不動産トピックス

クローズアップ 空室活用編

2012.06.04 10:54

 貸会議室やレンタルオフィス、トランクルーム等々……。近年の経済不況により、空室率が上昇。その結果、空室活用として様々な手法が誕生し、注目を集めた。だが、その一方で空室活用事業者が急増したため、競争も激化。顧客を獲得することが非常に難しくなりつつある。そこで、今回は空室活用事業を成功させるための方法を模索したい。

オルタナソリューション 不況に強い会員制自習室
 長引く不況により、資格取得を目指す社会人や学生は急増しているが、「実際は環境の良い勉強場所を確保できずに困っている方が多いです」とは、会員制自習室「デスクスポット東京」を運営するオルタナソリューション(東京都渋谷区)の中田勝浩氏。同社はビルオーナーに対し、空室を活用した自習室運営のノウハウを提供している。
 「自習室に利用料を支払う人がいるのかが問題ですが、静かな環境で勉強できる場所は意外に少ない。例えば図書館は席を確保できないこともありますし、違うテキストを持ってくると家に取りに帰らないといけない。当社の自習室は1カ月1万4900円の利用料を支払えば、固定の机を使用できます」(中田氏)
 現在は東京・兜町で1店舗を運営。オーク調の落ち着きある特注デスクを採用し、高級感溢れる室内が魅力。また、すべてのデスクに照明・電源・書棚が標準装備され、重いテキスト類を書棚に保管したまま通えるというメリットもある。さらに、無線LANやダイニングスペース、ロッカーだけでなく、電子レンジなどの各種設備も充実している。
 「受付や相談者を設置する必要があるレンタルオフィスと比べ、自習室は管理コストを大幅に削減でき、坪当たりの収益も大きな差はありません。机と椅子を用意すれば多忙なビルオーナー様でも自主営業が可能です。また、不況時は資格のニーズが高く、利用者増に繋がります。また、住宅街に近いビルなら大学受験間近の学生の需要も見込めます」(中田氏)

タニモト 差別化に繋がる高機能コイン式シャワー室の効果
 ビルの空室にコイン式温水シャワー室を設置し、テナント向けの施設として活用する。
 この斬新なアイデアを実現したのは、昭和50年からコイン式温水シャワーの製造・販売を手がけるタニモト(大阪府豊中市)だ。
元々、海水浴場向けのコイン式シャワー製造を開始した同社。「潮風にさらされ、砂や砂利によって設備メンテナンスが困難な環境下に耐えられる耐久性と経済性を両立するため、日夜研究・開発を行っています」とは、同社代表取締役の谷本年春氏。その高い性能が評価され、現在は官民のスポーツ・レジャー施設だけでなく、高速道路パーキングエリアや空港、コンビニ等にも設置。最近では被災地で組立にビスや工具を一切使わず設置可能な、組立式コイン式シャワー「エンカレッジ」が活躍して話題になっている。
 通常、コイン式シャワーはお金を投入すると、時間内ずっとお湯が流れ続け、ゆっくり利用できない。しかし、同社製品は、利用者が好みの湯温に設定できる他、シャワーの一時停止機能、室内灯管理、残り利用時間のデジタル表示、シャワー室洗浄装置(オプション)を完備。100Vの電源と給湯システムのユニットに接続をするだけで設置した段階ですぐに使用可能。さらに、シャワー室と更衣室を一体化させたタイプは畳一枚分のスペースで一台が設置できる。
 「主に飲食テナントが多数入居する複合ビルや古いビルをリニューアルし、東南アジアの観光客や深夜族を対象にした簡易ホテルに導入されるケースが増えています。特に多数の女性従業員が深夜まで働く場所や、旅行客に使用頻度は非常に高いです」(谷本氏)
 空室をシャワー室にするため、賃料は取れないが、シャワーの使用料金が収益になる。また、ビルの屋上や敷地内に設置することも可能だ。

チャレンジ・スペース レンタルオフィスのプロデュース事業を展開
 中小・零細・ベンチャー企業に特化した事業用賃貸物件専門の不動産仲介・管理業を展開するチャレンジ・スペース(横浜市都筑区)は、ベンチャー企業や起業家のサポートを目的にレンタルオフィスのプロデュースやセミナー・交流会を開催。同社プロデュースのレンタルオフィス「横浜都筑ビジネス&コミュニティ」は数多くの事業者に利用され、高稼働を実現している。
 「当社は事業用賃貸不動産の仲介・管理業の他、空室の有効活用と起業家支援を両立させるレンタルオフィスの企画から運営のプロデュース事業に力を入れています。通常、レンタルオフィス事業者がオフィスを借り上げて運営しているのに対し、当社では、レンタルオフィスをビルオーナーご自身で運営する方法を提案し、ハード面だけでなく、施設運営の仕組み作りから施設活性化の施策の提案・実行まで、ソフト面に踏み込んだ有効活用を実践します。例えば、レンタルオフィスは立地性によって集客のスピードが大きく変化しますが、立地場所にマッチしたターゲットや料金の設定、収益構造を意識した初期投資と運営をしていけば成功の確率は高まります。ただし、集客のスピードが異なるため、顧客獲得までの賃料、人件費、広告費のコスト負担に耐えられるかが成功の鍵になります。コスト構造に対応した運営方法をコーチングするなど、立地場所に最適な経営方法の指南も行っています」(同社代表取締役 梶谷武史氏)

ティー・エステート サブリースでシェアハウスを実現
 複数の入居者が共に暮らすシェアハウスが人気だ。築年の古いオフィスビルでは空室を埋めるのは難しいため、大規模な改修工事を行い、シェアハウス等の居住用にコンバージョンするケースも増えている。
 渋谷・恵比寿を中心に、都内全域でサブリース型のシェアハウス・ゲストハウスを運営するティー・エステート(東京都渋谷区)は、オフィスビルの空室を自社で借り受け、室内をシェアハウス仕様に改装し、利用者に提供している。
 「当社のシェアハウスはいずれも利便性の高いターミナル駅に近いので、高い稼働率を誇っています。また、当社はシェアハウス運営の他、不動産仲介業も展開しており、集客力も高い。ビルの1フロアでもシェアハウスを開設することができますので、駅近のわりに築年の古いビルの空室対策として効果があります」(同社管理部長 山形憲男氏)
 ビルオーナーにとっては、不特定多数の利用者が入れ替わり立ち替わりビルに出入りするため、他のテナントからクレームが来ることを懸念するが、管理人が備品の管理や共用部の清掃などを行うので、テナント間での問題はないという。
 「当社が運営するだけでなく、ビルオーナー様がご自身で運営管理を行いたい場合、シェアハウス・ゲストハウスの運営についてご相談も受け付けております」(山形氏)

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