不動産トピックス

クローズアップ 照明システム編

2014.08.11 13:02

 既存照明である蛍光灯からLED照明に更新するメリットとしてあげられるのが省エネ性能である。しかしLED照明はデジタル機器であることから蛍光灯では実現できない制御が可能である点もその特徴のうちの一つである。今回のクローズアップでは日々進化する照明システムの最前線を追う。

 大林組(東京都港区)は、「人の感じる明るさ感」をもとに照明などの室内の光環境を自動的に制御し、快適性を維持しながら消費電力を60%削減する光環境制御システムを東京工業大学、ビジュアル・テクノロジー研究所(東京都世田谷区)と共同開発した。
 照明設備による消費電力は一般的なオフィスビルの場合で全体の3分の1を占めており、ビル全体の省エネに大きく影響する。従来のオフィスなどにおける照明制御は、机上面の照度を部屋全体で一定に保つように調光(光出力の調整)することが一般的であった。近年、照明制御技術の進歩により机上面の照度を保ちながら、その他の部分の照度を低く抑えるタスク・アンビエント照明方式が省エネ技術として採用されるケースがあり、今後の普及が期待されている。しかしこの方式は執務に必要な照度は確保していても室内の雰囲気が暗く感じられるといった課題があった。このため人が快適に感じる明るさを維持しつつ、照明による消費電力を効率的に抑制する新たな照明方式が望まれている。
 本システムは東京工業大学の中村芳樹准教授が開発した「人の感じる明るさ感」を数値化する指標「明るさ尺度値」を利用している。照度ではなく、輝度を基準に室内の光環境を自動的に評価・制御することによって、低照度でありながら明るい印象を持つことができる、新しい光環境制御システムとなっている。
 大林組は今後、省エネ効果の高い本システムを、新築はもちろん省エネ改修を目的としたリニューアル物件にも積極的に提案し、環境に優しい社会づくりに貢献していくとしている。
 ドイツに本社を置くスプリング端子台・コネクタ・オートメーション機器の専門メーカーの日本法人であるワゴジャパン(東京都江東区)は、照明デジタルコントロールシステム「DALI」の開発・販売を行っている。
 同社が展開する「DALI」とは、施設照明の国際標準規格である「IEC62386」に準拠するデジタル照明コントロールシステムである。デジタル通信によりコントローラとLED照明のDALI対応電源と双方向通信することで、使用状況に合わせてLED照明の調光や点灯、点滅を制御することが可能となる。欧州では大型複合施設の照明システムとして採用事例が増加。「DALI」を導入していることがグリーンビルディング認証制度「LEED」取得における加点ポイントとなることから、環境配慮の取組みにおいて重要なシステムの一つとなっている。一方日本における「DALI」の認知度はまだ低い。しかし昨今の省エネ・節電ニーズの高まりを受けて、大手デベロッパーや設計会社、ゼネコンを中心にビルへの導入を本格的に検討する企業も増えているとのことだ。
 「日本でもDALI対応の電源やLED照明が増えており、ビルにおけるスマートグリッドの構築という観点から中央監視装置との連携を含めた照明のデジタル制御の重要性が今後さらに増していくと考えています。その点、当社が展開する『DALI』システムは日本独自規格の各設備制御システムとの連携も可能となりますので、所有ビルの省エネ化・調光による不動産価値向上のサポートが可能です」(営業部 オートメーション 次長 津田 博之氏)

 遠藤照明(大阪市中央区)は光環境の最適化と大幅な省エネを同時に実現する照明空間マネジメントシステム「Smart LEDZ」を開発・販売している。
 「Smart LEDZ」は全ての照明器具を個別に制御することで各業態のベネフィットに応じた最適な光環境の実現と省エネ・電気代削減を両立するシステム。器具1台1台に無線モジュール(超小型受信機)を搭載することで配線ダクト用スポットライトを器具1台単位で明るさを設定することが可能。また従来、既存の非調香空間を導入する場合は信号線の追加工事が必要であったが、同システムは既存の電源配線をそのまま利用することが可能であることから、工事費用と信号線などの設備費の導入コストの削減に成功している。
 省エネという点においては、初期照度・昼光利用・スケジュール制御機能・カレンダー機能・人感センサー・個別制御などの制御機能と、省エネ性能に優れたLED照明「LEDZ」シリーズとの組み合わせにより、電力量を約70~82%削減を実現している。調光はタッチパネル式のタブレット型コントローラを使用しており持ち運びが可能。照明器具1台から、その場で感覚的に明るさをコントロールすることができる。同システムは「JECA FAIR2014 第62回電設工業展製品コンクール」において、従来の調光システムとはまったく異なる無線による照明制御である独自性と省エネ促進・環境への取組成果が高く評価され、「環境大臣賞」を受賞している。

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