不動産トピックス

今週の一冊

2013.10.21 13:50

満室経営に必要なのは愛情?!

大家も住人もしあわせになる賃貸住宅のつくり方
著者 青木 純
出版 学研パブリッシング
発行 平成25年8月13日
価格 1500円(税抜)

 東池袋に立地する昭和63年竣工のマンションである「ロイヤルアネックス」。築年数が20年を経過していたことに加えて、東日本大震災が発生したことで一時期は空室率が27%まで上昇した。厳しい状況に追い込まれた「ロイヤルアネックス」は、今では満室稼働中であるだけでなく、入居希望が殺到する人気マンションとなっている。その見事な生まれ変わりには理由があった。それが「壁紙」である。本書は「ロイヤルアネックス」のオーナーである青木純氏が、老朽化と空室率上昇という不動産オーナーであれば誰でも避けて通ることのできない問題に対して、いかにして乗り越えたということが克明に記録されている。
 前述したように問題解決のきっかけとなったのが居室の「壁紙」をカスタマイズするというサービスだ。このサービスの費用は全てオーナー負担。その上、壁紙は1万点を用意し、リビングとベッドルームの壁紙が違うものにしたいというオーダーにも応える。普通のオーナーであれば、そこまでする必要があるのかと思うかもしれない。ところが、青木氏は「壁紙」のカスタマイズサービスが成功するや否や内装デザインやレイアウト、設備の配置もカスタマイズするという「オーダーメイド賃貸」も実施。これまでの不動産の常識に捉われないアイデアを具現化していく。
 青木氏の考えの根本にあるのは「愛される賃貸住宅」にするということ。オーナーが建物を愛するのはもちろん、入居者にも愛される建物とする。不動産市況停滞の原因が経済環境の悪化にあるという考え方はよく耳にするが、青木氏の事例を見るに本当の原因は案外「不動産に対する愛情の欠如」にあるのかもしれない。

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