不動産トピックス

今週の一冊

2018.04.16 17:53

現代建築での「営繕」の意義を突き詰める

営繕論 希望の建設・地獄の営繕
著者:内田祥士
出版:建築・都市レビュー叢書
発行:2017年12月14日
価格:2600円(税別

 「営繕」とは「営造」の「営」と「修繕」の「繕」からなる熟語で奈良時代からの専門用語。だが近代以前は建築と修理が分けて考えられておらず、本来の意味での「営繕」を現代建築に適用しようとすると壁があるという。難しい本だ。
 現在の建築はそれほど近代以前の「建築」から隔たってしまったのか。なぜ「地獄の営繕」なのか。「営繕」は近代では「修理」の意味になり下がり退屈さと創造性の欠如の代名詞という事実がある。「工業製品を大量に組み込まれた現代建築」には創造行為としての「営繕」は持ち込めない。これは言葉遊びではないのがおわかりだろうか。本書「現実としての現代建築」の章では現代建築の今までの課題は「耐震性」で、これからの難題が「耐久性」という。最終章「虚構の建設・希望の営繕」では、実は「営繕」が社会性を回復したのは新耐震の導入によるものと明かす。若干回りくどい表現が見られるが、要は戦後70年以上にわたって我々は「修繕」より「建設」を選択してきたが、現在の日本は戦後の焼け野原ではない。建設ではなく「希望の営繕」の時代だ。
 著者は建築家であり、東洋大学ライフデザイン学部教授。

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