不動産トピックス

今週の一冊

2018.03.19 10:19

世界建築100の事例を読み解く

こんな建物だれがどうしてつくったの?
著者:ジョン・ズコウスキー 
発行:2017年8月30日 
発行:東京美術 
価格:2300円(税別)

 サブタイトルに「現代建築100の読み解き」とあるとおり、過去70年間につくられた世界中の建物の中からユニークで斬新な100の事例を取り上げて多方面からパズルを解くかのように説明している。建築家が用いた素材や技術から、建物の歴史上の意味、同類の設計の建物の例まで事細かにカラー写真とともに紹介しており、文字の多い図鑑のようだ。
 著者は建築史とデザイン史の専門家であり「建築は強(堅固な構造)、用(機能)、美(芸術性)を体現していなければならない」と、いう古代ローマの建築家ウィトルウィウスの挙げたその3つの特質すべてを表している建築物を選んだという。「誰が」つくったのかを主眼に置き、我が国からは大阪にある安藤忠雄の「光の教会」、宮城県登米の隈研吾による「森舞台」ほか6名が選ばれており誇らしい気持ちにさせられる。事例は美術館、記念碑、博物館が多いが、大学や連邦拘置所、ホテルに図書館まで幅広く、「建築」の無限の広がりを感じる。
 章のタイトルが「幾何学の勝利」「宇宙時代」「過去へのオマージュ」と、建築家たちの物語集のような様相でもありまた楽しい。日々、建物を「不動産」として仕事の対象にしていると、たまにはこのようなロマン風味の建築本は実に新鮮である。頭の片隅に建物に夢や情熱を込めた建築家たちがいることを刻んでおきたい。

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