不動産トピックス

今週の一冊

2012.08.20 11:43

震災を機に不動産に対する意識が変わる

東日本大震災後の不動産の鉄則
著者:幸田 昌典
出版:日本経済新聞出版社
発行:平成24年3月15日
価格:1200円(税別)

 東日本震災が不動産市場に与えた影響は多大だった。地震発生直後、数々の売買取引・開発プロジェクトが中止になり、原発事故による外国人の大量帰国など、様々な混乱が起こった。液状化した土地の価格は大きく下落し、持ち家の耐震性を心配する人も増えた。東日本大震災は、地震によるリスクだけでなく、土地・持ち家を「所有」することのリスクも顕在化した格好となった。本書では、単純に不動産を所有するだけの時代は終わったと説き、その上で、将来的に不動産を増やす時代から不動産を「減らす」時代の到来を予見する。
 ただ、大震災をきっかけに不動産市場が大きく変化したともいえるが、その変化の兆しはさらに以前から始まっていた。日本経済の沈下、少子高齢化、企業のグローバル化といった諸要因がより促進され、不動産のあり方を根本的な部分から評価し直さないといけない。今後、不動産を購入する目安として利用価値や安定収益を重視して購入するほうが好ましいとしている。
 不動産経営の観点から見ると、意識的変化を促すことを強調しているため、経営面での具体的ノウハウは少ない。しかし、豊富なデータを活用し、震災後の不動産の変化を順を追って解説している点は将来的に見ても非常に参考になる。大震災を教訓にする一冊として時折読み返すことで、戒めになるのではないだろうか。

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