不動産トピックス

クローズアップ 自然換気編

2017.07.03 16:46

 経済産業省が推進する建築物のZEB(Zero Energy Building)化。2030年までに新築建築物で平均的にZEBを実現することを目標に掲げている。このZEB化を実現するためにはエネルギー消費の多くを占める空調の更なる省エネが不可欠であり、中でも自然換気に対する期待が高まっている。

YKK AP 雨の侵入を防ぐ自然換気システム 取り込み風量が格段に向上
 YKK AP(東京都千代田区)は5月31日、ビル用窓の旗艦商品「EXIMA31(エクシマ・サンイチ)」に雨水抑制機能を備えた縦型自然換気窓「サイドパス」の発売を開始した。執行役員開発本部ビル商品企画部長の石黒義則氏は開発目的について「ZEB化へ向けた省エネ建築へのパッシブ手法を提案すること」だと説明する。
 経済産業省のZEB化ロードマップにおいて学校等の新築公共建築物で率先的にZEB化に取り組む方向性を示しており、特にパッシブ手法である自然換気はZEB化の中で重要なポイントになると目されている。石黒氏は「学校でできる省エネ対策では、春と秋の中間期の外気を活用して室内の環境を維持、涼感を得ること。さらにエアコンを停止し、省エネ節電を図る。ZEB化を進める学校では積極的な外気活用と空調の使用抑制を推奨している。そこで窓を開けずに自然換気ができる縦型通風・自然換気窓『EXIMA31 サイドパス』を販売していく。天候を気にせず風の取り込みによる通風と換気が可能になるのが大きなポイント」と指摘する。
 「サイドパス」は窓と窓の間の縦型サッシ部分を開放して自然換気を行う仕組みだ。自然換気を行う場合、これまでは窓を開放していたが、閉め忘れによる防犯性の低下や雨水の浸入が課題となる。一方、同製品では天候変化を気にせず局所的に自然換気が可能になる。雨水対策が施されたRV仕様と換気量を重視したV仕様の2種類があり、室内側に取り付けられたレバーを手前に引くと室外側パネルも連動して開く。RV仕様は室外パネルと内蔵された「雨水浸入抑制がらり」によって雨の浸入を防ぐ。同社の独自テストでは「風速10m/s(強風注意報レベル)」、散水量2L/秒・㎡(大雨警報・記録的短時間大雨情報発令レベル)」という条件下で1時間あたり数滴の浸入があったのみだった。また、内部には防虫ネットが備わっている他、室外パネルは50mmしか開かず落下防止にも配慮している。他方、同社が開発した従来型の縦型換気システムに比べて換気量が大幅に向上。RV仕様で約4倍、V仕様では約10倍に性能が向上している。
 ZEB化にいち早く着手するであろう学校への導入を進めていく方針だが、オフィス分野に対しては就業時間外、停電時といった空調が使えない状況下において自然換気による付加価値向上を提案するという。


清水建設 建物の自然換気性能を3次元解析
 清水建設(東京都中央区)は、建物の自然換気性能を評価する3次元シミュレーションシステム「VisualNETS―3D」を開発した。建築物の実態にあった3次元のシミュレーションを行うことで、一層効果的・経済的な自然換気方式の提案が可能になった結果、空調エネルギーを最大20%程度削減できる見込みだという。
 従来は2次元シミュレーションで建物の自然換気性能を評価していたが、建物の空間全体を捉えた評価が行えず、特定の断面でしか評価結果を可視化できなかったことから、3次元のシミュレーションを行う「VisualNETS―3D」を開発、解析精度を飛躍的に向上させた。開発にあたっては3次元の解析モデルを容易に構築できるようにBIMデータとの連携を図ったことが特長だ。
 設計者がBIMデータを利用して建物の3次元形状を入力。続いて各部屋の形状、窓・換気開口の形状・仕様、空調・換気設備による給排気の位置・風量、さらに各部屋の在室人数・時間帯、照明電力量と点灯時間、換気開口の開閉スケジュール、空調・換気設備のオン・オフスケジュール等、室内の温熱環境に影響を与える条件を入力して解析用の3次元モデルを構築する。


三協立山 手動・個別制御式が追加 小規模物件でも採用しやすい
 三協立山(富山県高岡市)・三協アルミ社は、自然換気システム「スウィンドウ」を1996年に開発。今年5月には手動タイプおよび電動タイプでの個別制御システムや、ガラス溝幅36mm(空気層12mm)を追加発売した。
 「スウィンドウ」とは風の圧力差に反応して窓が自動開閉する自然換気システム。自然の風力と室内外の温度差で効率の良い換気を行う。無風状態では45度角で開いた状態を保つ。今回、建物にスポット使用できる手動タイプを追加。計装工事や電源工事が不要。また、個別制御システムを追加。中央制御盤が不要となり、窓数が少ない小規模物件用として機器費用や工事費を抑えられる。タブレット端末でスケジュール運転やシステムの各種設定も可能だ。

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