不動産トピックス

クローズアップ 民泊システム編

2016.09.12 16:04

 不動産業界における新進気鋭の風雲児・民泊。競争激化が叫ばれているものの、適切な戦略を立てれば有望な不動産ビジネスのひとつである。今日、その戦略を立てるためのツールが多く出ている。最前線の事業者のサービスを見てみたい。

はりうす エリア詳細分析や収益性データを提供
 民泊の統計データ提供をしているはりうす(東京都渋谷区)が運営するサイト「AirbDatabank(エアビーデータバンク)」が、先月15日よりローデータが付いた分析レポートサービスを開始した。
 「AirbDatabank」は、昨年12月より国内で一番早く民泊物件に関するデータ分析と提供を開始し約4万件に及ぶ民泊物件の最新情報を集約したほか、住所に基づいた周辺の価格や稼働率などの統計情報を地域毎に提供している。物件運用で課題がある、ないしは新規参入者や「全国の動向を知りたい」などのニーズを持つ人から反響を得てきた。 今回、ローデータ付きの分析レポートサービスとして、エリアレポートやより詳細な住所でデータを取得できるピンポイント詳細分析レポート、周辺実績に基づいた収益性レポート、加えて気になる「Airbnb」のリスティングの予約実績についての詳細データとレポートなど4つのレポートサービスを開始する。
 民泊参入を考えている事業者から個人オーナーまで多様な利用が見込まれる。


サムライ・インターナショナル 民泊競争時代に勝ち残るために必要となった数字と詳細な分析
 多くのホストが民泊市場に参入し競争が激しくなっている。そのなかでホストや民泊運用代行事業者は投資効果を確保していくためにも戦略が必要となっている。そのためにも必要なのは物件のより詳細な売上管理だ。
 そのなかで、サムライ・インターナショナル(東京都渋谷区)では7月28日に民泊物件の売上管理サービス「Air Profits(エアプロフィッツ)」をリリース、これまで複数アカウントで管理していた物件のデータ集計作業に追われていたのに対して、「Airbnb」からデータを抽出することによってワンタッチで売上や予約率などをはじき出すことができる。
 このサービスを開発した代表取締役社長の岡田塁氏は自らも民泊ホストだ。そのなかで感じていたのは売上管理の煩雑さだった。
 「ツールを使わずに行おうとすると、『Airbnb』からファイルをダウンロードするのですが、損益分岐点などがわかりにくく、またひとつひとつの物件ごとの数字が出ません。私は手作業で集計するわけですが、これだけでも大きな時間が割かれます。一方で、民泊は素人が参入しても勝てる市場ではなくなり、プロの市場に変化しつつあります。そこで勝ち残っていくためには、売上管理など基本的な戦略を怠ることはできません」(岡田氏)
 同サービスの導入は無料であるインパクトから、岡田氏も「8月中旬時点で、約50の事業者に利用して頂いております」と話す。そのなかには多くの管理物件を抱える代行事業者も抱えているという。
 今後は岡田氏自身の経験を通して売上管理がいかに重要かに焦点を当てたセミナーを開催していくほか、サービスのブラッシュアップも図っていく。具体的には「Airbnb」以外のプラットフォームへの対応や、予約カレンダーの一元化を図っていく予定だ。  訪日観光客が順調な右肩上がりを続けるなかで、民泊は有望なビジネスだ。その有望性を享受していくには、不動産投資と同様に詳細な数字データとそれへの分析が欠かせない。

effective コストと手間双方の削減を実現 年度内にホスト自身がコンテンツ作成を可能に
 民泊ホストにとって管理の効率化は喫緊の課題としてある。一方で、代行事業者に運営を依頼すると売上の10~20%引かれる。ホストにとって、手間削減をとるか、コスト削減をとるかの二者択一の状況となっている。
 その状況に一石を投じたのが、ウェブマーケティングやシステム開発を行うeffective(東京都渋谷区)が先月24日に発表した民泊ホスト向けサポートツール「Bamboo」だ。競争が過熱する民泊市場において、多く参入する個人ホストのコストと手間の双方の削減を目指すツールとなっている。
 代表取締役社長の土橋誠一氏は「Bamboo」の開発のきっかけについて「ひとつは民泊が有望な市場であり、もうひとつはホスト・ゲストのニーズに現状の民泊業界がまだまだ応えられていないところ」と話す。
 「海外へ旅行する際に個人的に民泊を頻繁に利用していましたが、知人で実際にホストを行っている者と話すなかで、自分で運用する際に予約管理やメールの送信などが非常に手間になること、加えてチェックイン・チェックアウトや宿泊者の本人確認などを怠ることのリスクへの不安など、課題が山積していることを知りました」
 「Bamboo」ではチェックイン・チェックアウトや本人確認といった機能や予約管理や迅速なメール対応が可能になるほか、民泊に泊まるゲストからのニーズが高い周辺の飲食店情報などの情報提供も行う。ハウスルールを含め、ゲストはスマートホンなどでワンタッチで確認可能であるため、「手間・コスト削減だけではなくホスピタリティの向上も可能となり、高レビューの獲得につながる」(土橋氏)とのこと。
 「今後、まず年度内を目標にホストが自由にコンテンツを作成する機能を実装し、おすすめの飲食店など、ゲストの旅行体験を豊かにする情報をホスト自身が提供していけるフォーマットにしていきます。将来的にはメディア機能を備え、訪日外国人を獲得したい事業者などに広告枠を提供、その収益をホストに還元することで、民泊運営の支援をしていきたいと思います」(土橋氏)
 新法が成立すればより多くのホストと事業者の参入が予想される。そうすれば、より環境は厳しくなるとともに、ホスト側からの周辺情報の提供などはいわば当たり前のものとなってくる。1物件あたり月額980円から利用可能という「Bamboo」は民泊新時代にホストが対応していくためにも検討していかねばならないツールになる。

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