不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2017.05.29 12:46

ベッセルホテル開発 大手デベ・ファンドからの有料案件増える 2020年30店舗に向け出店加速

 ベッセルホテル開発(広島県福山市)は、ベッセルグループのホテル事業として、1974年開業の福山キャッスルホテルからスタート。その後ロードサイド店を中心に展開してきたが、2010年に「ベッセル」ブランドに名称変更して以降、全国への進出を本格化した。現在、「ベッセルホテル カンパーナ」、「ベッセルホテル」、「ベッセルイン」の3ブランドで全国18施設を展開、今後も積極的に出店していく計画だ。

5月に大阪初進出 来年には名古屋も
 「昨年は『仕込みの年』と捉え、全国各地に出店の布石を打ってきました。今年はいよいよ形になりそうです」
 瀬尾吉郎社長が話すように、同社は5月に「ベッセルイン大阪心斎橋」(大阪市中央区)を開業させたほか、滋賀県初出店となる「ベッセルイン滋賀守山駅前」を夏に、2018年秋には愛知県名古屋市で初出店となる「ベッセルイン名古屋錦三丁目(仮称)」など、相次いで新規オープンを発表した。今後も北海道・名古屋・千葉・滋賀・沖縄などで計画が本格化し、同社が目標に掲げている「2020年に30店舗」に向けて着々と歩を進めている。
 同社が展開している3ブランドは、それぞれ客層に合わせた特徴がある。「ベッセルイン」は、女性向けのサービスの充実化、12歳以下添い寝無料。「ベッセルホテル」は、シングル21㎡・ツイン26㎡、無料朝食の提供、18歳以下添い寝無料。「ベッセルホテル カンパーナ」は、全室シモンズ社製ベッドといったもの。
 直近の「ベッセルイン心斎橋」は、ベッセルホテル開発としては、18施設目のホテルで、「ベッセルイン」ブランドとしては7施設目のホテルとなる。
 同ホテルは、大阪市の「心斎橋」エリアに位置し、御堂筋線及び長堀鶴見緑地線の「心斎橋」駅から徒歩5分。敷地面積444・87㎡、延床面積3207・95㎡、鉄骨造一部鉄筋コンクリート造、地下1階地上10階建て。設計・施工は大和ハウス工業。客室数はシングルルーム116室、ユニバーサルシングルルーム1室、ツインルーム16室の合計全133室。
 ターゲットとなるのは、家族連れや団体旅行、ビジネスユースなど。国内外からの観光客等にも対応し、幅広い客層の利用を期待している。12歳以下の子供添い寝は無料。
 館内設備・サービスには、全米ホテルベッドシェアトップの「サータ」製ポケットコイルマットレスのベッド、全館全室で無料Wi-Fi、加湿機能付き空気清浄機を全室に設置。女性の利用客にはレディースアメニティプレゼント、ウェルカムドリンクの提供など。朝食には和洋ビュッフェで、浪速の台所黒門市場のマグロ、たこ焼き、大阪発祥ミックスジュースなど様々な「ご当地料理」を提供する。
「京都店」の成功契機 運営会社の信用力向上
 現在、同社のもとには大手企業からの有活案件が多く持ち込まれているという。例えば「ベッセルイン滋賀守山駅前」は、近江鉄道がオーナーで、JR「守山」駅前の複合所業施設に入居するもの。「ベッセルイン名古屋錦三丁目(仮称)」はJA三井リース建物、近畿総合リースが共同で建設する。
 きっかけは一昨年、NTTグループの土地を賃借して開業した「ベッセルホテル カンパーナ 京都五条」だった。
 同ホテルは開業2カ月で稼働率90%を実現し、現在も好調を維持している。このプロジェクトはベッセルホテル開発にとって、京都という観光地に出店したこと以上に大きな意味合いを持ったという。
 瀬尾社長は話す。「このホテルでの実績だけでなく、NTTグループのような日本を代表する企業が、いち地方企業である当社に賃借したということが、企業としての信用力向上に繋がってきたわけです」 
 その後、ゼネコン・不動産会社・鉄道会社・投資ファンドなどとのパイプを固めたことで、優良な土地の情報が入手できるようになり、これが出店スピードを速めることとなっているのだ。
福山の企業体相乗効果も大きく
 ベッセルホテル開発が属するベッセルグループは、ドトールコーヒーのフランチャイジーや印刷業、建物メンテナンス業など多様なビジネスを展開している。中でもホテル事業は、今後も成長戦略を描くうえで重要な位置を占めているという。実際、グループの年間売り上げのうち、60%程度をホテル事業が占めているほど。
 今後も同社は、東京はもちろん、仙台・名古屋・大阪・神戸を中心に新規出店していく考え。新築だけでなく、既存ホテルの取得、賃貸借、運営受託などあらゆる方法で、チェーン店の拡大を図る。
 既存ホテルならば、人口30万人以上の都市、客室数80室以上が基準になる。新築ならば、主要駅から徒歩5分圏内で、客室数130室などが条件だ。
 「もちろん、東南アジアなど海外にも出店していきたい」(瀬尾社長)
 「多店舗化すれば、チェーンとして市場のインパクトもが違いますし、ブランド力も上がりますし、企業としての評価も変わるでしょう」(瀬尾社長)という。


