不動産トピックス

クローズアップ 蓄光編

2017.01.30 17:29

 階段やコーナー部など、建物には意外な危険が多く潜んでいる。特に気をつけたいのは地震による停電といった非常時である。普段とは異なる環境下で安全な避難誘導を行うため、あらかじめ光を蓄えておき発光する蓄光アイテムに注目が集まっている。

クロスリンクス 公共性高い施設中心に畜光シートの販売活動展開
 東日本大震災をきっかけに、テナントビルに入居する企業の防災への関心が非常に高まっている。耐震補強に代表される建物の安全・安心に対するニーズだけではなく、各企業は災害等が発生した際の従業員の安全確保に向けた防災計画の策定に注力している。実際に大規模な災害が発生すれば電気や水道といったライフラインが遮断され、建物内では非常用照明や避難経路を示す誘導灯が安全確保への頼りとなる。しかし、建物内の場所によっては周囲に非常用照明や誘導灯がなく、的確な避難を困難にするケースも考えられる。こうした停電時でも安全な避難誘導を実現するアイテムとして注目されているのが蓄光材の活用だ。
 不動産管理ソフトの開発販売を主に行っているクロスリンクス(東京都新宿区)では、昨年から避難経路を示す蓄光シートの販売企画・施工を行い、全国の自治体の庁舎をはじめとする公共施設への導入を推奨している。このシートは塩ビタイルやアスファルトなどに設置し昼間に蓄え夜間に発光する。従来のシートは人や車の通行、雨風などによって表示面が摩耗し、耐久性に課題があった。そこで同社は日中の太陽光を利用する蓄光と、広角で光を反射する再帰反射を組み合わせた商品を開発。災害による停電時でも避難先への経路を明るく表示することが可能となる。こうした技術はビル・マンションといった施設内にも応用することが可能で、非常階段の手すり部分にシートを設置すれば、より安全な避難が可能となり、防犯対策としても有効だ。
 代表取締役の井上宏明氏は「商業店舗が入居するビルは多くの人が出入りし公共性が高い建物である一方、災害時の避難誘導を的確に行わなければなりません。蓄光シートは夜間や停電時に発光し、安全な避難を実現する心強い存在です」と述べている。
日本ダム 明るさに特色のある蓄光プレートを開発
 衣服やユニホーム等のプリントネームを主に手掛けている日本ダム(福井県福井市)では、夜間などでの視認性を高める再帰反射材や蓄光フィルムの開発・販売を行っており、その実績を生かして超高輝度発光性能を有する蓄光プレートを開発。階段など段差の生じる箇所や地下駐車場や機械室といった比較的明るさが届きにくい箇所への設置を中心に、建物内の安全な避難誘導を実現するアイテムとして販売展開を行っている。
 同社が開発した蓄光プレートは、太陽光や照明ランプから照射された光を蓄えて暗闇の中でも自らが発光するというもので、電力不要でメンテナンスフリーと環境に配慮した仕様が製品の特長だ。また、同製品は200ルクスの蛍光ランプで20分間照射した後の性能試験で、1㎡あたり345ミリカンデラの明るさを計測した。これはJIS規格で定められたりん光輝度を大きく上回る数値である。同社常務取締役の内山忍氏は「わずかな時間でも高輝度の明るさを長時間にわたって発光できるのが当製品の特長です。裏面を建物内のあらゆる箇所に接着すれば、日中の太陽光や照明ランプの光を蓄光し、一晩中明るい状態で発光し続けることができます。福井県内の当社の本社事務所でも、建物内の至る所に蓄光プレートを設置し、停電時の安全な避難誘導に活用しています」と話す。
 この他、同社では蓄光プレートとLEDの導光板を組み合わせた「高輝度蓄光導光板標識」の開発を進めており、今後商品化に向けた取り組みを本格化させる構えだ。

表示灯 川崎の地下街に防災用避難誘導サイン施工
 避難誘導サインなどを手掛ける表示灯(名古屋市中村区)は、日建設計シビル(大阪市中央区)と共同開発した防災サインを川崎市川崎区の地下街「川崎アゼリア」に施工した。
 地下街は全国に約80カ所存在し、多くは主要なターミナル駅に直結している。このため多くの利用客が訪れ、大規模地震などの際には混乱状態になることが懸念されている。また、駅などの周辺施設から避難者が流入することも想定され、事前の安全対策を行う必要がある。今回の導入はテスト施工と地下街及び自治体関係者、学識者などを対象にしたアンケート調査を経て実施されたもの。国土交通省が平成26年度より推進している地下街防災推進事業の一環として、その補助金を利用して施工された初めての防災サイン工事となった。
 施工された防災サインは、太陽光や蛍光灯などの光エネルギーを吸収して暗闇でも光を放出する蓄光顔料が使用されている。また、耐候性や耐熱性も極めて安定的で、半永久的に発光を繰り返す。工事は昨年3月に「川崎アゼリア」で実施された地下街全体のリニューアルに合わせて行われ、この蓄光材を使用した階段ピクトサイン及び階段部への塗装、床面シート、消火栓表示などが地下街に設置された。

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