思います。
横山 建替えをしたっていう未来を少し考えてみたいと思います。高橋さんからは建替えをした後のこれからというところで、ビルオーナーとしての展望を是非お話し頂ければと思います。
高橋 みなさん建替えに集中しますが、その後どうなったかというのを意外と知りませんし、私も知りませんでした。常に気にするのは「金利上昇リスク」です。それから入居率が低下したらキャッシュが金利との間の板挟みになることです。そして税金対策も重要です。そこで結論となるのがビルの購入になります。やはり保管するものを建替えた時に1棟のみなのか、それとも2棟、3棟あるなかで経営していくかによってリスクが違います。私が考えている建替え後の戦略は「こつこつ収益アップ」です。「快適なオフィス空間の挑戦」をモットーとしているのでこれを繰り返し問い、ビルをどう持っていくかと共に次のビルの購入ですね。
横山 父は「自分の代で増やしたかった」と言いますね。僕は「父と一緒にこの代で増やしてこうよ」という選択をしています。父親は「俺じゃなきゃ壊せない、お前には壊せないだろう」と、一つの自信と共に創造と破壊のうち破壊を自らの手で行いました。重要なのは、創造するときに誰と一緒にやっていくのか。ただ、ビル経営は自分との闘いでもあるのでそういった意味では次の投資ってことの中には私も学び手です。その数字を出していく人間とそれでもプロと一緒に役割を演じている。今まで1人でやっていたかもしれませんが、色々な人と経験をしていくといいんじゃないかなと思います。

PAGE TOPへ