長谷川ホテル&リゾート 既存ビルのリノベーションで「キャビンホテルJ」 リゾート施設も、
 ハウスクリーニングFCの「おそうじ本舗」、有料老人ホーム運営、子育て支援サービス等の事業を育ててきた長谷川トラストグループ(東京都豊島区)の設立者、長谷川芳博氏は昨年、新たにホテル市場に参入した。長谷川ホテル&リゾート(東京都豊島区)を立ち上げ、第1号としてキャビンホテルと呼ばれる「ワイズキャビン横浜関内」を神奈川県横浜市に開業したのだ。
 同施設は、JR根岸線「関内」駅より徒歩1分に位置する。地上7階・地下1階の既存ビルの1階と2階部分を賃貸し、約3億円をかけてコンバージョンしたもの。客室数は160室で、特別発注した幅1400cmのキャビンには1m×2mサイズのベッド、24型テレビ等を配置。男性用サウナ付き大浴場、女性用シャワールーム、朝食用ラウンジなどを併設する。横浜のビジネス、観光、イベントの拠点としての需要を見込む。また、女性や年々急増する訪日外国人、急な宿泊にも対応できる様、設備やアメニティも揃えているのが特徴だ。
 開業以来、好調を維持しており出張はもちろん、旅行者を中心に稼働率は85%以上、ADRは4500円で推移しているという。
 同社は今回のオープンを機に、ホテル事業を「ワイズホテル」ブランドとして打ち出していく計画だ。出店エリアの市場ニーズに合わせ、既存ビルの有効活用による「キャビンホテル」、原則として150室の「ビジネスホテル」、「リゾートホテル」の3つのブランドを使い分けていく。
 同社の阿部夏樹社長は話す。「既に『キャビンホテル』の2号店として大阪に予定していますし、このほか北海道・関西・九州・沖縄に『ビジネスホテル』『リゾートホテル』を計画しています」。
 ホテル事業を拡大するにあたり同社は、「開発企画」、「商品企画」、「運営企画」、「販売企画」の4つの部門を強化していく。例えば「開発企画」では、ホテル業態ごとにニーズの高いエリア、駅前などの好立地に絞り込んだ出店計画とプランニングを行い、収益性を確実性に高める。「運営企画」では、少数のスタッフで最大限のパフォーマンスを発揮し、利益へと繋がる満足度を高める、といったもの。
 今後同社は3つのブランドを2020年までに30施設、5年後には年商150億円を目標に全国で展開していく考えだ。

UDS 小田急グループの重要施策担う 3年後営業収益50億円に
 UDS(東京都渋谷区)が親会社の小田急電鉄の事業の重要施策の一つとして位置付けられている。
 小田急電鉄は「インバウンド・国内外の観光需要の伸長」を大きな事業機会と捉え、特に沿線でのホテル開発を積極的に行っていく。沿線に箱根や江の島・鎌倉などインバウンドや国内観光需要が大きいエリアを抱えているだけに、UDSの強みが生かせるようになる、というわけである。
 昨年4月に発表された小田急電鉄の「グループ中期経営計画の進捗状況」では、重点施策として「ホテル事業の拡大」が大きく取り上げられている。それによれば同社は、「2020年度までに10店程度の出店と、営業収益400億円を目指す」という。2015年度のホテル事業の営業収益は、289億円でうちUDSのホテル事業は10億円、これを2020年度にはUDSだけで50億円に伸ばしてく計画だ。
 UDSは、クライアントの要望や、そのエリアにあった施設を企画できるのが強み。例えば東京・浅草に開業した「ブンカ ホステル トーキョー」は、築30年の商業ビルをインバウンド向けにコンバージョンしたものだ。同社は東京・京都・沖縄を主流にしつつ、需給バランスのいい場所に、新築はもちろん、既存物件のコンバージョンやリノベーションによる施設を手掛けていく考え。
 昨年には、新たな試みとしては新たに沖縄に沖縄UDSという子会社を設立した。沖縄は新規路線の就航や増便、LCCの就航などを背景にアジアを中心とするインバウンド数が急増している地域だ。既に2018年の宮古島でホテルの開業を予定しており、「これを皮切りに、沖縄各地で複数のホテル・リゾート施設の開業を進めていきたいと考えています」(梶原 文生会長)という。

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